「初めまして!セイくんの奥さんで、セーナって言います!夫がお世話になってます!」
翌朝…いや、昨日飲み過ぎて今は昼か……
三人の部屋で酔い潰れた俺は、聖奈の訪問により覚醒した。
無断外泊したからな…いや、家庭内別居か?
「うぉぉおっ!?めちゃくちゃ美人じゃねーかっ!!やったな?!セイッ!」
「美しい奥方だな。セイには勿体無い」
「セイ。騙されてない?」
ガゼルの反応もバックスの反応も分かる。
日本でも大体同じ反応だからな。
だがナードっ!!貴様はダメだっ!!
俺は高級な壺を買わされたり、宗教にも入らされていないんだぞ!!
自分の予定が勝手に決まっているくらいだっ!!
あれ…それも大概か?
「ふふっ。楽しいお友達だね?三人は傭兵をしてたみたいだけど、これからどうするかは決めたかな?」
「いや、まだ何も…」
「セイの言う通りだぜ。急な展開だったからな」
ガゼルはいいが、二人は長い囚人生活で身も心もボロボロになっている。
まだまだ年齢は若いが、普通の身体を取り戻すには少し時間が掛かるだろうな。
「あ。急かしているわけじゃないからね?ただ傭兵稼業はもう出来ないと思って」
「…それはわかってるぜ。神聖国が統一するんだろ?」
「うん。後半年もしないうちに統一は終わると思うの。それでね、セイくんの友達なら信用できるから、もししたい事がないのなら、バーランドで働いてみない?もちろん療養してからね」
俺の旅が関わることで聖奈の目的は二つある。
一つは信頼出来る仲間を増やすというモノ。
それについては一任されている。
もう一つは情報集めだけど、そっちは全くだな……
何の情報か、だって?
そんなのもうわかっているでしょうがっ!!(某北の国風)
「俺からしたら願ってもねー話だと思うけど…な。二人はどうだ?」
「世話になる」「ここまでしてもらって、いいえ結構ですなんて言えないよ」
ナードが…喋ったっ!!(ク◯ラが立った風)
「良かったぁ!セイくんが国を興したけど、実は信頼出来る仲間って案外少ないんだよぉ。
先ずは療養だね!兎に角食べて、兎に角休んでねっ!」
「お、おう。助かるぜ」「女神だ…」「セイに弱み握られてる?」
ガゼルはいい。バックス、それは勘違いだ。
ナード、握られているのは俺の方だ。
「じゃあ他の子達も順次挨拶に来るからよろしくね!」
「ああ。俺はとりあえず、今日はコイツらに付いてるよ。旅は明日から再開する」
「うん。楽しんでね」
自分は働いて夫は友人と過ごすのに、楽しんでなんて言えるか?…女神かな?
ダメだ…バックスのことを馬鹿に出来ん……
俺達は昔話に花を咲かせた。
「凄いな。美人な奥方がいるのに、可愛い彼女までいるなんて……セイ。変わったな…」
うん。バックス、言いたいことはわかる。
昔はお前達に女を用意しろなんて言ってたのにな……
だが!!中身は変わってないぜっ!!
ライルマリン夫妻とミラン&エリーを、三人へと無事に紹介した。
ミランとエリーは未来の第二第三夫人と説明していて、三人が混乱してたな。
特にエリーの時は小児愛者だと疑われた……
もちろん俺が弁解する間もなく、子供扱いされたエリーが憤慨して事なきを得たが。
「あっ!そういや、国王陛下って呼んだ方がいいのか?」
「やめてくれ…公の場だと別だが、仲間内では普通に接してくれ」
ガゼルに似合わない気遣いはよすんだ!
ナード!笑ったのは見たぞ!!
晩酌抜きにするぞ!!王命でなっ!!
「良かったぜ!今更そんな風に接することなんて出来ないからなっ!」
「ガゼルは元々出来ない」
「ナードの言う通りだな」
はははっ!三人と俺は愉快に笑う。
そうそう。これだよこれ!懐かしいな……
楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕食の時間となり、いつものリビングへ三人を連れて向かった。
「三人が普段通り動けるようになったら、公安になって欲しいの」
夕食が済み、食後の話し合いの場で、聖奈が三人へと切り出した。
公安とな?
「なんだ?公安って」
「名前は何でもいいのだけれど、三人にして欲しいのは騎士達…ううん。貴族を含む国に関わる人達を取り締まって欲しいの」
「暗部ということか?」
ガゼルが聞き、聖奈が答えて、バックスが聞き返した。
「違うよ。衛兵は国民を取り締まるでしょ?それの特権階級版みたいなものだよ。
権力が通用しない役職ってことだね」
「それは…セイかセーナが指示を出せば同じではないのか?」
バックスの言うことも尤もだが、それだと俺達が気付かなければ見過ごされる。
あの手榴弾の横流しみたいにな。
「それだとダメなの。理由はいくつかあるけど、一番大きなものは、私達がいない時でも同じように目を光らせる人にいて欲しいからだね」
「そうか…わかった。俺はやってみたい」
「よくわかんねーけど、俺もするぜっ!」
コクコク
いや、ナードさん。さっきまで喋ってたやないかいっ!
「安心して。教育係はちゃんとつけるから」
「ガゼルは厳しくして」
「何でだよっ!?」
ナードの言う通りだ。ガゼルはアホだからな。
誤認逮捕とか乱発されたらたまらん……
「ふふふっ。セイくん、いつもこんな感じなの?」
「面白いだろ?違うって言いたいが、平常運転だ」
「バカの教育は大変なのですっ!」ふんすっ
いや…エリーさん。貴女も大概ですよ?
「三人とも。明日から俺はいないが、何かわからないことや困ったことがあれば、エリー以外の人に聞いたらいい『なぜっ!?』……後、いる物があれば遠慮なく侍女にでも伝えてくれ。お代は給料から引いとくからな」
「助かるぜ!一文無しだからなっ!!」
「うむ。愛用の武器はなくなってしまったが、何かは欲しいと思っていた。身体が元に戻れば頼むことになる」
「…酒」
いくら俺が金を持っていたとしても、一から十まで支援する必要はない。
そんな事をすれば、この三人は居心地悪く感じてしまい、いずれ出ていってしまうだろうし。
ナード。それは破滅への言葉だぞ?
ウチの酒は高いんだ。治るまでは奢られておけ。
「武器だけはエリーに頼んだらいいぞ。他はダメだが武器は期待していい」
「…なんだか納得いかないですが・・・任せるですっ!」
「頼んだぜ!嬢ちゃん!」「世話になる」「酒」
エリーは納得していないが、事実だ。
ナードは治すきあるのか?お前身体ボロボロだぞ?
和気藹々と食後を楽しんだ俺は、明日に備えてゆっくりと休んだ。
「この壁の先がジャパーニア皇国なのですね」
ジャパーニアに来たことはあっても、ミランは正規ルートを知らないからな。
翌日。普段通り転移で城まで行ってもよかったが、どうせならと、元小国家群との境にある万里の長城擬から入ることにした。
「ほら。先の方に人だかりが見えるだろ?あそこから入国するんだ」
「神聖国が支配したことにより、行き来する人が増えたのでしょうね」
ミランは初めて来たはずだが、人の多さを見て以前の姿を想像したようだ。
賢いな。
「正解だ。以前は入国審査も厳しかったが、今は見ての通りすいすいと列が進んでいる。特に向こうから出てくる人達の数が、以前とは段違いだな」
「もう少しでこの壁も無用の長物になるのですね」
ベルリンの壁かな?
まぁ、名目上は聖十字連合神聖国とジャパーニア皇国は別の国だから、壁が物理的になくなることはないけどな。
ミランがいっているのは精神的な意味合いだろう。
「さっ。俺達も並ぼうか」
「はいっ!」ギュッ
そんなに強く腕を抱かなくても、逸れないから……
ミランの良い匂いをこっそり嗅ぎながら、入国の順番を待った。
バレなきゃいいんだよ。バレなきゃな?
「バーランド王…」
入国審査場ではすぐに身バレした。
当然か……
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