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カラマロ釣りというか漁は、始めてしまうとかなり忙しい。
仕掛けを海中に落とした後は、ドラムを巻き上げたり戻したりして疑似餌を動かして、カラマロを誘わなければならない。
仕掛けにある程度カラマロが食いついたら、ドラムを巻いて釣り上げる。
これは上まで巻き上げを意識すれば、魔道具が自動で上まで巻き上げてくれるから少し楽。
そうしてある程度巻き上げると、カラマロが上がってきては受け台経由で桶に落ちてくる。
マシューさんと比べるとカラマロが食いついている疑似餌は少ないけれど、それでも1秒に3匹程度は桶に入ってくる状態だ。
そして一通り巻き上げたら、まだ仕掛けを海中へと戻す。
仕掛けが予定の深さに落ちるまでの間に、桶に入ったカラマロを魔法で収納。
その中で良さそうなのを一度甲板に出して、水を吐いた後にタレ入りのバケツに入れて。
なおカラマロ釣り魔道具は2組ある。
両方ともそうやって操作する必要があるわけだ。
なおマシューさんは、本来は4組使って漁をするらしい。
けれどそれでは、相当に忙しい気がする。
2組でも、俺は結構いっぱいいっぱいだ。
無我夢中という感じで、仕掛けをおろして誘って巻き上げてを繰り返す。
片方だけで10回以上、もう数える余裕なくやったところで。
「そろそろ餌や土産には十分だろう。キリのいいところで仕掛けを上げて、魔道具を最初の状態に戻してくれ」
ちょうど片方を巻き上げていたところだった。
「わかりました」
返事をして、もう片方も巻き上げを開始。
巻き上げると吸い付いてくるカラマロもいるので、結構針に引っかかって上がってくる。
両方の桶にあわせて80匹くらい入ったカラマロを収納。
なお収納の中は、合計で1,000匹近いカラマロが入っている。
これなら大量にエサとして使っても問題ないし、ミーニャさんもそう簡単には食べ尽くせないだろう。
なおタレ入りバケツの方も、とっくにカラマロで目いっぱい状態だ。
魔道具を操作し、灯火魔道具を消して、ローラーを受け台が上向きで港に入れる状態にまで上げてから、船の反対側へ。
「どうだった、魔道具を使ったカラマロ釣りは?」
どう表現すればいいのだろう。
頭の中に真っ先に出てきた言葉は……
「圧倒されました。こんなに一度に大量に獲る方法があるなんて」
「最初はそうかもしれんな。網ではなく釣りで獲る方法としては、圧倒的な数だろう」
「網もやっていたんですか」
「ああ。同じように灯火魔道具を使って魚を上に浮かせて、魚群の周囲を網をおろしながら囲んで、最後に一気に網を絞って魚を獲るというやり方だ。一度に魚が大量に獲れるんだが、その後の魚の仕分けや網のメンテナンスが大変での。師匠のように網を魔法で補修できないと割に合わない。それに比べれば、このカラマロ魔道具はいい。保守が簡単だし、釣れるものも揃っている。
さて、それではインガンタ・ルマがいる、更に深い場所へ移動する。船室に入ってくれ。飛ばすから中にいた方が安全だ」
船が動き始めた。かなり強烈な速度で沖合方向へ向かっている。
船の前後方向の揺れが激しくなった。確かに船べりにいたら少し怖いかなという位に上下に動くし、波もかぶっている。。
それでも線室内にいれば、比較的楽ではあるけれど。
「さて、インガンダ・ルマが釣れる場所まで、1時間半かかる。その間に、カラマロの味見をしてみよう。儂も久しぶりだしな。エイダンはカラマロを食べたことがあるか?」
もちろん、ない。今世はもとより、前世でも。
カラマロに似たセッピアなら前世で一度食べたことがあるけれど、当然味なんて覚えていない。
「ありません」
「ならちょうどいい」
そういってマシューさんは、小さいバケツからカラマロを1匹取り出した。
腰につけていたナイフとバケツにつけていた小さい板を使い、揺れをまったく気にしないかのようにナイフを操って、カラマロ胴体と足や目、内臓付きの部分、耳部分に切り分ける。
更に胴体を平らに開いて、細長く何本も切って。
「とりあえずこの細く切ったの、1本嚙んでみろ」
そういって俺に細い1本を渡した。
どうやら生で食べるらしい。
そういう食べ方は初めてだけれど、どんな味だろう。
マシューさんがやっているように、口に入れて噛んでみる。
最初の印象は硬くて、歯ごたえがすごい。
ただ弾力性という感じではなく、力を入れると何とかかみ切れる。
そしてかみ切った場所が何というか、独特の甘みと味を感じる。
細く切っているのに、何というか強烈だ。
他にたとえられないけれど、美味しい。
「美味しいです」
「なら次、ちょっと待て」
マシューさんがナイフでカラマロを細長く捌いて、皿の上に載せる。
更にカラマロの内臓を切って潰して、瓶に入った液体をかけて混ぜて、茶色いどろっとしたものをつくり、細長く切ったカラマロの胴と同じ皿に入れた。
そしてその皿とフォークを俺に渡す。
「内臓と特製調味料を混ぜたものにつけて、食べてみろ」
口に入れ、噛みしめる。
味が一気に複雑になった。
先ほどの身の甘みに、独特の深みを持った塩味が加わった形だ。
発酵調味料の深さとも似ているけれど、やっぱり違う独特の味とねっとりさ加減。
入っているのはカラマロの身と内臓のほか、塩とごく少量のレモンの皮と、酒ちょっとと……
「これも強烈に美味しいです。あとでレシピを聞いていいですか」
「この辺りのレシピはバラモに聞けば、全部わかるだろう。あいつは何でもメモしてファイルするからな。どうせ今も同じだろう」
つまりバラモさんも、カラマロを食べたことがあるというわけか。
ひょっとしたら同じように漁をしたことがあるのかもしれないな。
そんなことを思う。