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ガルムが去った後に私達は、黒い林の中を歩く。
阿鼻界にも植物は存在していたようだ。
障害物があった方が獄使に見つかりにくそうだから林に入ったが、奴らのことだからどうせすぐに罰を与えに来るだろう。
隠れる気はあまりない。
「そういえば葉造さんは、阿鼻界に来たとき獄使に言われた罪状はなんでしたか?」
「僕の罪状を知りたいなら、君から先に言ってくれない?僕よりずっと罪が軽いと嫌でさ〜。」
上を見上げてみれば勿論空はなく、錆びたパイプのある天井が見える。
天井には、数m間隔で電球が埋め込められていた。
「虚言に虫の殺害、窃盗と不法侵入……そして人間を2人殺したこと等が罪になってますね。」
葉造は立ち止まって、私をじっと見つめた。
「マジ?」
近くに生えてる幾つかの木は、黒い皮がサルスベリのように剥がれていて灰色の中身が覗いている。
「本当ですが、それを証明できる手段はありませんね。元々は、2人どころか地球を壊そうとしました。マタールナという物質はご存知ですか?」
地面は砂のようにサラサラとしたものでできている。
「マタールナ?聞いたことがないねぇ。」
マタールナの存在は後に公表されたが、葉造はその前に死んだ。
だから、知らなくて当然だろう。
「その物質の性質を利用して、月を地球にぶつけて破壊しようとしました。ですがその過程で、私の計画を止めようとする3人がいてそのときに2人殺したんですよ。私もそのすぐ後に、生き残った1人にやられて死んだって感じです。」
周囲の木に生えてる葉は、剃刀のように鋭い。
その葉が地面に落ちてる様子は見かけていない。
「それなら、君が殺した2人は案外近くにいるかもしれないねぇ。ガルムがなんか言ってたじゃん?死んだ時期が近いと、阿鼻界に来るときの場所も近くなるみたいなことを。……君が殺人をした話が本当ならね。」
葉造は林の中を再び歩きだす。
「信じるか信じないかは貴方次第、と受け取ってください。」
「じゃあ、僕が言われた罪を告白する番かな。虫の殺害に虚言、薬物乱用、飲酒、そして心中未遂が罪になったんだって。」
「私が言われた罪に比べれば全然可愛いですね。薬物乱用以外は悪いことしてないですし。心中未遂というのは、一緒に自殺された人が生き残ってしまったから未遂になったんですか?」
「いや、あのときの心中で僕が生き残ったんだよ。鎌倉の海で女性と入水したんだけどね。それにしても君の中では、心中未遂は罪に入らないんだ?」
「勿論。というか私は、地球上の全生命体との心中未遂をしたようなものですよ。」