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あらすじ
——引越し初日、日野澪は隣の部屋の“二色の扉”に気づいた。灰色と紫色に塗られたその扉だけが、他と違って静かに浮かんで見えた。そこから始まるのは、週ごとに変わる隣人たちとの奇妙な日々。猫好きの青年、話すインコ、料理人、ドラゴン、温泉を持つ男、賭け事の好きな住人、夜ごと祭りを開く者、絵描き——彼らはそれぞれ短い時間だけ、澪の隣に現れ、消えていく。二年後、扉の色は失われ、住人もいなくなった。大家が語るのは、人の死や失踪、寿命で終わった命の話。理由も仕組みもわからぬまま、澪は引っ越しの荷をまとめる。最後にふと、かつての二色の扉の前で立ち止まり、風の音に耳を傾ける。そこには確かに、誰かの“ありがとう”が残っていた。