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15年ほど前、俺はその場に立ち尽くし、人についていき、振り回されることしかできなかった。そんな俺が今ではどうだろう?国のルールを剣にし、盾にし、人の役に立ち、人を守っている。自分さえ守れなかったやつが人に助けを求められている。こんな姿を早く15年前の俺と……「あいつ」に見せてやりたいな……俺にここまで来る勇気をくれたあいつに……
弁護士の朝は意外とゆっくりだ。まぁ人によるだろうが、少なくとも俺はマイペースに出勤している。
(今日は摘田さんの会社に行って話し合いとそれから田倉社長とお食事して、夜は書類まとめか……毎日忙しいな……まぁやりがいがあるしいいんだけど)
今の生活は昔の俺じゃ想像できないほど充実している。ここに来るまで色んなことがあったな。
14年前、弁護士になろうと決意した俺はまず環境を変えることを選んだ。今の環境では目指せるものも目指せない。
「導標高校から来ました。光根 路です。よろしくお願いします!!」
ここから俺は変わってやる!!俺のレールを自分で引いて自分で歩んでいく、そう決めた。
そこから俺は高校受験のときより勉強に励んだ。勉強以外はまるで視野に入っていないかのようにのめり込んだ。おかげで友達は少なかったがそれでも応援してくれる奴が何人かはいた。中でも和哉(かずや)は毎日のように俺に声をかけ、一番見守ってくれてたと思う。真面目には程遠いやつだったが、いわゆる天才型で成績は俺よりいいときもあった。
そんな和哉は登校するなり勉強している俺を見て
「お!今日も勉強してんのか?やっぱ夢持つって違うな~!!俺もなんか夢持ったら変わるかな?」
だとか
「よぅ!勉強エンジョイ勢!!勉強楽しんでるか?」
などとそれなりの返事しかできないような俺に毎日明るく声をかけてくれた。そんな声があったからだろうか?俺は勉強が全く苦じゃなかったし、なんならあいつの言う通り勉強を楽しんでいたかもしれない。
そんなこともあったから今じゃ月1で会うようにしている。そういえば弁護士になったことを一番に報告したのは両親でも「あいつ」でもなくて和哉だったっけな。それだけ俺の中の和哉は存在が大きかったのだろう。弁護士になれたことに感謝しまくってその日飯奢るって言ったら勢いすごすぎてちょっと引かれたのは良い思い出だ。なんか思い出してたら急に会いたくなってきたな……今日時間あったら和哉のとこ寄るか。
あ……会いたいと言えば俺は「あいつ」にも会っておきたいな……
「あいつ」というのは他でもない。“東野 晴”だ。俺がこの俺になるまでを話せば必ず話すことになる人。国語の物語文なら心情の変化まで読み取られるくらい重要な人物だ。最後にあったのはいったいいつだっただろうか?高校生活中はよく話してそこそこ中も良かったんだけどな。
なんで疎遠になったのか、その理由は分からない。でも、1つ言えるとしたらそれは、時間のせいといったところだろう。お互い進む路も違うし、目的地だって違う。いつまでも一緒にいられる人なんてどこにもいやしないのだ。だから人は出会いを大切に生きているのだ、と、ふと思った。
「でも、もしもう一度会えたなら……」
っと、そんなことを考えていたらもうこんなとこまで来てたか。
(さぁ、今日も仕事頑張るか)
自動ドアをくぐり、受付へ足を進める。
「あのー、すみません、摘田さんって今どちr……」
そこで見たのは俺にとって、どこか懐かしい雰囲気を纏った1人の女性だった。
「はい、どうされましたか?」
「あの、あなたってもしかして……」
俺の中で1つ、サビかけていた歯車がまた動き出したような気がした。