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【能力者名】妖怪沢どろり
【能力名】 メルト
《タイプ:擬態型》
【能力】 手の平で触れた人間をどろどろに とかす能力。
【以下、細菌達の記録】
《放課後、通学路沿いの河川敷にて》
「本当すごかったんだよー!!どろり達も
見ればよかったのにー。」
白雪毒林檎に抱きつきながら恋原表裏一体は どろりに言った。
「人が多いとこは好きじゃない。」
「どろり根っからの陰キャだもんねー☆」
「……..そういうことにしといてやる。」
否定するのもめんどくさかったのでどろりは
適当に相槌をうった。
そんな雑談を交えつつ、どろり、海街深蔵、
恋原表裏一体、酒池肉 林、白雪毒林檎の
一行は 小テストの勉強のために河川敷沿いの喫茶店 《フラニー》へと向かっていた。
「いやー、まさか海街もあたしと同じ赤点
仲間だったなんてねー。イエーイ!!赤点仲間ー。」
そうやって林が海街にハイタッチをしようとした。
「《深海シティーアンダーグラウンド》。」
海街は異空間に防音室を作る能力《深海シティーアンダーグラウンド》でそれを躱した。
「ありゃりゃ、逃げられちゃった。」
林はそう言って少ししょんぼりした。
「気にしないでいいよー☆深蔵はいつも
あんなんだから。」
性別を操る能力《裏表ラバーズ》で美少年に
なりながら、表裏一体は林によしよしした。
「私、喫茶店に行くのはじめて。楽しみだなぁ。」
白雪ちゃんは一人言のように呟いた。
「ようやく着いたな。」
どろりはそう言って喫茶店《フラニー》
のドアをゆっくりと開けた。
カランカランと、涼しげな音がした。
五人は喫茶店《フラニー》の店内へと入って
いった。
【店内にて】
「いらっしゃいませー…..。あー!!
コインちゃん来てくれたんだー!!
嬉しいなー!!クリームどら焼きの
クリーム多めにサービスしとくねー!!!」
ツインドリルの髪型がチャームポイントの
喫茶店《フラニー》の 看板娘 折重音は そう言って表裏一体を抱きしめた。
「かさねぇ久しぶりー☆えへへー
やったぁ!!かさねぇだーい好きっ。」
そう言って表裏一体は折重音のぺったんこな胸に顔をうずくめすりすりした。
折重音からは珈琲と甘いあんこの匂いとほのかなフランスパンのほんのりとしたいい匂いがした。
「いらっしゃい……。ゆっくりしていくといいよ。これメニュー表ね、オススメは
当店自慢のクリームどら焼きと珈琲のセット
だよー。」
顔中に傷のあるマスター阿部世狼男(アブセロウダン)はそう言ってどろり達五人の座ってる席に そっと メニュー表を置いた。
その落ち着いた声や立ち振舞いからは酸いも甘いも噛み分けたおおらかな 大人の余裕が感じられた。
( それにしてもこの空間、お洒落でレトロな
音楽、珈琲の匂い ……..”良い“。出来れば
一人の時に来たかった …….。)
孤独と静寂をこよなく愛する海街深蔵は
マスターから貰ったお冷やを静かに飲みながら そう思った。
どろりはエスプレッソを、海街はブラックコーヒーを、表裏一体と林はクリームどら焼きと 珈琲のセットを、白雪ちゃんはアップルパイと エスプレッソを注文した。
改めて勉強会がスタートした。
「はー……ボク興味のない人覚えられないんだよねー、歴史人物全員可愛くすればいいのに……..。」
珈琲に角砂糖をドバドバいれながら表裏一体は 言った。
「ほんとそれなー。てか、どろりって能力者なん?どんな能力持ってるん?」
林な意外と丁寧にどら焼きをフォークと ナイフで切り分けて行儀よくどら焼きを口に運びながらどろりに聞いた。
この世界では、能力に関する話題は天気の話題や、恋バナと同じくらいベタな話題だった。
「いや、ボクは無能力者だよ。酒池肉さんは
能力者なのかな?」
《擬態型》のどろりはまだ熱いエスプレッソを 冷ましながら飲み平然と嘘をついた。
『触れた人間をどろどろに溶かす能力をもってます。』なんて堂々と言ったら自分が殺人鬼ですと自白しているようなものだからで
ある。
「あたし?あたしは場酔いを引き起こす能力
《頓珍漢の宴》だよー。あたし酔っぱらい見るの好きなんよねー。ほら酔っぱらいって 面白いし可愛いじゃん?クソみたいな酔っぱらいもいるけどねー。はぁー、 かくれんぼ先生やマスターの酔っ払った姿 見ッてぇーなぁー。
ぜってぇエッロいんだろうなー。」
《友好型》の能力者、酒池肉林はマスター を良くない目で見ながらそう言った。
店内を 掃除していた折重音が林のやらしい視線を手にしていたお盆で軽くはじいた。
マスターは食器の手入れをしながら静かに
鼻唄を歌っていた。
「ふーん、そしたら白雪さんは能力者なのかな?白雪さんが能力使ってるところ見たこと
ないけど。」
数学の過去問をガリガリと解きながらどろりは 白雪ちゃんに尋ねた。
「ううん、私も能力持ってないよ。かっこいい能力持っている皆が羨ましいな……。」
《制御不能型》の能力者白雪毒林檎も嘘をついた。彼女の能力は彼女にとって後ろめたいものだったからだ。
「分からない…….分からないところすら
分からない…….。古典って何のために勉強するんだ…….?」
古典の問題集を解きながら今まで見たことのない程深刻な顔で海街は言った。
海街がここまで勉強ができないのは 彼が基本音楽にしか興味がなく、授業中も家の中でも脳内を音楽で埋め尽くしていたから だろう。
「こうかなー?この角度のボクも可愛いかもー☆今度は男の子バージョンも試しちゃおっと。」
開始十分ですっかり勉強に飽きちゃった表裏一体は唇に指を当てて自撮りをしていた。
ついでに《裏表ラバーズ》でどろりを時々 女の子にしながらどろりの勉強を妨害していた。
「……人の邪魔をするのはよくない、
かなしいことだ。」
非常にイライラした様子で女の子になった
どろりは言った。
「邪魔してないもーん☆ちょっとどろりを
女の子にして遊んでただけだもーん。」
そう言って表裏一体はあっかんべーした。
どろりは海街に1000円札を渡した。
「頼む海街、《深海シティーアンダーグラウンド》でしばらくこのアホを幽閉しててくれ。」
海街が千円受け取り目を閉じて能力を
発動しようとした。
「分かった分かったボクが悪かったよー!!
なんでー!!?お金払うぐらいうざかったの ー!!?」
涙目になって謝る表裏一体に
「お金払うくらいうざかったぞ。」
と海街が容赦なく言った。
【一時間経過】
「にしてもさーロカ先生いくらなんでも
強すぎない?なんであんな人がこんなど田舎で先生やってるんだろうねー。」
白雪ちゃんからアップルパイを一口もらいながら表裏一体は言った。
「全くだ ……そのせいで俺は絶賛能力剥奪の大ピンチだ……..。」
ぜぇぜぇと疲労困憊になりながら海街は
白雪ちゃんの日本史のノートを写させて
もらっていた。
彼にとって勉強とは能力者との 熾烈な戦いよりも辛い行為であった。
「でも海街くんの能力ならロカ先生から逃げきれるんじゃない?」
ゆったりと珈琲を呑みながら白雪ちゃんが
言った。
「…..それは難しいな。俺の《深海シティー
アンダーグラウンド》は目を閉じないと発動
できない。表裏一体達の話を聞いた後だと
俺が目を閉じる前にロカ先生に肩にタッチされて能力を破壊されても不思議じゃない。」
海街はそう言って珈琲を呑んだ。
「それに俺の能力は目を閉じ続けてないと使えないし眠ってしまうと能力が自動で解除される。 それまでロカ先生に待ち伏せされてたら一貫の終わりだ。」
そう言って海街は非常に追い詰められた表情でそう言った。
「私でよければ勉強教えるからね。皆で赤点
乗り越えようね。」
白雪ちゃんは皆の顔を見渡しながら柔和な
笑みを浮かべた。
「すまない、恩に着る。」
と海街は白雪ちゃんに頭を下げた。
【それから更に一時間後】
「…..それじゃあ、私そろそろ帰らないと
里親の おじいちゃんとおばあちゃんが心配するから帰るね。またね、皆。」
そう言って白雪ちゃんは喫茶店を後にした。
「ごーめん、あたしも今日居酒屋のバイトあるんだったわー。またねーこいこい、どろりん、しんのすけー。」
すっかりどろりと深蔵を友達認定した 林はそうやって手を振って喫茶店を出た。
「ボクもそろそろ帰らないとパパとママが
大号泣しちゃうから帰るねー☆あっ、マスター かさねぇどらやきめっっちゃおいしかったよ!!! また来るねーー☆!!」
そう言ってひしっ、と折重音とハグをした後
表裏一体は喫茶店を出た。
「……俺達も帰るか。」
「あぁ。」
二人はPaypayで会計を済ませて
喫茶店を出た。
「またいつでも来てねー。」
折重音がお盆を持ちながら手をフリフリした。
マスターは珈琲豆を煎る手を止めて
静かに一礼した。
【帰り道】
「頭が…..混乱している….. ここはどこだ…….?俺は誰だ…..?」
慣れない勉強にすっかりショート寸前の海街
はフラフラした足取りでそう言った。
「しっかりしろ海街。お前は海街心蔵ここは
米津町の河川敷………。ったくこんなんで
本当に大丈夫なのか……..?」
もはや歩く力も残ってない海街の 肩を抱えながらどろりは通学路を歩いた。
その時だった。
「妖怪沢どろりィー!!!勝負しろ勝負勝負勝負
勝負勝負ゥ!!!!!!!」
どこかで聞いたことのある声に嫌な予感を
感じながらどろりは振り向いた。
案の定、その男は以前どろりと熾烈なバトルを 繰り広げた口裏痛見であった。
「ロカ先生が言ってたぜェ!!!!ロカ先生みたいに強くなりたきゃもっと勉強しろってなァッ!!!!! だから俺と次の小テストの成績で勝負だぁ!!!! 勝負勝負勝負勝負勝負ゥゥゥ!!!!!!」
「あぁ……うん、いいけど?」
早く家に帰りたかったのでどろりは適当に
相槌をうった。
「オッシャアッッ!!!!!またなー!!!どろりと後
横にいる奴ーーー!!!!!!!!勝負勝負勝負勝負ゥ!!!!」
そう言って痛見は全力ダッシュで川を走り抜けてどこかへと消えていった。
それからどろりは海街を海街の住むアパートへと送り届け、自分の母親の待つ一軒家へと
帰っていった。
【運命の小テストまで後六日】