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#主人公最強
かませ犬S
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#転生
歯磨き粉
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結局、レクトはディアナに引き続き憑依をしたが――
何となくエステルも諦めてしまったようで、あまり細かくは言わなくなった。
本人から憑依を求めてきたのは、セシリアも同じだ。
しかし何より、ディアナを言い負かせるのは難しい。
――そんな中、レクトはパーティ活動室を訪れた。
「こんにちはー♪」
例によってエステル、セシリア、リゼの3人がいる。
彼女たちはレクトの明るい声に、一瞬言葉を止めた。
「……えっと? 今は、どっちなの……?」
「うん? 今は憑依中だぞ~?」
「うふふ。挨拶がもう、完全にディアナ様でしたわよ?」
そう言いながら、レクトはリゼの隣に座った。
リゼからすれば、昔から世話になっているディアナの中に、命の恩人のレクトが入っている――
……何とも贅沢なシチュエーションだ。
「……ディアナお兄さま?」
「いやいや……。その呼び方は、いろいろと問題があるだろう……」
「確かに、頭が混乱しそうですわ……」
そんな言葉を交わしながら、レクトは部屋の中を眺めていく。
いつも通り、ということであればやはり――
「レクトの身体なら、もう寮に戻ったわよ?」
「……やっぱり?」
「もう少し、何とかならないの?
宿題もやらずに、ずっと寝てるみたいなんだけど……レクトの身体、鈍っちゃうよ?」
「何とかなるなら、俺もそうしたいんだけどな……」
憑依スキルを使う前に、いくらやる気を出しても、目標を立てても――レクトの身体は全て無視してしまう。
これを解決するには、憑依スキルを使わなければいい話ではあるのだが……。
「――そういえば、エステルは修練はどんな感じ?
剣気の発現は、まだ難しそう?」
「簡単に言ってくれるわね……。でも、正直……もうすぐな気はするの!」
「ほう……。俺も、リゼに憑依したときの心象世界でイメージは付いたからな。
もうすぐ、っていう実感はあるんだ」
「へぇ……! お互い、頑張らないとね!」
ふたりが剣聖トークで盛り上がる中、セシリアが口を挟む。
「それなら、エステル様も憑依してもらってはいかがですか?
一緒に同じ目標に向かうのであれば、相乗効果ですぐに達成できるかも――」
「だから、私への憑依は禁止ですからッ!!」
エステルの言葉に、セシリアは妖艶に微笑む。
「あら……まだそんなことを仰っているのですね?
レクトさん、わたくしはいつでも歓迎ですから……」
「そんなことを言って、またレポートを書かせるつもりだろ……」
「お、お兄ちゃん! わたしにも、憑依して良いですからね……!」
リゼも負けじとアピールする。
それに一番反応したのはエステルだった。
「ちょっと!? リゼちゃんまで、何を言ってるの……!?」
「え……?
だって、お兄ちゃんが憑依してくれると……身体が温かくなって、すごく安心できて――」
「後輩にそんなこと思わせるなんて!? レクト、最低ね!!」
「えぇ……。これ、俺が悪いの……?」
「うふふ。きっと、やきもちですわよ♪」
セシリアの言葉に、エステルは頭を抱える。
「はぁ……。
ディアナさんもそうだけど、何でみんな……憑依されたがるのよ……」
「そうですわねぇ……。非日常感、とか、背徳感、とか――」
「背徳感はダメですよね!?」
「まぁまぁ、そう興奮せずに……」
レクトはエステルをなだめて、機嫌を取っていく。
セシリアは、そんなレクト――ディアナの姿に、どうしても違和感を覚えてしまう。
「こうして見ると、ディアナ様もお美しいのに……」
「しっかり整えると、それはもう素敵なんですよ……。
セシリア様にも負けないくらいに……!」
リゼが、ディアナについて熱弁する。
学院で見せるディアナの姿は、どちらかといえば天才の側――
……知的であり、怠惰であり、個性的であり。
正直、好き嫌いは分かれてしまう……そんな印象があった。
「そうですわね……。レクトさん、少しピシッとしてくださいます?」
「え? 急に、そんなことを言われても……」
「ディアナ様は、伯爵家のご令嬢でしょう?
淑女教育は受けているはずですから、咄嗟に出せるようにしておきませんと」
「そうですよ! ディアナお姉さまの、素敵なところが見たいです!!」
「いや、本人に言ってくれよ……」
しかし既に、セシリアのスイッチは入ってしまっている。
「まずは優雅に、ティーパーティを楽しむことにしましょう。
ちょうどここには女性が4人いるわけですから……、女子会を行いますわよ!」
「わぁ……! 素敵ですね……!」
「でも、ディアナさんの中身はレクトじゃないですか。
女子会で話すような内容、ここで話せるわけが無いですよ!?」
「ああ……。恋バナをするわけにはいきませんものね……」
セシリアはエステルを見て、楽しそうに笑った。
エステルは彼女に強い視線を送ってから、レクトに話し掛ける。
「――まぁ、今はディアナさんの身体だし……。
マナーとか礼儀作法をおさらいしておくのも、悪くはないかもね」
「わたし、少し忘れてしまっているので……。
エステル先輩とセシリア様に、しっかりと教わりたいです……!」
「……私、こういうのはちょっと……。セシリアさん、教師役をお願いしますね!」
「あらあら。エステル様も、社交の場に出る可能性はあるでしょう?
だから――みなさま、今日は厳しく参りますわよ!!」
その言葉に、リゼは元気に返事をした。
エステルは仕方の無さそうに、レクトは正直――ディアナの研究室に、戻りたくなっていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
辺りが暗くなった頃、レクトとエステルは修練場に向かった。
エステルが剣を振るう中、レクトはその姿を静かに眺めている。
「はぁ……。俺も剣を振りたいぜ……」
「ディアナさんの身体でそんなことしたら、身体を壊しちゃうわよ?」
今、レクトはディアナに憑依している。
そのため、エステルと一緒に修練をするわけにはいかないのだ。
「ディアナの手は、研究者……って感じだしな。
力強くはないが、仕事をしている手だ……」
闇が落ちた空に、右手をかざす。
ただ、そうは言っても……とても女性的な手。魅力的な手に映ってしまう。
「それにしても、レクトのさっきの姿……。本当に、素敵な淑女って感じだったわね?」
「元々、そういうのは身体に叩き込まれていたみたいだからな。
俺はそれを、なぞっただけだよ」
「ふぅん……。でもやっぱり、私からすると……憑依の感覚って分からないのよ。
――あっ。憑依をする方、の感覚ね!? だから、私には憑依しないでね!?」
「いやぁ……。エステルには憑依しないって、約束しただろ?」
その言葉に、エステルの動きがゆっくりと止まる。
「ふふっ。分かっていれば良いのよ。
……さて。私はレクトよりも先に、剣気を発現させちゃおうかな~?」
「ははは、俺も負けないぞ?」
「……っていうか、しばらくはディアナさんに憑依してるんでしょ?
そんなレクト君に、負ける気はしないなぁ?」
エステルは再び、剣を振り始めた。
最近、レクトは修練の時間が少なくなっている。
リゼを助けたり、ディアナのドタバタに巻き込まれている、という理由もあるが――
それでも彼は、剣術に重きを置くべきだ。
……本当に、彼は剣聖への道に立っているのだろうか。
仮に立っていたとしても、仮に立っていなかったとしても――
それを認識させるのは、今まですぐ隣にいた存在……自分であるべきだ。
――そう。
自分で、あるべきなのだ。
エステルの頭の中で、何かが弾けた。
今まで手を伸ばしても届かなかったものが――……すぐそこに、あるような気がした。
身体の奥底から力が湧いてくる。
それは熱いものとなり、腕に、脚に、胴体に、頭に流れ込んでいく。
「――ああ。これが――」
「エステル……ッ!!?」
瞬間、エステルの身体から大量の揺らめきが生まれた。
エステルは全てを理解したような瞳で、木の剣の先を見つめる。
……そして、揺らめきを一心に集中させていく。
「おおおおおおおぉ――ッ!!」
……大きな声と共に、鋭く振るわれる木の剣。
そして轟音と共に――修練場の地面が広くえぐれた。
エステルはその光景を、息を切らしながら呆然と見ている。
「――ははははっ!! エステル、凄いじゃないか!!
今のは、ちゃんとした剣気だったぞっ!!?」
レクトは思わず飛び出し、エステルを抱きしめた。
エステルも穏やかな目で、彼に応える。
「……うん。やったよ、私――……」
エステルは静かにレクトの腕に触れ、そのまま抱きしめて返す。
ただ……今のレクトは、ディアナの身体だった。それが少しだけ、寂しく思えてしまった。
ふたりはそのまま、エステルの成長を共に喜んでいたが――
……少し経つと、誰かの声が聞こえてきた。
「おーい、大丈夫か!?」
「ここにいるやつは、ちょっと集まれー!!」
……改めて考えれば、今はもう夜になっている。
そんな時間に、こんな場所で轟音が響けば……様子を見に来るのは当然のことだ。
「あ、すいません。ここにいるのは、あたしたちだけです」
「うん……? 3年生のディアナか?
お前は錬金術師だろう? 何でこんなところにいるんだ……?」
「まさか、危険物の実験をやっていたんじゃないだろうな?」
そのふたりは教師だった。
ただ、それにしても――ディアナの印象のせいか、勝手に話を進めてくる。
「ちがいますよー。2年生のエステルさんが、剣気を発現させたんです。
何でもかんでも、あたしの実験のせいにしないでくださいよ~」
「な、何だと……?
……確かに剣聖候補のエステルだな。今の話は、本当なのか!?」
「は、はい……! すいません、こんな夜中にご迷惑を……」
エステルの返事を聞くと、教師のふたりは嬉しそうな表情を露わにした。
「そ、そんなことはないぞ……!! そうか、剣気を発現させたのか……よくやった!!」
「これは学院長に報告をしなければな!!
今夜はもう遅い……。明日、時間は取れるか!?」
「えっと……。はい、問題ありません」
「それでは私の方から調整しておこう。エステルは明日、昼休みに教員室まで来るように」
「ああ、修練場は明日に直させるから。だから、お前は気にしないで大丈夫だぞ!」
そう言い残して、教師たちは帰っていった。
「――はぁ。
何だか……感動に、水を差されちゃったね」
「……まったくだな。さて、明日も予定を入れられたし、今日はもう解散にするか」
「え……?
……そうだね。レクトも寮に戻る?」
「いや、俺はディアナ先輩の研究室に戻るよ。また明日、会おうぜ」
「うん、わかった。それじゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
修練場から出て、レクトはエステルと別れた。
ただ、そのまま……彼は、修練場に戻っていった。
そして木の剣を取り、ディアナの身体で構えを取る。
――重い。
ただの木の剣なのに、それがやたらと……重い。
レクトは木の剣を手放して、地面に落とした。
そして、星空を見上げて――……しばらく、ひとりの時間を過ごしていった。
コメント
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ああ、第21話読んだよ!今回は憑依中のディアナ(レクト)が女子会に巻き込まれてて、もうその構図だけで笑えたわ(笑)。セシリアの「背徳感」発言とか、リゼの「お兄ちゃん憑依して」アピールとか、エステルのやきもちとか、3人のキャラがしっかり立ってて会話がめっちゃ楽しかった! で、終盤のエステルの剣気発現シーンはガチで熱かったね。ずっと掴めなかったものが、隣で戦ってきたレクトを意識した瞬間に弾けた……って流れ、めちゃくちゃ良い。でもその直後にレクト(ディアナ)が一人で戻って木剣握るところ、何か切なくてグッときたよ。強さと寂しさが同時に来る、いい話だった🔥