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昼休みのチャイムが学校中に柔らかく響き渡ると、寮の食堂は一気に賑やかさを増した。
大きな窓から差し込む午後のやわらかな陽光は、テーブルの上や床に明るく温かい光の模様を描き出し、その空間を優しく包み込んでいる。ふたりは人混みの中、隣り合わせに並んで学食の列に静かに並んでいた。
トワはしばらくメニュー表とにらめっこしていた。普段はさっと決めてしまうのに、今日はなぜかじっくりと迷っているように見えた。普段のツインテールから解き放たれた長いストレートヘアが肩にさらさらと落ち、その毛先が光を受けてきらりと輝く。
「なににしようかな…」トワは小さくつぶやくように言いながらも、視線は真剣そのものだった。
その隣で、かなたはほんの少しだけ照れくさそうに、でも楽しそうに声をかけた。
「トワは何にする?僕は今日もいつもの唐揚げ定食だけどね。」
「トワは…うーん、野菜たっぷりのヘルシーセットにしようかな。練習の後は、やっぱりしっかり栄養とらないと体がもたないしね。」
トワはほんの少し笑みを浮かべて、柔らかく答えた。
かなたはその答えに驚いたのか、少しだけ声のトーンを上げて言った。
「へぇ、意外と健康志向なんだね。そんなトワ、なんだかちょっとカッコいいじゃん。」
「はっ、からかうな!」
トワは顔を赤くしながらも、ちょっと嬉しそうにかなたを見返した。
注文を済ませたふたりは、空いている窓際の席を見つけてゆっくりと腰を下ろした。外の緑の木々がゆらゆらと風に揺れ、やわらかな風がカーテンをそっと揺らしている。寮の食堂は、休み時間ならではのざわめきに包まれていた。
しばらくふたりは無言で、それぞれが買ったお弁当を見つめていたが、トワがぽつりと口を開いた。
「ねぇ、かなた。」
「ん?どうしたの?」
「いつも朝練とかで疲れてるのに 、わざわざ応援に来てくれて、ありがと。」
その言葉にかなたは くしゃり、とした笑みを嬉しそうに浮かべた。
「そんなの当たり前だよ。トワが一生懸命頑張ってる姿、僕はちゃんと見てたいからさ!」
トワの胸の中に、ぽっと温かなものが広がっていった。かなたのその素直な言葉は、まるで優しい光のように心の奥まで届き、自然と笑顔がこぼれた。
「ん…ありがと。かなたがそばにいてくれるから、トワ、もっと頑張ろうって思う。」
かなたは小さくうなずいて、真剣な目でトワを見つめながら言った。
「うん、一緒に頑張ろうね、トワ!」
ふたりの間に、言葉にせずとも伝わる強い絆がゆったりと流れていた。
食堂の賑やかなざわめきと、外から差し込む柔らかな陽の光に包まれながら、午後の時間はゆっくりと、でも確かに穏やかに過ぎていった。
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コメント
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うん、神…