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ぼふっ
家の玄関の扉を開けると同時に、今日一日の疲れが一気に押し寄せてくるのを感じた。靴を脱ぐのもそこそこに、まるで何かに引き寄せられるようにして寝室へと向かい、力尽きたようにそのまま無気力にベッドへと倒れ込んだ。身体は鉛のように重く、何も考える余裕もなく、ただひたすら柔らかな布団に身を委ねるしかなかった。
「はあ、なんで生きてるんだっけ。」
誰に向けるでもなく、ふとそんな言葉が口をついて出た。重苦しい沈黙が部屋の中に広がり、自分の呼吸音だけがやけに大きく響く。虚ろな目で机の上を見ると、何気なく置かれていたカッターが視界に入った。
何かに突き動かされるように、思わずその細い銀色の刃に手を伸ばしかける。けれど__その手は途中で止まった。
刃に触れる前に、心のどこかで小さな声がした。「やめておきな」と。その声は僕に似ていてとてもかすかで頼りなかった、けれど確かに自分の中にまだ残っていた、生きたいと願う最後の気持ちだった。
そっと手を引っ込め、ため息とともに目を伏せる。静寂の中、ただ胸の奥がじんわりと傷んでいた、そんな気がした。
窓の外から、どこか楽しげな鳥のさえずりがぴよぴよと聞こえてくる。その澄んだ声は、まだぼんやりとした意識の中に優しく染み込んできて、まるで”おはよう”と語りかけてくるようだった。
カーテンの隙間からは、柔らかな朝の光が一筋差し込んでいる。部屋の中に静かに広がるその光は、ほんのりとした温かさを含んでいて、まだ冷たい心の奥に、少しだけ安らぎを運んできていた。
窓の外の景色はまだ見えないけれど、確かにまた一日が始まろうとしているのを感じさせた。
今日も学校に行きたくない。
目が覚めた瞬間から、心のどこかでそう思ってしまっていた。布団の中にもう少しだけ留まっていたい。でも、それじゃダメだ。ちゃんと行かなきゃ。行かないとダメだ__そう自分に言い聞かせるように、かすれた声で呟く。
僕は高校2年生。ごく普通の制服を着て、ありふれた通学路を歩く、ただの学生。でも、他の人と少しだけ違うのは、一人暮らしをしているということ。ただそれだけだと思う。
バイトもしていない。え、別に怠けてるわけじゃないし…いや、まあ理由はいろいろあるけど、説明すると長くなるし、正直どうでもいい話だ。
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