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「令和ちゃんと昭和ちゃん、テスト前になる」
「ねえ、勉強してる?」
放課後、席に残っていたら、後ろから声がした。
「一応」
令和ちゃんは、タブレットから顔を上げずに答える。
「一応ってなに!?」
「要点まとめてるだけ」
「まとめる前に覚えようよ!」
「覚えるためのまとめでしょ」
「ええ……?」
昭和ちゃんは、すでに教科書とノートと問題集を全部広げていた。机の上が重い。
「それ、全部やるの?」
「うん!」
「非効率じゃない?」
「出るかもしれないじゃん!」
「出ないとこやる時間、無駄じゃない?」
「無駄じゃないよ!」
今日も元気だな、と思う。
「ここ、どういう意味?」
昭和ちゃんが指さしたのは、現代文の一文。
「それ、この前言ってたとこ」
「え、覚えてるの!?」
「写真撮ってるから」
タブレットを見せると、昭和ちゃんは少しだけ黙った。
「……便利だね、それ」
「でしょ」
「でも、それで覚えた気になってない?」
「なってないけど」
「ほんとに?」
「ほんとに」
少しだけ、間があく。
「……じゃあ、今説明してみて」
「え」
予想外だった。
「覚えてるならできるでしょ?」
「いや、それは……」
言葉が詰まる。
昭和ちゃんが、じっと見ている。
「……あとで見ればいいし」
「それ、テスト中に見れないよ?」
「……」
正論だった。
しばらくして。
「ねえ、これやって」
今度は令和ちゃんが問題を差し出す。
「いいよ!」
昭和ちゃんはすぐに解き始めた。
五分後。
「できた!」
「遅くない?」
「ちゃんと考えたもん!」
「もっと早く解けるでしょ、それ」
「速さより理解!」
「テスト時間あるけど」
「うっ」
今度は昭和ちゃんが黙る番だった。
「……ねえ」
「なに」
「ちょっとだけ、一緒にやる?」
昭和ちゃんが言った。
「なにを」
「効率いいやり方、教えてよ」
「……いいけど」
「その代わり、ちゃんと覚える方法教える!」
「それ、気合とかじゃないよね」
「違うよ!」
ちょっと笑えた、、。
「まず、ここは出る」
「うん」
「だからここだけ覚える」
「少なくない?」
「その代わり、確実に取る」
「なるほど……」
「で、これは?」
「えっと……こう?」
「違う」
「ええ!?」
「そこ雑」
「雑じゃないよ!」
「雑」
「もー!」
気づけば、外は少し暗くなっていた。
「……ねえ」
「なに」
「さっきの、もう一回説明して」
「どこ」
「ここ」
さっき令和ちゃんが詰まったところだった。
「……こうでしょ」
「うん」
「だから、こうなる」
「うんうん」
「で、つまり——」
今度は、ちゃんと言えた。
「……できてるじゃん!」
「まあ」
「ちゃんと覚えてるじゃん!」
「ちょっとはね」
少しだけ、誇らしい。
「ねえ、明日もやる?」
「テスト前だし」
「じゃあ一緒に帰るのも明日ね!」
「なんでそうなるの」
「流れ!」
「意味わかんない」
でも、否定はしなかった。
帰り道。
「効率も、大事だね」
「でしょ」
「でもさ」
「なに」
「ちゃんとやるのも、大事だよ」
「……まあね」
少しだけ、間があく。
「半分ずつでいこうよ!」
「なにそれ」
「令和半分、昭和半分!」
「バランス悪そう」
「いいの!」
笑いながら言う。
なんとなく、それでもいい気がした。
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