僕はまた屋上に来ている。
いつも嫌なことがあったらここに来て景色を眺める。
景色を眺めると、一時的な麻酔にしかならないとは思うけど、嫌なことも屋上にいるときだけ忘れることができる。
今日もまた陰湿ないじめを受けた。
しかも、前よりもエスカレートしていて、もうどうしようもなかった。
いつも守ってくれているリリィは体調が優れないようでここ数日間は休みっぱなしであまり話もできていない。
虐め軍団は邪魔者が居なくなったこと、僕の反論でさらにいじめをエスカレートさせた。
暴力は当たり前。学校専用の掲示板で僕のあることないことを書き込まれ、挙げ句のはてには、僕の教科書、ノートなどをビリビリに破ったり、筆箱や鞄の中に泥や得たいの知れないものを入れられていたりと、最悪な方向へと進んでいった。
そして僕は自分自身の存在意義を失い、もう
どうでもよくなった
僕がいなくなったらどれくらいの人が喜ぶのか、
どれだけの人が僕の死を望んでいるかなどを考え始めるようになった。
いきる意味が何かを忘れてしまった。
いっそここを飛び降りればとも思ってしまう。
でも屋上から下を見下ろした瞬間、僕がいなくなったら何人の人が悲しむのか、僕がいなくなったら圭兄とリリィはどうなるのかという思いが込み上げてきて、ぽろぽろと涙が溢れてきた。
「もう……嫌だよ……ひぐっ、僕は……僕は……何を信じて、何を見て生きていけばいいんだよ!!!」
「誰か……うっ……僕の存在意義を……ひっく……教えてよ!」
何に対しての涙かもうわからないほど沢山の感情がくしゃくしゃの紙のように巡りめぐっていた。
「もう……どうしたらいいんだよ…」
僕は日暮れまでずっと泣き崩れていた。
一通り泣き終えた後、少しふらふらしながらも家へ帰宅した。
今日は圭兄は大学へ出ているため家は夜まで僕一人だ。
両親の仲はもともと悪く、兄はそれに我慢ならず大学に入学した後、僕をつれて二人暮らしをしている。
僕はすぐにベッドに向かい急な睡魔に抗えずにそのまま眠りについた。
おそらく泣きつかれたせいだろう。
起きたときには、もうすでに日付が変わっていた。
それでもまだ深夜2時だった。
僕はすでに帰宅していた兄を起こさないようにベランダに出た。
その日は凄く晴れていたので、夜空の空気が澄んでいたから、星空がはっきりと見えた。
ふと自分の存在意義を考えてみた。
でも、存在意義とはなにかが分からないから答えがでなかった。
考え事をしていたらあっという間に朝になっていた。
「雪斗?」
どうやら兄が起きる時間までベランダにいたようだ。
「圭兄、おはよう」
「あぁ…おはよう。」
圭兄を見てると、非常に重たいなにかが何処かへ消えたように涙が出てきた。
兄はそれに驚いたようにあわあわと焦っている。