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「着いたよ!」
リリィは目を光らせながら僕の手を引っ張りバスを出る。
「あっ!ごめんね、痛かったよね」
「大丈夫だよ?」
「ほんと?」
「うん!」
「そういえばここって……」
目の前には大きな看板と施設があり、看板には「水族館」と書いてあった。
「水族館。前にねくじ引きで二人分の水族館チケットをもらったからさ」
「そうなんだ……」
僕が呆気にとられている間にリリィは光の速さで受付を済ませていた。
意気揚々とする彼女の姿は凄く幼稚に見えたけど、そこが彼女の可愛いところかなと思えた。
外は凄く暑かったにも関わらず、館内はひんやりとしていた。
「涼しいね」
僕がそう呟いたら
彼女はそう返すように
「さっきは凄く暑かったのにね」
と言った。
僕は涼しい環境の中、考え事をしていた。
僕は水族館が凄く好きだ。
色々な魚の生態を知るのが凄く楽しいのだ。
でもリリィにはこの事は伝えていなかったはず……
偶然なのだろうか……
もし僕が水族館が好きってことを知っていたら少し恥ずかしいかなと思えた
しかし、
このだだっ広い涼しい空間に沢山の水槽がある。
僕はこの高揚感を押さえるのに必死すぎて周りの事に目を配れないでいるため、度々リリィとはぐれそうになる。
彼女の前ではしたない姿を見せないように、はしゃぎたい気持ちを押さえて急いでついていく。
仮にリリィに恥ずかしい姿を見られたら……
僕の豆腐メンタルは崩壊してある意味死んでしまう……
それは絶対に避けなければならない……
でもそれは簡単には押さえれるものではない
だから僕はたまに口を手で覆い、声がでないようにしていた。
「雪斗君?どうしたの?口なんか押さえて……」
「あっあぁ……えっと楽しくて……大きな声を出しそうで怖かったから……」
「……ふふ」
「??」
「良かった!喜んでくれて!」
「雪斗君凄く目キラキラさせてたよ?」
僕は顔が焼けるように熱くなった。
まさかそんなに感情が高まっているということが相手から見てすぐ分かるほどに興奮していたとは……
なんの躊躇もなく人前で僕の恥ずかしいシーンを堂々といえるリリィのことを少し悪魔てはないかと思ってしまった。
僕はその恥ずかしさを紛らわす為に
「リリィ、少し小腹が空いたからなにか食べよう?」
と誘ってみた。
彼女は
「いいよ!」
と笑顔で返事してくれた。
そのあとも気の行くままに歩き、帰宅の時間間際になっていた。
「もう暗くなってきたね」
「そろそろ帰ろうか」
「そうだね」
リリィの顔が少し寂しそうな笑みを浮かべていた。
僕はもっとリリィと一緒にいたいなと思った。
彼女は、
「今日は楽しかった?」
と聞いてきた。
僕は、
「楽しかった、ありがとう」
と返事をした。