夜…歩いていた。
水溜まりがそこそこあった。
何か懐かしい欲が出た。
どうしてもその水たまりを、
踏みたくなった。
俺は安藤昌也。
社会人だ。
働いている会社はそこそこ給料はいいが仕事が多かった。
毎日疲れ果てて帰路へ着いた。
そんな時、水溜まりがあった。
小さい頃はよく飛び跳ねて遊んでいた。
そんなどこか懐かしい様な記憶が脳裏に浮かんだ。
夜の水溜りは何か不思議な魅力がある。
暗く、反射してビルや月が写し出される。
底に入れば反対の世界に入れそうな、そんな感じだ。
どうせだったら試してやろうと、
疲れきった社会人は自分の小さな欲望を満たそうと試みた。
ビシャ…
何かおかしい。
底がつかない。
そんな水溜りはあるわけないと我に無理やり帰ろうとしても、もう遅かった。
俺はゆっくり、ゆっくりと沈み、
異様な眠さと興奮で、一度気を絶した。
目を覚ました。
すると、底には別の世界が広がっていた。
「何だここは。」
まさに反対の世界だった。
俺は冷静になろうとした。
だがなれるわけがない。
反対の世界など子供の頃の想像なのだ。
これは夢である。
どうせなら、夢ならば探索でもしてみよう。
久々に楽しく思えてきた。
こんな夢を見させてくれた自分の脳みそに感謝しなきゃいけない。
一見してみるとただ反対の世界だが詳しくみると人間も反対であった。
この世界の人間は優しさがない。
でも喧嘩や揉め事は一切見受けられなかった。
「なぜだ。」
さらによくよく見、話すと分かった。
この人たちは悪の心がない。
だから優しさなんて必要ないのだ。
みんな礼儀が揃い、悪態をつくものなど考えられないようだ。
そして皆頭がよかった。
コンビニのレジでも人が計算し、その計算も偉人並みに早い。
普通の世界の人間は火事場の馬鹿力というほど、
いざという時にしか脳を最大限に活用しない。
だがここの人たちは恐らく普段から脳を最大限活用しているのであろう。
そして俺は探索に探索をし続けたが一向に帰れる気配がない。
まさかとは思うがこれは夢ではないのか。
俺はショックを受けた。
こんな世界で生きられる自信はそうそうない。
俺は何とか帰ろうと模索したが何一つ帰れるようなものは見つからなかった。
それから月日が経った。
この世界でも俺は社会人として生きている。
だがここの会社はフリーランスのような家で働ける画期的な仕組みであった。
そしてみな終わりたくなったら終わり働きたくなったら働くといった自由主義である。
先程の話とは関係がないかもしれないがここはどうも
個人個人の個性が薄かった。
男性と女性で別れているだけである。
これはこれで皆同じように接すれば良いだけなので簡単だった。
そしてこの世界では結婚の概念はなかった。
この世界の人間は欲がないので一年に一度男女が子供を作り人口を増やす仕組みであった。
そのためこの世界はどこでも人口が馬鹿に多い。
その分食料はどうなるかは心配ご無用であった。
この世界は飯は不味かった。
ただ栄養を詰め込んだだけど質素でごちゃ混ぜな飯である。
「動物じゃないんだぞ人間は。」
また月日が経った。
もうこの世界に俺は慣れている。
皆同じように生まれ同じように生き同じように死ぬ。
これがこの世界の適当な表し方だ。
みんな死に恐怖はないし生きる欲もない。
社会のために日々働くのである。
「俺は一生、この世界で働く。」
そう思った瞬間、あたりは真っ暗になり、
気づくと元の世界に俺は戻っていた。
それはあまりにも唐突だった。
そして戻ってきた喜びよりも先に俺は悔しさが湧いた。
「なぜだ!!なぜこの世は腐っているのだ!
人間は自分の悪のために優しさという性格を保持し、
興味にないものは何もしないから欲を生み、
生きるための物を得ようとし、
その欲で自分の仲間を傷つけて自分まで傷つけ、
悪があるせいで性格が人それぞれ変わり個性が生まれ、
その機能に不満を立てた人類が皆無理やり同じにさせようとする!
脳は最大に働かないから頭の出来で格差ができ、
結果このように人は人を舐め、嘲笑ってるではないか!!
こんな協調性もない人類に俺は生きたくない!!
こいつらは何のために生きているんだ!!!」
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