1
アンケル地方リクトレス王国ノイランド区内街中
所々に苔の生えた石畳、その上を駆け回る2つの影、内1つはユーアことユーアレムセスト・アオトペス、もう片方は現在進行形で追っている霊物である。
「待て!!!!」
祓霊者だあることを示す黒いパーカーを振り回し、焦茶色で毛先が赤みがかっているサラサラとしたストレートな髪が自由気ままに暴れる。
「うらっ!!!!!!!!」
バギィ!!!!!
安定のグロテスクな音が鳴り響き、霊物がその場に力なく倒れるが完全に祓霊できているわけではない。
後から追いついてきた同じパーティで祓霊者を始めた時からの仲間であるレイズ・シーカに言った。
「悪い、とりあえず追いついたけど属性で祓霊してくれねーか?」
「お任せください、」
お手のものと言わんばかりにシーカは右手を軽く霊物に向けて属性を放ち祓霊した。
シュルファニア地方セルバニス王国祓霊者本部
「も、もぅ無理だって…」
「甘えるなユーア!」
桃色の髪を靡かせて人間最強攻撃力の持ち主、御三家ミラノリア家系に族するエル・ミラノリアは自分もこなしながら俺を指導していた
「は、吐くって…」
「吐くな」
酷いよ!って付け足しながらもやるのが俺式。
「100回終わりぃ〜!」
「おつかれユーア、」
「ありがと」
「え?まだあと3セットあるよ?」
「そっちの意味!?」
祓霊者はいつ指令が入るかはわからない、そのため怪我もしていない日頃は各自で能力を磨いたり筋力をつけたりとすべて各々が調節する。
全祓霊者は原則シュルファニア地方内に滞在することが義務付けられていて旅行に行くなどシュルファニアを出る場合は休暇期間内か申請を取らないといけない。
というのも祓霊者は世界に散らばる5カ所の安全地帯に極力早く行く必要があるためテレポートで向かう、ただテレポート装置がセルバニスの本部にのみあるから祓霊者の住在地はシュルファニアに限られている。
数十年前にテレポート装置を開発した学者は5つのテレポート装置を作り永眠した。
テレポート装置は本体と副装置と呼ばれる帰ってくる専用の機械の2つでおりなされる。
テレポート装置を増設するためレシピ分解などが進められ研究されてもテレポート装置に関するものは幻の如く一つとして出ず、実際に増設することは断念せざるを得なかった。
そこでまずは中心地のシュルファニアと各4カ所をテレポート装置で結び、緊急性の高い祓霊者のみが通れるようにシュルファニアではセルバニス本部など祓霊者しか入らない場所に設置した。
って話をだいぶ前にネイさんに聞いた。
住在地はシュルファニア内なら何処でもいいけどセルバニスにある本部で1日を過ごす祓霊者がほとんど。
俺の場合は属性を持たないため1日のトレーニングの殆どが筋トレ、体力トレと精神的にキツいものになっている。
日が暮れそう、それしか感想の浮かばない夕方に俺とエルは話しながら自宅のあるミライムに帰っていた。
「疲れた…」
「私もー」
「必要以上に走ってる気がする」
「だってユーアは仕方ないじゃん、属性を持たないんだから攻撃できないでしょ?」
能力も無効化系だし、と付け足しエルは上を向いた
「バグにも程があるだろ」
自らを腐しながら俺は軽く笑って言う
「半霊の力使えばいいのかもしれないけどな」
「そろそろ学習しろ!半霊の力は…」
わかってますよとアピールするためにあえて被せて続きを喋った、
「体力的にもきついからここぞの場面以外で使うと戦闘不能になるよ!…でしょ?」
「知ってるのなら実行に移せよ」
頬をプクッと膨らませエルは返してくる。
「それにいつ暴走するかわかんねーしなw」
ちょっと重たい空気を流したかった俺は冗談の意を込めて笑いながら言ったはずなのにエルは違ったみたいだ、視線が夕焼け空からこっちに向いた。相変わらず綺麗だけどちょっとオーラのある澄みきった目を見ると嘘がつきづらくなる。
ただいつまでも重たいままいるのは俺もエルもしんどいだろうからがんばって話題を変える。
「俺って変な奴だよな〜」
「今更かよ、不登校高校生っ!」
「高校一応卒業したっての!」
真っ白な歯をチラつかせながらエルがおちょくってくる、今度は真面目な話をしようと思ったのにエルには別の意味に聞こえたらしい。
正当な理由があるんだよ、と付け足して本題に戻した。
「半霊が霊物扱いなんて酷いもんだよ、祓霊者の功績があるから今回は免除してもらえたけどもうすぐ祓霊されるとこだったんだろ?」
「葬式の心構えはしておいたけどねw」
どうやら真面目な話をする気分じゃないようで
ちなみに奇遇だ
「じゃあな!死ぬなよ!」
エルより一つ前の駅で俺は電車を降りて自宅に向かった。
家って言ってもここは育ての親がいないミライムだから自炊をする必要がある。
「嫌だ…また炭みたいな豚肉を食わないといけねーのか…」
シュルファニア地方ミライム国ラモネイル区内ユーアの自宅
憂鬱な気分を引きずり家に戻ると先客がいた。
「ただいまぁ〜」
「お兄ぃ!!」
黒い長髪を簡単に括って左手にはナイロン袋、右手は包丁を握っている、これがレナリノン・アオトペス__妹でなければ俺は死を覚悟しただろうな。
「お、どうしたんだレナ」
「今日は私が作ってあげたの!!」
「?」
一瞬困惑したが時間的に食事であることを察して続きの会話をはじめた。
「何にしたんだ今日は、」
「テンプラなの!!!!」
元気よくはしゃぐ妹を横目に俺は嫌な予感がしてキッチンに急いだ。
「あ」
レナがちょっとテンションを下げてつぶやいたと言うことは…
予想通り、
「マジかよ…」
「…ごめんなさいなの」
キッチンは散らかりまくっていた、食器がばら撒かれ数個割れている、おそらく落としたか何かなんだろう。
適したものを選ぼうとした努力が愛らしく感じ特に怒ったりすることはなく、
「大丈夫か?」
軽く安否を確認してそこからは触れることなく皿についてはスルーした。
お次に目がいったのは油の飛び散ったIHコンロ、特に何かあったわけではなさそうだから安心した反面油の処理という重労働が待っていることを悟りすこししょげたが顔には出さない。
「で?テンプラはどうなんだ?」
あまり反省させるのもかわいそうだからレナの犯した大量のミスには触れずにゼパニル__旧世界の日本、人呼んで和の国の独特な料理、テンプラに話題を振った。
「真っ黒になっちゃったの…」
下を向きながらもレナのクセである独特な「の」で終わる話し言葉を忘れないあたり本当にクセついてるんだなってしょうもないところに関心しながら口の端を軽く上げて言った。
「全然、とりあえず食べるか?もう20:00だ」
時計を指すとレナが満面の笑みで頷いたから無意識に妹の可愛さを再認識して洗面所に向かった。
「「いただきまぁーっす」」
俺が帰り道につぶやいた炭というのはレナの料理ではない、紛れもなく俺の自炊。
ただレナも料理を作ると炭になる。
何故ならまだ11歳、俺は19歳の歳の差8歳の兄妹だ。
というのも俺が14の頃にレナははぐれて生きたまま半霊にされた、そこから4年後再開してレナは半霊の力をコントロールできるようになった。
霊は不老の為年齢は永久に11歳のまま。
仮に年齢は数えたとしても歳だけをとり心身は11歳で変わらない。
俺が70.80歳になったり戦死したりしても永久に11歳のままだ。
そう考えるとなんとも言えない感情が溢れてくるが上を向いてぼやけた視界でレナに見ないように気をつける。
極力俺はレナが辛い思いや寂しい思いはしないようにするが気を使うなんて他人事なことは死んでもしたくない。
本当は歳の差が3つのはずなのにどんどんレナを置き去りにしてしまう。
「(や、ヤバイ…炭だ…)」
炭と化したテンプラを出来るだけ笑顔を装って食べながら少し前のことを思い出してしまった。
このテンプラがどんな味なのかはそれぞれの想像にお任せしよう、あえて語らない。
「「ごちそーさまぁー」」
「もう眠いなら寝ていいぞ」
目を擦っていたレナに声をかけるとよっぽどだったのかレナは即答だった。
「うんそーする…おやすみなの」
「よく寝ろよ、おやすみ」
親か聞かれそうな返しをして俺は難関である油の処理に向かう。
「あー…先片付けすればよかったな」
ちょっと後悔しつつも先に片付けしたら俺が帰ってくるタイミングで揚げてくれたレナに申し訳ないからあまり間違ったとは思っていない。
「…」
無言で油を処理し、割れたガラスを片付けて、皿を洗い散らばったものを掃除する。
1時間半ほどかけてようやく終わらせた。
時計の針は22:00を指しているが掃除を始めるとリビングの汚れも気になり追加で掃除した。
結局30分ほど掃除を余分にした。
シュルファニア地方ミライム国ラモネイル区内近隣のコンビニ
「やべぇ腹減った…」
曇ってドス黒くなっていかにも霊が出そうな空だなって考えながら無意識につぶやいた。
こんなご時世だから全然シャレにならない。
レナが作ってくれたのは多分エビだったものであろう揚げすぎてこの空くらい真っ黒になってしまったテンプラと水分を余分に入れてしまいお粥と化したお米だけだ。
レナは顔を萎めながら食べたが満腹にはなったみたいだ、自分で作ると美味しく感じるのだろうか、レナが満足したなら別にいいけど。
23:00が近づく深夜だから空いてる店はもうないから近くのコンビニで夜食を食べる。
不健康だと体に悪いからちゃんと野菜も購入する。
「も、もしかしてですが…」
「?」
「貴方ユーアレムセスト様ですか!?」
「あ、はいそーっす」
たまにあるのだ、祓霊者のユーアレムセストだとバレて感謝されることを。
「いつもありがとうございます、前は私の母親の霊を祓霊してくださりありがとうございました、祓霊者様には本当、頭が上がりませんわ」
見た目的には40ほどのおばさんだから母親はかなりの年、となれば頭に浮かぶのは少し前に祓霊した危険度2の霊物。
祓霊者は危険度に関わらず任務をこなす必要がある。
危険度の高い霊物にはたくさん殺して魂を抜いたため見た目が変わっているものが多いが危険度が4以下なものは殺した数が少ないことが多く元の容姿のままの場合が多い、さらに遺族に感謝される場合はつい最近死んで霊になった危険度の低い霊物の話であることがほとんど。
「はい、霊になってから多くの人を殺す前に祓霊できたので、安らかに眠れてると思います」
サラダと弁当とお茶を受け取りながら答えると店員の人は涙を浮かべて喜んでいた。
「(多くは殺してないけど少しは殺してるんだよな)」
稀にネイさんとかカナタさんみたいに有名すぎると収拾つかなくなるため変装している人もいるけど俺はそこまでではないし感謝されるのは悪い気もしないから特に変装することなく出歩いている。
感謝された後の気分はとてもよい。
もとは感覚的なもので祓霊者をはじめたが祓霊者は誰でもなれるものではないし能力、属性がないとすぐ死ぬ、さらには半霊のレナと出会えた、それだけで奇跡であの直感を信じて祓霊者になって良かったと思ったが最近俺も少し世に名前が出始めてから感謝されるようになった。やはりいいことをした気分になる。
祓霊したということはあの店員さんの親の命を完全に奪いこの世から抹消したということにもなる、つまり殺したのは俺。
そんなネガティブ的思考に陥りそうになるが感謝されたりお礼を言われるとすこし気が楽になる。
祓霊者は新世界屈指の心身に負荷のかかる職だろう。
考えながら外に出ると星が輝いていた。
2
シュルファニア地方タリアート国ピアネル区内
ピアネル大病院
「シスコンにはならないでよ?」
「実の妹として可愛いと思ってるだけだ!」
「さ、流石に大丈夫…ですよね?」
「心配になるなよ!」
少し前のテンプラの出来事を話したらシスコンを疑われたが恋愛感情の方は芽生えていないから大丈夫みたいだ。
今更確認するようなことじゃないけど、
そんな余談は置いておいて今日は地獄とも言える身体検査の日だ。
1日中ピアネルの大病院で検査されるのだ。
たしかに大事ではある、けどこの身体検査は本当に嫌だ。
祓霊者は4ヶ月に一回身体検査がある為年に3回の地獄の検査を前にすると俺の場合予防接種を嫌がる子供のような気分になる、
というのも仕方ないと言ってほしいから説明するとまずピアネル大病院に8:00までに入る必要がある、そして8:00をすぎると早速検査開始、まず俺の場合血液検査をするからなんと3回も血を抜かれる、体の小さい__って言ったら怒られるけどエルとか貧血にならないのか心配になる。
そして次に全身レントゲン、祓霊者にケガはつきものだから細部に渡ってもれなくチェックする。
放射線の後遺症が地味に怖い。がんって言う旧世界では有名な病気にかかるらしい。
がんなら某新型ウイルスとかインフルエンザみたいに薬を使えば治るけど。
それで異常なければ次は全身CT、これも怪我を発見するためのもの。
昼食休憩を挟み心電図やMRI検査など精密機械を使い調べる。
ちなみに俺は密閉で爆音を鳴らされるMRI検査が大嫌いというか苦手で毎回体調が悪くなる。
閉所は大丈夫だから閉所恐怖症ではない、適切にいうとMRI恐怖症だろう。
最後にあるのは最悪の検査、内視カメラによる検査だ。
口から内視カメラを入れられるのは痛いしその時の顔がブサイクの他ない、日頃から危険と隣り合わせのため内臓がきずつくこともある、その場合命の危険が出るため治療が必要。それは知っている、でも嫌なのだ。
カメラに映る自分の体の中がグロいし…
平然とそれを眺められる医者の凄さが改めてわかる。
それが終わると帰れる、
ただ次の日もピアネル大病院に行く必要がある、検査結果を知るためだ、異常があるかないか、どこの数値に異常があるかなど。
祓霊者には一年に76日休暇が与えられる。そのうち6日はこの検査に使われる、検査の日とその次の日は休暇扱いになる、検査をのけると一年に70日。
普通の仕事より少なく感じるが祓霊者が一年間無傷で終えることがまずない、入院して身動きが取れない期間がある。
それは休暇には入らないが休養としてカウントできる。
70日間は好きなタイミングに申請して休むことができる。
もし70日一回も一年で休暇を取らなければ次の年に140日休む___なんてことはできないけど一回も一年に休暇を取らなかったら最大半分になる35日は次の年に繰り越せる。
ただ残り半分はチャラにされるから休暇は使ったほうがいい。
それに身体負荷的に考えて一年で休暇0で過ごせるような人は多分人間を卒業をしている。
定期的に連休を取らないとそのうち死ぬ。
いわゆる過労死というやつかもしれない。
70日間以外は常に要請が来るため極度の疲労がつきものなのが祓霊者である。
ただ要請が来たら100%以上で戦うことが絶対条件のため疲労は溜まるがその日のうちに解消するのが普通。
要請があれば1日で働くのは戦ってる30分とか1時間とかのみ、それ以外は休暇と同じく自由行動が許される。
自由行動は許されていても戦った後は怪我とか疲労とかでとても遊ぶなんてできないし、俺の場合レナとの会話も減るほど疲れる。
多くの祓霊者は空き時間に怪我の治療や追加で睡眠をとる。
休暇以外は霊物らと臨戦体制と言っても過言ではない世界のためいつ要請が来るかはわからない。
部分的に言えば消防官や救助隊に近いかもしれないが詳しく言えば遠くかけ離れている。
「えー…」
「…」
「何も異常ないですなぁ」
つまらなそうにぼやく丸メガネの老医者を見て俺の心情を簡単に示すと不安というものが1番近いだろうか。
「あーそーっすか」
それっぽく返すが特に意味はない。こんな感じの検査が何に6回ほどある。祓霊者の試練だ。
シュルファニア地方セルバニス王国ムクレジ区内祓霊者本部
本日はと言いますと祓霊者をしている中でもトップクラスの苦痛…事務作業だ。
計算して用紙に記録して提出、それを繰り返す日が何度かある。
何故なら祓霊者は1ヶ月単位で所属パーティの戦闘歴や祓霊者としての行動記録を提出しないといけない。
そのため大体の祓霊者は1ヶ月のうち4、5日を事務作業の日として費やす。
だいぶ少ないが俺はそれが大嫌いだ。
何故なら
「おいバカユーア!!まーたここ違うじゃないか!」
「えー?何か違うか?」
「0が何個か多いぞ!」
「ならエルがやれよ!」
「無理」
「あのぉエル様…」
俺とエルが喋ってるとシーカが遠慮気味に口を挟んできた
「エル様も多数間違ってます」
俺、エル、シーカ、この3人のパーティだが俺もエルも事務作業が超苦手である。
通常は4、5日でいいところ俺達は1週間ちょいかけて終わらせる。
全体の半分はシーカがこなしてくれるんだけどな。
俺は真面目に働くシーカを横目に成人しても働きもしない引きこもりニートのように寝そべって最近買った新品のiPhoneを眺めている桃色の火ノ神を睨む。
「あぁ…悪い悪いw」
「エルさん?」
「休憩だよ休憩w」
誤魔化すが舌をちょびっと出しても魅力的な笑顔を見せても許されるものではない___なんて俺は言えないから黙って作業に取り掛かる。
正直事務作業はサボりたい…でもしないとお金がもらえないのだ。
そうなるとレナにひもじい思いをさせてしまうことになる。
それだけは嫌だ。
だから事務作業をしっかりやって今月も来月もレナにご飯を食べさせれるよう頑張る。
祓霊者は月収制、平均1000万〜3000万€月終わりにもらえる。
祓霊者の平均年収は約2.5億€。ちなみに俺は4億€(520億円)年に稼いでいるスゴ腕(自称)祓霊者。
これだけ事務作業をサボるエルはなんと年に21億€(1.8兆円)稼ぐ、逆に俺の何倍もの事務作業をこなしているシーカは3億(390億円)と俺より少し少ない。世界はなんとも理不尽だ。
ケタがバグってあるのは危険と隣り合わせだから。
そのせいで貧しい村の人とかと揉めることが稀にあるんだけど。
「終わったぁ〜!!」
「おつかれ〜、私はまだ…」
「ユーア様、まだここが残ってますよ」
「そんなぁぁぁ〜!!!!」
3
シュルファニア地方ミライム国ネリフィシア区内ショッピングモール
買い物に行くことだってあるし物資を仕入れることも多々ある。
その一環でここのショッピングモールとかの人が集まるところでは霊物がよく出る。
というのも霊物は元々人間の魂。
出現率の高い場所は3パターンあって1つは高所や海辺などの自殺ポイント。
人が死ぬところはよく霊物が出る、旧世界で言う心霊スポットみたいなところ。
自殺で死ぬような精神力の低い人の魂は霊になっても危険度が低く強い霊物に取り込まれることがおおい。
つまり強い霊物は自殺ポイントをナワバリとしてどんどん強くなっていく。
フラストなどの霊物はこのやり方で生きていた。
2つ目として挙げられるのは、人がよく集まる所。
ここのような人が密集する施設や都市に自殺ポイントである程度強くなった霊物が来て今度は死んだ人の魂を取り込むのではなく生きている精神力の高い人の魂を取り込み強くなる。
精神力が高ければ高い方が霊物は強くなる。
人が多いため大量虐殺がしやすく一気に強くなるし人が多いと祓霊者が戦いにくいため戦闘でも霊物側が有利になる。
テトやフキなどはこのやり方で生き延びた。
3つ目は山奥や村などの田舎や過疎地。
都市で生き延びたチート級の霊物は山奥や過疎地に住み込み長く生き続ける。
そして稀にある祓霊者不作の期間に都市に降り立ちさらに強くなる。
ウロブランはこのタイプになる。
まぁこれを見ればご存じの通り霊物が現れない場所はない。
ただ現れにくい場所はある。
人間にとって過酷な環境だと霊物も現れにくい。
そうでなくてもシュルファニアやミラロアなど祓霊者の多い場所は少ない。
祓霊者は全部で30人ほどしかいないからはっきり言って給料はとてもいいけど超危険だし身体負荷も大きくブラック。
君が祓霊者やるって言えば俺は反対する。
まず能力がないと祓霊できないから高確率で戦死してしまう。
「あ、これとこれもお願いします」
普通の買い出しに加えて必須でなく逆に不必要ではあるが気が向いてユーアはレナにあげようとアーモンドが中に入った某ミルクチョコ、そして俺自身の好きな飲み物ランクトップ3には入るであろう缶コーヒーを追加で渡す。
意外と庶民的?
4億あっても好きなものは変わらないもの、それに好きな飲み物ランクトップ3に缶コーヒーが入る時点で相当な曲者だと我ながら思う。
ちなみに俺はブラックコーヒーよりアイスカフェオレが好き。
アイスならカフェオレでホットならブラックが好き。どうでもいいけど。
「はい」
袋に詰めながらお金を出す。
するとレジ担当の店員さんがバーコードを読み取りながら話しかけてきた。
「ユーアレムセスト様ですよね?」
そろそろ俺も変装しようかな、なんてね。
「はい、」
「いつもありがとうございます…」
「全然ですよ、俺よりもっとすごい祓霊者もいるんで」
謙遜したけどぶっちゃけこの人に関わったかは覚えていない。
向こうは覚えてくれていても俺は大量の人に接するため忘れてしまうことがある。
極力覚えようとはしてるしその人の思いを汲み取っているつもりではある。ただ仕方がない、それだけは許してもらいたい。
申し訳ないっす。
「うちの息子が誰も殺さずに永眠できたのは祓霊者様のおかげです」
「それはよかったです、では」
エルに見られると無愛想って言われそうだけど少なくともシュンより疲れてる時の俺の方が感情こもってるぞ。
買った商品を袋に詰め込み店を出て屋根のない駐車場を歩く。
車の免許はないから俺は歩いて出かけることがほとんどになる。
稀に電車とかタクシー使うけど基本歩かないと霊がいたとき対処できないから。
「屋上から人が落ちてきたぞ!!!!」
「屋上に霊物がいる!!」
「祓霊者を!!!!」
「ユーアレムセスト様が居たはずだ!!!!」
「探せ!!はやく!!」
向こう側から人の叫び声が聞こえたため急いで向かった。
そこで1人が肉片になっていた
正直グロテスク。
祓霊者じゃなければ関わりたくもないくらいグロテスク。
ものすごいことになっていて人の原型なんてとどめていない。あえて語らないどころかこんな神聖な真っ白な小説の1ページに肉片の説明なんて入れたくない。
「離れて!!」
一般の客を某肉片の近くから遠ざける。
「始めましてかユーアレムセスト」
漫画でありがちな少し高いところから逆光の中腕を組んで話しかけてくる猛者感の溢れ出た霊物が俺の名を呼んだ。
「誰だ!」
無視して祓霊することも考えたがちょっと優しい俺は名前を言いたそうな猛者感の溢れ出た霊物に名を聞いた。
「ニストル・チャベルさユーアレムセスト」
「今すぐここから離れろ!!!!」
退去するよう言っても聞かないことはわかっていたからもうすでに準備はしていた。
ニストルと名乗った霊物は屋上から攻撃してきた。
「(あっぶねぇな…)」
どうやら遠距離型の能力を持つ霊物らしい。
あくまでも推測だが。
「『霊才解放』」
昼間だから翼は使えないが今は亡き友人のジュラトから学んだ“ジュラビティ”こと引き寄せる能力をつかい屋上から引き摺り下ろす。物理的に。
「うらっ!!」
こんな落ち着きも何もない1日と日常もユーアには苦でない。
それは自身の過去と1人取り残された家族を養うという使命感と霊から人を解放したいとの決意の表れである。
ユーア自身でも多くの動機のもと、日々奮闘しているが、誰しも何かの苦しみを乗り越えて目標に取り組んでいる。
それはユーア達や、祓霊者だけにとどまらない。
このあとのニストルとの戦いや、これからのユーアの日々については、折を見て。
コメント
1件
自身初の短編小説は前哨戦のノベル版ということになりました、どうもuniです。 超長いけど楽しんでもらえましたかね? 10人いるかいないかくらいの前哨戦ガチファンの方々向けに作ったので好みは分かれるとこもいますが好評なら第二巻更新しますのでお楽しみに