「我らの種族も最強最強言われてるけどねー。今その数は我ら親族を合わせても50頭ほどしか存在しないっていう、今や最低最悪な絶滅の危機に瀕してるぅってわけ。」
「たしかに見ないな。
我が国で冥龍アルテマを保護したことがあるのも、俺が生まれる50年前だと聞いている。記録にあるのは雄だったがなー。」
「あぁ…我の旦那もここ出身だったな〜ん。どの旦那か忘れたけどね〜ん。」
「…おい。じゃあそいつはお前が食っちまったってわけか…。」
「そうかもしれないし、そーじゃないかも☆」
「はぁ…。正直俺からしたら、やるせねぇよ。」
「んま、数が減り始めた発端はねぇ〜。龍神族の間で蔓延した疫病かなー?
いくら最強といえど、病には龍神も勝てないからねー。その後に戦争がきて、雄がじわじわと数を減らした。そもそも、我らの生殖行動自体に種として問題があるんだよねぇ。
枯渇した土地でさぁ、妊娠ちゃったらどーなる?」
「恐ろしい話だな。」
「悪気はなくてもね。喉が乾くように肉が欲しくなってしまうアビリティの悪喰〝ポイズンイーター〟が発動して、雄はみんな雌の胃袋の中ってわけなのさ☆」
「明るく言うことじゃないだろ、それ。」
食べられるのもわかってて、献身的にそばにいる雄にもなんだか同情してしまう。
「皮肉にも、ほとんどの毒性を無効にするアビリティなんだけどねぇ〜。そうやって、長生きするよう授けられたのにねー。」
「まぁその…雄を食べてしまったほとんどが…お母様なんですけど…」
「お前のせいかよ!」
「お母様、すごくモテるので…その…いつも雄がほっとかなくて…10人とお相手してることもありましたし…」
「……ーーうげぇ、ま、まじか。」
「リユージくん。複数でやったことあるか?あれは気持ちいいぞ〜若いうちは沢山の人とやるべきだ☆」
「…そら病気も流行るって。」
「あ?なんか言ったか?」
そのあと食べられてしまう雄のアルテマのことを考えると、俺は気分が悪くなってきた…。
「冥龍アルテマのアビリティの遺伝はランダムなのだよん。ただ、ポイズンイーターを持ってる者は種の中でもかなり多かった。ヴァイオレッタも三つのうち一つがポイズンイーターだよ〜☆」
「3つもあるのかよ。」
「お母様は4つお持ちです。」
「……。」
怖過ぎだろこのおば…お母さん。
「そんな時、我は見つけた。」
「…俺?」
「そう!リユージくん!キミだよ。」
「俺がなんでそこに関係してるんだよ…。」
「私の娘、ヴァイオレッタ・レッド・ガーネットに君の精子提供をしてあげてほしい。」
「は!??」
「君は龍神族じゃない。」
「????!」
「俺の何かを知っているってことか?」
「知りたいかい?☆」
「知ってることなら知りたい…だが俺は完全にお前のことを信用していない。カグヤを返せ。」
「我の条件が飲めなければ無理だね☆」
そうきたか。
「……まず、話に矛盾がある。第一に俺が龍神族でなければヴァイオレッタは子供ができないはずだ。」
「ふふ…キミは本当に特別なんだ。
交雑の龍神でも純血種の龍神でもない。ただー」
「我々、龍神族にとっては、最も神に近い存在…とでも言うべきだな☆自分でも薄々気付いておろう?周りと違うことを。」
「……。」
そら醒乳システムがあるのは龍神の赤子や子供、俺だけなんだもんな。おかしいといえばおかしいし、アビリティと思えばアビリティだと思っていた。
「結婚しろとはいわない。あ、好きならしてもいいけど、ね? ほらうちの娘、きゃわきゃわじゃーーん?」
「あのな、俺は食われるのはゴメンだぞ。」
「お肉さえ切らさなければ、キミは食べられることはないぞ☆」
「…ほんとかよ。」
ウチで食わせる前提かい。
「お母様…」
「そーいえば、君んところの結界の魔力が弱っちーーの、ちゃぁんと純血種の魔力を取り込んでないからねーーん。簡単に壊れんの☆」
今の魔力でも十分防御を運用していたし、かなり強力だった筈だ。コイツの力が異常なのだ。
これ以上となると、純血種の醒乳が必要なことはわかっていたが、カグヤが純血種だと誰も知らず、そもそもカグヤは俺と儀式するのを拒んでいたし、護衛希望として俺のそばについた。そもそも、授乳メイドの数はなぜか多くて誰も辞めたがらない。
「うちのヴァイオレッタの醒乳を使えばいいじゃん?これは取引だね。」
本人の意思も聞かずにやれ精子提供だの醒乳だの…本当に親かこいつ。
「お母様…本気でおっしゃってるのですか?」
「ん?」
「あのっ…わたくし…」
言いかけて俯くヴァイオレッタ。
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