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白虎(びゃっこ)@学生だよ!
40
保健室の空気が、さらに重く沈んだ。
動画を止めたまま、
誰も言葉を出せずにいる中で、
ベッドに横になっていた翠が、
ゆっくりと瞬きをした。
「……あの、さ」
かすれた声だった。
桃が反射的に身を乗り出す。
「どした?」
翠は天井を見たまま、
指先をきゅっとシーツに食い込ませた。
「……それ、別に赫ちゃんの虐めを肩代わりした訳じゃない…」
赫の肩が、ぴくっと跳ねる。
「……もっと前から、あった」
その一言で、全員の視線が翠に集まった。
「赫ちゃんがいつ頃からなのかは分かんないけど、 俺、虐められてた……証拠、集める前から」
翠は静かに続ける。
「その時は、俺だけだったし、
自分が耐えればそれでいいって思ってた。」
「証拠とか、そういうの集める気はなかった。
ただ……飽きられて、終わるのを待ってただけ」
喉を小さく鳴らして、翠は続けた。
「でも、赫ちゃんが虐められてるって知って、
それで初めて、
ちゃんと向き合わなきゃって思った」
赫が、息を呑む。
「……俺が前に出たのは、
俺の虐め止めたかったからだけじゃない」
黄が、そっと首を振る。
「……じゃあ、なんで」
翠は、初めて視線を落とした。
赫のいる方向を、見ないようにしながら。
「赫ちゃんが、傷つくくらいなら……
俺が一人で受けた方がいいって思った」
一瞬、時間が止まったみたいに静かになった。
「俺が全部引き受けて……
証拠を集めて……
ちゃんと、相手に責任を取らせられるなら……
それでいいって」
赫が、耐えきれず声を荒げる。
「ふざけんなよ!!」
拳を握りしめ、震えながら。
「なんでそんな……
なんでそんな一人で決めんだよ!!
俺が傷つくより、
翠にぃが壊れる方がいいとか……そんなの!!」
翠は、やっと赫を見た。
泣きそうで、それでも必死に笑おうとして。
「……だって、俺は赫ちゃんの兄でしょ?」
その瞬間、赫の目から、
堰を切ったように涙が落ちた。
「兄だからって、無理すんなよ!!
一人で犠牲になるなよ……!」
瑞が、黙ったまま赫の袖をぎゅっと掴む。
黄は唇を噛みしめ、
声を出さずに涙をこぼしていた。
桃は、震える息を抑えながら低く言う。
「……翠。
それは、守ったんじゃない。
自分を切り捨てただけだ」
茈も静かに頷く。
「証拠は大事だ。
でも……生きてるお前が、いちばん大事だろ」
翠は何も言い返せなかった。
ただ、目を閉じて、小さく呟く。
「……ごめん」
その「ごめん」が、
誰よりも自分に向いている言葉だって、
全員が分かってしまった。
学年主任の先生が、静かに一歩前に出る。
「……よく話した。
ここから先は、大人の役目だ」
その声は優しかったけれど、
もう“後戻りできない”ところまで来たと、
はっきり告げていた。
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