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第一章:新学期、はじまりのチャイム
悠真(ゆうま)「あー、今日からまた高校生活か。春休み短すぎんだろ……」
健人(けんと)「おい悠真、まだ春ボケしてんのかよ。遅刻ギリギリじゃねーか」
悠真「いや、昨日夜更かししすぎてさ。ってか健人、髪型キマってんな」
健人「当然だろ。新学期一発目は勝負の日なんだからよ。お前、あの子のクラス聞いた?」
悠真「……あの子って?」
健人「お前、まさか忘れてねーだろ?入学式の日、ピアノの前で話してたあの子」
悠真「あっ……白石さん、か」
健人「そう!白石凛。俺ん中では新学期のヒロイン候補No.1だな」
凛(りん)「……あの、失礼。ここって2年A組ですか?」
悠真「! あ、はい、ここですよ!」
凛「ありがとう。えっと……あの時の、覚えてるかも」
健人「おーっと!?再会劇、ここに成立ぃ!」
悠真「うるさいよ健人……えっと、俺は神谷悠真。こいつは成瀬健人。よろしくね」
凛「うん。白石凛です。よろしくね、神谷くん、成瀬くん」
健人「よっしゃー!出席番号的に近いんじゃね!?席隣だったりしたらどうするよ!」
悠真「やめろ。そういうの期待すると痛い目みるんだって」
担任教師「えー、席順は出席番号順にしてありまーす。1番、相川さんから順に前の方へー」
健人「……神谷、お前何番だっけ?」
悠真「……6番」
凛「私は……5番、かな」
健人「はい来たー!運命来たー!!」
悠真「黙ってろ……でも、マジか」
凛「……隣、だね。うん、なんか嬉しい」
悠真「こっちこそ……うん、よろしく」
第二章:昼休みと、はじめての「もしも」
健人「おーい、こっちの席空いてるぞー!神谷、白石さん、こっち来いって!」
悠真「健人、叫ぶなって。昼休み、周り静かなんだから」
凛「でも嬉しいな、みんな優しそうで」
彩乃(あやの)「凛ちゃん、あたし相沢彩乃!中学のとき吹奏楽やってたの!」
凛「吹奏楽部なんだ、すごい。私はピアノしかやってなくて……」
健人「白石さん、ピアノ超うまいらしいよ。なんかさ、賞とか取ってるんだって?」
凛「えっ、そんな大したことじゃ……。ただ、小さい頃から習ってただけで」
悠真「でも、上手だったよ。入学式の演奏、印象的だった」
凛「……覚えててくれてたんだ。嬉しいな」
健人「おーい、なんか甘酸っぱいぞここ!」
彩乃「ふふ、青春始まった感あるよねー」
悠真「……白石さん、いや、凛。もしさ、時間があったら、放課後ピアノ弾いてよ」
凛「え? えっと……」
悠真「無理ならいいんだけどさ、また聴きたいなって思って」
凛「……うん、いいよ。放課後、音楽室に来て」
第三章:放課後、音楽室で
悠真「……やっぱ静かだな、この部屋」
凛「ここ、落ち着くんだ。ピアノの音も、響きが優しくて」
悠真「なんか、凛っぽいよね」
凛「えっ……?」
悠真「あ、ごめん。変な意味じゃなくて。静かで、優しくて、でもちゃんと届く感じ……凛の声と似てるなって」
凛「……ありがとう。そんな風に言ってもらえたの、初めてかも」
悠真「……あ、そろそろ弾いてくれる?」
凛「うん。じゃあ……ショパン、弾くね」
(しばらくのピアノ演奏)
悠真「……すごいな。これ、学校の音楽室に響いてるってのがもったいない」
凛「聴いてくれて、ありがとう。ちょっと緊張してたけど、悠真くんがいたから、落ち着けた」
悠真「俺も、何か返せたらいいんだけどな……」
凛「……じゃあ、またここで会ってくれる?」
悠真「もちろん」
第四章:夏、遠くなる距離
健人「なあ、神谷。最近お前、白石さんと話してなくね?」
悠真「……あいつ、最近来ないんだよ。音楽室にも、教室にも」
健人「なんか噂だと、コンクールに出る準備で別校舎通ってるって」
悠真「……そうなんだ。何も聞いてなかったから」
彩乃「凛ちゃん、プレッシャーかかってるみたい。朝も早く来て、練習してるって……」
健人「お前、ちゃんと話せよ。すれ違って終わるの、嫌だろ?」
悠真「……わかってる。放課後、もう一度音楽室行ってみる」
第五章:ひとつ、扉を開けて
凛「……神谷くん、どうして……」
悠真「待ってた。ずっと」
凛「……ごめん。距離置いたわけじゃないの。ただ、余裕がなくて……」
悠真「大丈夫。理由があるって、信じてた。……俺、凛の音が好きなんだ」
凛「……」
悠真「音楽のこと、もっと話してよ。演奏、また聴かせて。俺は、そばで応援したい」
凛「……そんな風に言われたら、泣いちゃう」
悠真「泣いてもいいよ」
凛「……ありがとう。もう、一人で頑張らない。これからも、そばにいてくれる?」
悠真「ずっと」
最終章:文化祭、ふたりで奏でる日
健人「うおー!まさかのラスト企画、白石凛ソロ演奏に神谷悠真朗読コラボ!?やばくね?」
彩乃「二人で企画考えたって聞いたけど、ほんといい感じだよね」
悠真「緊張するな……俺の朗読、足引っ張らないかな」
凛「大丈夫。だって悠真くんの声、ピアノと一緒で、私の音になってくれる」
悠真「……凛」
(舞台上)
悠真「『風が吹いたその日、僕は君を見つけた』……」
凛(演奏)
悠真「『ただ、音が好きだった君。僕の時間は、その日から音に溶けていった』……」
(演奏のクライマックス)
(拍手)
健人「やっべ、泣いた」
彩乃「ふたり、主役すぎ!」
凛「……ありがとう、悠真くん。夢の舞台だった」
悠真「これからも、隣で奏でよう。ずっと一緒に」
凛「うん。――ずっと、一緒に」
(完)