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奏太は、12年前の世界で新たな人生を歩み始めていた。
高校生としての自分を生き直すことができるのかもしれない。
そして、もしこの過去で正しい選択をすれば、未来の運命を変えられるかもしれない。
父を病気から救うために、早めに検査を受けさせることを決意した。
映画部では、12年前の仲間たちとともに新たな作品を作ろうとしている。
あかりとも、もう一度心を通わせることができる。
だが、本当にこの時間が続くのか?
未来を変えられると信じていたが、心の奥底では、常に不安が付きまとっていた。
それは、ある“異変”が始まっていたからだった。
ある日の放課後、映画部の撮影準備を終え、奏太は帰宅していた。
自宅の玄関を開けた瞬間、急に意識が遠のいた。
視界が歪む。頭が割れるように痛い。心臓が強く脈打つ。
「ぐっ……!」
思わずその場に崩れ落ちる。
耳鳴りがする。世界がぐるぐると回る。
――これは、何かがおかしい。
「奏太!」
遠くで父の声がする。
……違う、これは現実じゃない。
何かが……何かがズレている……。
意識が真っ暗になり、次に目を開けたとき、奏太は驚愕した。
気がつくと、奏太は白い病室のベッドの上に横たわっていた。
点滴のチューブが腕につながれ、機械の電子音が静かに響いている。
「……病院?」
頭が混乱する。
さっきまで、12年前の世界で映画部の撮影をしていたはずだった。
なのに、突然未来の病院に戻っている。
「起きたのね。」
優しい声がした。
振り向くと、あかりがいた。
彼女はベッドのそばに座り、心配そうにこちらを見つめていた。
「……あかり?」
「よかった……本当に……。」
あかりの目には、涙が浮かんでいた。
「君……泣いてるの?」
「当たり前でしょ!」
彼女は、手を握りしめていた。
「だって、君、ずっと意識が戻らなかったんだよ……!」
――意識が戻らなかった?
「俺は……どのくらい寝てた?」
「あれから……3日間も……!」
奏太は、息を呑んだ。
つまり、俺は12年前の世界にいたつもりだったけど……本当は意識を失っていたのか?
それとも――。
俺は、本当に過去に戻っていたのか?
過去の世界は、夢ではなかった。
しかし、それがどこまで現実と繋がっているのかは、まだ分からなかった。
もし、あの世界が単なる夢なら、何をしても未来には影響しない。
でも、もし本当に過去に干渉できるのなら――。
「俺は……過去で父さんを助けるつもりだった……。」
小さく呟いた瞬間、あかりが驚いた顔をした。
「……何?」
奏太は、自分が過去で見た父の姿を思い出した。
「父さんは、12年前に肺がんを発症していた。でも、もし過去で俺が検査を受けさせていたら……。」
奏太の中に、新たな確信が芽生えた。
「もし、もう一度過去に戻れるなら、今度こそ未来を変えられるかもしれない。」
あかりは、奏太の手をぎゅっと握りしめた。
「奏太……。」
「……大丈夫だよ。」
彼女の震える手を、奏太は優しく包み込んだ。
「俺は、絶対に諦めない。」
父を助けるために。
映画を完成させるために。
そして、みんなと過ごす時間を守るために。
もう一度、過去に戻る――。
そのためには、どうすればいいのか?
「……奏太、何を考えてるの?」
あかりが心配そうに見つめる。
奏太は、静かに答えた。
「もう一度、過去に戻る方法を探す。」
未来を変えるために。
運命に抗うために。
今度こそ、全てをやり直すために――。