テラーノベル
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階段を降りて、杖を抱えたまま人柱の間に戻ってきた。
「リズ、お待たせ……!あれ、リズ?」
さっきの場所にリズの姿がない。
慌てて辺りを見渡すと、部屋の隅で背中を丸めて蹲る人影を見た。
ホッとして、その背中に駆け寄る。
「遅くなってごめんね。杖、持ってきたよ」
蹲ったまま答えない。
心配になって、その背中に手を伸ばした。
「大丈夫?足、痛いの……? !!」
リズじゃない……リズじゃない!!
赤く濡れた目が、私を見上げていた。
私と同じ顔で。
悲鳴は喉に張り付いて出ない。
全身が凍りつき、伸ばした手も引っ込められない。
その氷が解けたのは、蛇の舌が手をねぶった時だ。
「キャアアアッ!!」
「レナ!!」
狂ったように部屋を飛び出した。
牢獄道まで戻る。
「レナ!!」
ドアを閉める間もなく、お化けが躍りかかってきた。
いやっ、どうしよう!!
持っている杖で殴りつける。
「いやっ!」
「グァッ!!」
杖はお化けのこめかみを直撃し、折れてしまった。
お化けは頭を抱えて蹲る。
「!」
一瞬湧いた罪悪感を飲み込んだ。
可哀想だなんて言ってられないわ。
今のうちに逃げなきゃ!
ドアの掛け金を外して東の扉を潜り、断罪の間まで走る。
どうしよう、どうし……!
焦って部屋を見渡した。
どこか隠れるところは……!
私はドアの横、ちょうつがいがついている方に張り付く。
このドアは内側に開く。
ここならドアが開いた瞬間、影に隠れて死角になるはず。
ガチャッとノブが回る。
「うァアア!!」
ドアを蹴り飛ばす勢いで、お化けが駆け込んできた。
今だ!
素早く影から走り出して、開け放たれたドアへ駆け込んだ。
背後を逃げていくのに気づいたお化けが振り向いて、唸り声をあげた。
早く、早く逃げなきゃ!
回路の入り口へ駆け込むと、私を追ってお化けも躍り込んできた。
「あっ」
後ろから飛びついて体当たりされ、つんのめって転ぶ。
アア、アア、とお化けが嬉しそうな声を上げた。
右のふくらはぎに、ぬるっとした舌が絡みつく。
「!!」
悍ましい感触にパニックになって、メチャクチャに足を動かした。
その拍子に、お化けの顔に足がぶつかる。
短く潰れた声をあげて、足を拘束する舌が緩んだ。
必死に起き上がると、中庭へ飛び出す。
視界が白くなり、視力が奪われた。
眩しい!!夜が明けてたんだ!
「ヒイイイイッ!!」
背後でお化けの声が聞こえる。
何?どうしたの?
振り返ろうとしたが、それはできない。
痛い!
顔面に皮膚がピリピリと裂ける痛みが走った。
身体中が痛くて、寒くて、痛い……!
突然体を襲った痛みに、悲鳴を上げる。
何、これ!
私は、自分で自分の体を抱きしめて倒れた。
痛い、痛い、痛い!!
息ができな……!!
誰かたす……。
#ホラー
チェシャ猫
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コメント
1件
あおいです🌷 読ませていただきました。 リズの代わりに自分と同じ顔をした何かが蹲っていた……あの瞬間の恐怖、ぞっとしました。蛇の舌が手をねぶる生々しさが本当に怖くて。それからお化けとの攻防、逃げ切ったと思ったら夜明けの光で全身が裂ける痛み……追い詰められ方の容赦なさに息が止まりました。あの「誰かたす……」で終わるのも、続きが気になって仕方ないです。 チェシャ猫さんの描く絶望の質感、毎回すごいなあと思います。お疲れさまです!