テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
呪いの件や呼び捨てタメ口の件があり、それからも色々とあった。だが、生活の中で一番多かったのは勉強の時間だ。
悠磨や柊磨が神社で忙しい時以外、ずっと傍で勉強を教えてくれていた。8月から3月まで、約半年。
この物語は、その約半年の中で起きた事件だ
「12月、クリスマスだ」
急に柊磨が言う。私と悠磨はわけがわからず柊磨を見つめた。
「この中に、裏切り者はいるか?」
「悠磨、どうしよう柊磨の頭がおかしくなっちゃった 」
「これは手遅れかもしれない…」
「茶番じゃねーぞ。お前らに恋人がいてもおかしくねぇだろ!」
恋人とクリスマスという2つの単語が頭の中で合致した。つまり恋人と過ごすわけないよな、と言いたいのだ。
「私に彼氏はいない。最近は悠磨と柊磨以外とは話してないし」
「仕事が忙しくてそんなことしている暇はないよ」
「よし、お前ら2人ともこっち側だな。良かったぜ」
「そんなこと言って、柊磨は彼女いたりするんじゃないの?」
「いねーよ」
少し寂しそうな顔をして言う。地雷だっただろうか。
「でもさ、クリスマスって言ってもなんか特別なことがあるわけでもないでしょ」
「え?魁ちゃん知らないの?」
2人が私を凝視する。なぜそうなるのかわからず、私は混乱した。
「クリスマスっつったらパーティーして美味いもん食って、夜には子供がプレゼント貰えるんだよ」
柊磨が教えてくれる。
私のクリスマスは、ただの日常と同じだった。お兄ちゃんが働けるようになるまではプレゼントなんて買えるわけがないし、美味しいものだって想像がつかない。 パーティーをやるような相手もいなかった。
「私には、そういうの無縁だったかな」
「そっか。じゃあ今日やろう」
「「え?」」
突然の悠磨の発言に、柊磨と私の声が重なる。
「ま、いいんじゃね?今からでもパーティーのやつ買ってくるか」
「待って待って。私勉強…」
「たまの休息だよ。魁ちゃん最近勉強ばっかりだったし、たまにはいいでしょ」
ということで、クリスマスパーティーをした。いつもとは違う、ファストフード店のご飯を食べた。3人でカードゲームをして、そこからなぜかクイズ大会が始まった。いつもより遅い時間に寝たのも久しぶりだ。
「おはよー…」
「おはよう。魁ちゃんにプレゼント届いてたよ」
「プレゼント?」
「サンタからだ。玄関行ってみな」
言われた通り玄関へ向かう。どうやら外にあるようで、寒いのを覚悟で扉を開けた。息をすると朝の冷たい空気が鼻を通って肺を凍らせようとする。
ふと見ると、そこには赤いビニールの袋があった。小さくもないが大きくもない。私はそれを抱えて居間へ戻る。
「ねぇ、サンタってだれ?」
「いい子に過ごしてた子供の所にプレゼントを残していくんだよ」
「いい子…」
果たして、私はいい子なのだろうか。
2人と過ごしていた間はいい子だったのかもしれない。誰も不幸にすることは無かったから。でも、お兄ちゃんを殺したのは私だ。それがいい子だと言えるのか?
「魁ちゃんさー、頭ん中で色々考えてんだろーけど、トータルで考えたらお前はいい子で過ごしてたからな。過去のこと気にすんな」
「柊磨…」
「そうだよ。サンタさんはいい子だったって思ったからプレゼントをくれたんだ。中開けてみな?」
「…うん」
紐を解き、中を見る。個包装にされた大きな包みと小さな包みがあった。大きな包みから手に取る。
「なんだろーな。大きさ的にバッグとか服とかか?」
「これは…、服だ!」
「かわいいね。魁ちゃんによく似合ってるよ」
誕生日以外で人からプレゼントを貰ったのは初めてだ。その事に私は鼻の先が熱くなる。
「もう1個は?」
柊磨に開けるのを促され、小さな包みの方も開けてみる。すると、紺色の箱が入っていた。蓋を開けると。
「ネックレス…?」
「かわいいね」
「いいじゃん」
私は貰ったプレゼントを抱きしめる。そして2人に言った。
「ありがとう、悠磨、柊磨」
2人はびっくりした様子で私を見た。
「なんで俺らに言うんだよ」
「プレゼントをあげたのは俺たちじゃないよ?」
「だって、いい子に過ごせたのは2人のおかげだから」
そう言うと、2人は微笑んだ。
これは、そんなささやかな2日間の物語。
だけど、とっても心に残る物語だった。