テラーノベル
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※戦争表現あり
ぐるぐる、ぐるぐる。
終わりのない、高速道路。
だれも走っていない、灰色の道。
見上げると、パステルピンクの空に、おっきな、おっきな、金色のシャチホコが、ぷかぷか浮いている。
「……ったく、なんなんだよ、ここ」
声をだしても、だれにも届かない。
不気味なほど、ここは俺ひとり。
外は、まだ、争ってる。
あっちも、こっちも、燃えてバラバラになった。
なのに、この場所だけは、不自然なほど静かでイライラする。
道路の電光掲示板に、パチパチと文字が浮かびあがる。
『⚠️警告:未処理の未練が残っています』
「未練? は? 俺にそんなもん……」
言いかけて、ピタッと口が止まる。
いつもは、離れているときは思い出しもしないのに。
一緒にいるときしか、あいつのことなんて考えないのに。
いま、この真っ白な空間で、なぜか、アイツのあのウザい笑顔ばかりが、頭の裏にへばりついて離れない。
いつも、隣でうるさく笑っていた、あいつ。
離れてるときは、どうでもよかったはずなのに。
なんで、今になってあいつの顔ばかり浮かんでくるんだよ。
胸の奥が、バカみたいにズキズキ痛む。
これが何なのか、俺はまだ、名前を知らない。
ちいさな画面を、ぽちぽち、叩く。
『お前、絶対生き残れよ』
送信ボタンの前で、指が止まる。
「……っ、こんなの、柄じゃねーだろ」
結局、下書きに保存する。
画面を睨みつけながら、スマホをポケットに突っ込んだ、その時。
――どくん
急に、お腹のあたりに、異常な冷たさが走った。
銀色に光る、鋭い刃物。
それが俺の身体を、深く、深く、突き刺す感覚。
「げほっ”“……っえ”““、ぁ”?」
口から溢れたのは、パステルピンクの空にまったく似合わない、どす黒い赤。
上空のシャチホコが、ぐにゃりと歪んで、真っ黒なインクを吐き出した。
灰色の道路が、足元から順番に、バグみたいに消えていく。
ナイフを突き立てられた場所から、俺の存在がどんどん溶けていく。
落ちていく。真っ逆さまに。
「……っ、……ばか」
最後まで、あいつの名前も呼べないまま、暗闇のなかへ。
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コメント
3件
読ませていただきました。戦場の記憶と「未練」の処理というシステム要素が合わさって、とても不思議な浮遊感のあるエピソードでしたね。特に「離れてるときはどうでもよかったはずなのに、今になってあいつの顔ばかり浮かぶ」という心情の描き方が、痛いくらいにリアルでした。結局名前も呼べず、メッセージも送れずに消えていくラストの空しさが胸に残ります。次にどう繋がるのか気になります。