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だって好きだから

2 - 犬も食わない続き

♥

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2025年02月03日

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数日経って。

岩本はダンス練習の休憩中に深澤と渡辺のことを話している。


深澤はかつて岩本に片想いをしていた過去があるが、そのことはもうとっくに水に流している。

なぜなら渡辺と付き合うと決めてからの岩本は、もう他は眼中にないといったメロメロっぷりなのだ。

こっちが嫉妬するのがバカバカしくなるくらいに、深澤は渡辺の話ばかり聞かされている。

渡辺に固く口止めをされているため、メンバー全員でいる時は岩本も極力態度に出さない。

その反動で、岩本は深澤と二人の時は、渡辺への惚気や愚痴が止まらないのだ。

深澤から見ても、渡辺は人前ではクールでいたいタイプだから、岩本としては物足りないのだろう。



💛ねえ、俺が悪いの?


💜照は目黒とのこと疑ってんのまだ


💛疑ってるわけじゃないけど…



そもそも目黒と渡辺は岩本と付き合う前から仲のいい友達だ。

家の行き来もしていたし、今もよく電話で話している。

岩本が嫌がるので渡辺もさすがに目黒の家に行くことは控えているようではあったが。

しかし嫉妬深い岩本は気が気ではない。



💜キャンプ行くのやめれば?で、なべについてく


💛……でも、山仲間は山仲間で大事だし


💜それはなべもそうなんじゃないの?


💛目黒のこと?


💜うん


💛…そうなんだよな


💜わかってんなら我慢したら?


💛………


💜照


💛……………


💜ひーかーる


💛嫌だけど……わかった



不貞腐れてはいるが、岩本は渋々呑み込んだようだ。



💜まあ、とりあえずなべに謝れ


💛何度か電話したけど、出てくれない。メッセージも既読だけだし…。


💜練習で会ってるじゃないか


💛仕事場で話しかけすぎると後で怒られるし。あれから対応も冷たい気がする


💜休憩中なんだし、今、声かけて来いよ



レッスン場の離れた所で休憩している渡辺を深澤があごでしゃくって指す。


💜あ



タイミング悪く、渡辺は目黒と二人きりで親密そうに話している。

岩本はつられて目線を向けて、明らかに嫌そうにした。

言ってるそばから…である。



💜ま、後で声かけろよ


💛ふっかぁ……俺の気持ちもわかるでしょ?


💜わからんでもない



大男がしょぼくれている。

深澤は可愛いと思った。



💜ま、そのうち許してくれるよ


💛そのうちって、いつだよ…


💜しつこく謝れ


💛それしかないかなあ?


💜ないんじゃない?



それでも一人で悩みを抱えているよりは岩本は安心する。

深澤はやはり岩本にとって一番の心の友だ。






一方で同じ時に渡辺は、目黒に愚痴を言っている。

別に二人で楽しい雑談をしていたわけではなかった。



💙まったく意味わかんねーわ。


🖤岩本くんのこと?


💙そう。あ、サンキュ。



目黒が差し出した水を受け取りながら、渡辺がうんざりしたように言った。

目黒は目黒で少し前から渡辺の愚痴をずっと聞かされている。

なんなら、二人が付き合い始めてからというもの、うまくいかないことがあるたびに、渡辺から目黒にLINEやら電話やらが来ている。

目黒も目黒でもういい加減慣れっこになっていた。



💙だってさ、俺が目黒と仲良いのはもともとなわけじゃん?


🖤そうだね。


💙それを今さらぐちぐち言ってくるのがそもそもおかしいのに、向こうが予定入ってる時も好きに出掛けられないってなんなの?


🖤まあ、それだけしょっぴーが愛されてるってことなんじゃないの



目黒がすらすらと答える。

それが渡辺には気に入らない。

今度は目黒を睨む。



💙……お前、今、めんどくさいなって思ってるだろう



急に矛先が変わった。

目黒の反応が渡辺のお気に召さなかったようだ。



🖤え?俺?


💙照とのことはほかに相談できる相手がいないんだから、ちゃんと話聞いてくれよ


🖤さっきから聞いてあげてるじゃん


💙うんざりしてない?


🖤…ちょっとしてる


💙おまえ~~~(笑)



渡辺の腕が目黒の首にかかる。

渡辺は笑っている。

なんだかんだ、目黒に惚気を聞かれたようで照れ臭いのだ。

そんな渡辺の体勢が、遠くで見ていた岩本にはバックハグに見える。

またこうやって岩本のストレスがたまる。



メンバーにとっては普段通りの練習風景。

しかし、そのうちの深澤と目黒二人にとっては、なんともむずがゆいような空間であった。






問題の日がやって来た。

二人はなんとか仲直りをしてその日を迎えた。

岩本は朝から山へ出掛けた。

渡辺は撮影へ。

終わり次第、目黒と合流する予定だ。

渡辺は仕事終わりに岩本にLINEを送る。



💙「じゃ、行ってきます」



しばらく既読がつかないな、と携帯をしまおうとした時、短い返事が返ってきた。



💛「楽しんで」



💙言われんでも楽しむわ



電話の向こうで恨めしそうに返事を送る岩本を想像して、渡辺は笑う。

なんだかんだで渡辺も悪い気はしない。

渡辺は仕事場を後にした。






個室の焼肉屋で目黒と待ち合わせをしている。

先に着いた渡辺が飲み物を選んでいると、間もなくして目黒がやって来た。



🖤待った?


💙そんなに待ってない。



飲み物と軽いものを何品か頼み、先に飲み物が来たので乾杯する。

目黒はビール、渡辺はウーロン茶。

目黒は1杯目のビールをぐいっと一気に飲み干した。



🖤うんまっ


💙美味そう。そりゃビールのCM来るわ(笑)


🖤むちゃくちゃ喉乾いてた(笑)


💙美味い?


🖤むちゃくちゃ美味い。しょっぴー飲まないの?


💙うーん。飲みたい気もするけど、照がなあ…



渡辺は岩本不在の時には酒を禁止されている。

目黒は意地悪く言った。



🖤岩本くんて、本当に亭主関白だよね


💙は?俺が嫁ってこと?


🖤間違いないでしょ



渡辺はむっとして、キムチやサラダを運んできた店員さんに、俺もビールください、と言った。



🖤いいの?


💙いいっ



目黒は笑う。

本当に渡辺は可愛いと思う。

胸に苦い思い出が蘇る。

目黒は渡辺にはわからないようにその気持ちにはそっと蓋をした。



🖤今日、岩本くんは?


💙さあ。キャンプ楽しんでるんじゃね?



渡辺がわざと突き放すように言ったのを目黒は見逃さない。



🖤…なーんだ。


💙何が「なーんだ」だよ



何かを察した渡辺が聞き返す。



🖤しょっぴーも寂しいんだ


💙は?違うし!!!



顔を赤くして、サラダを急いで口いっぱいに頬張る渡辺。

目黒は渡辺とこうして軽口を叩き合っている時間がたまらなく楽しい。

二人は仲良く楽しく久しぶりの食事を楽しんだ。






目黒と別れた後、渡辺はほろ酔い気分でタクシーを探しながら夜の街を歩く。

なんだか岩本の声が聞きたくなって、携帯を取り出したら、ちょうど手に持っていたその携帯が震えた。



💙もしもーし


💛翔太、今どこ?



電話の相手は岩本だ。

咄嗟に居場所を聞かれても現在地がわからない。



💙えーっと…



とりあえず目に入った電信柱に書いてある番地をそのまま言う。

岩本は迎えに行くから待ってろと言ってそのまま電話を切った。

GPSでも付いているのかと疑うくらいの速さで10分もしないうちに見慣れた岩本の車が現れて、目の前で止まった。



💙はや



おぼつかない足取りで渡辺は助手席に乗り込む。

車はそのまま岩本の家に向かって発進した。



💙キャンプ帰り?


💛うん、まあ



岩本はそのまま山登りをするような格好をしている。

後部座席には、キャンプ用品がいくつか置かれている。

山を降りてすぐ渡辺を迎えに来たのだろうと思われた。

渡辺は内心嬉しくなったが、岩本が機嫌悪そうにしているので黙っていた。


岩本が、信号待ちの時にやっと口を開く。



💛翔太、飲んでるでしょ?


💙…


💛約束は?


💙ちょっとだけだし



岩本がため息をつく。

車内が重たい雰囲気になる。

渡辺はぷいっと外を向き、黙ってしまった。

そしてそのまま二人は無言で岩本の家へと向かった。



💛着いたよ



渡辺の反応がない。

またへそを曲げたか、と思って、岩本は渡辺の肩を掴んでこちらに向けた。

すると驚いたことに、渡辺は眠っていた。

岩本はおかしくなって、自分が怒っていたのも忘れて大笑いした。

こういうところが本当に憎めない。

敵わないなと思ってしまう。



💙やべえ、寝てた



岩本の笑い声に目を覚ました渡辺が、涎を拭きながら照れ臭そうに笑った。



💛翔太


💙はい


💛もう飲まないって約束して


💙うん、わかった


💛ほんとに?


💙はいはい


💛反省してる?


💙してるしてる


💛ほんとに…んっ



しつこく念を押す岩本を口付けで黙らせ、渡辺は一足先に車から降りた。

岩本も一瞬遅れて続いた。

さっさと玄関へ向かう渡辺を岩本が追いかける。

二人の夜はこれから始まる。

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