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それでは
どうぞっ。
ーーー
静かな朝だった。
と言っても、もう昼前だけど。
多忙な日々の中の、束の間の休日。
せっかくゆっくりできる日なのに、窓の外はどんよりと薄暗い。
日はとっくに昇っているはずなのに、薄墨色の分厚い雲がその熱を遮っている。
暖房をつけてもなお冷たい空気に身を震わせ、ソファに放置してあったパーカーを羽織った。
🧡「そろそろ雪降るかな…」
キッチンに立ち沸かしたお湯をコーヒーカップに注ぐ。
冷えた指先をカップで温めながら一口飲み下すと、コーヒーが通った跡がわかるくらい、じわじわと内側から温まっていく気がした。
🧡「お、おはよう。」
一息ついてると、リビングの扉が開く音がした。
🩵「……、」
寝癖の残った髪に、開き切っていない目。
いかにも寝起きの風貌で現れた柚葉は、私の存在を認識するや否や、おもむろに近づいて私を抱きしめた。
🧡「どうしたの?」
声をかけると、体の向きを変えて後ろから一層強く抱きしめられた。
起きたばかりの彼女の体温はいつもより少しだけ高くて、じんわりと伝わってくる。
顔は見えないけど、なんとなく雰囲気で拗ねていることはわかる。
🩵「起きたら隣にいないんだもん、…。」
🧡「ごめん、気持ちよさそうに寝てたから。」
🩵「……でも、淋しかった…」
🧡「…それは、ごめん。」
今の謝罪では不満だったのか、柚葉の頭がぐりぐりと首元に押しつけられる。
度々見せる柚葉の癖の一つだった。
そのコロコロ変わる表情に惹きつけられる人間が大勢いるせいで、私はたまに不安になる。
だから、伝えたいことははっきり伝えるようにしている。
私の恋人は、器用じゃないから。
🧡「嫌じゃないよ、柚葉のそれ。」
🧡「私のもの、って言われてるみたい。」
🩵「…なっ……//」
恥ずかしくなったのかまた強く抱きついてきた。
そんなの照れ隠しだってわかってる。
愛おしさが溢れて、触れ合う肌を変に意識してしまう。
私は隠さない。
きっと柚葉は気づかないから。
愛する人と冷たい冬によって生まれた、とびきり甘い朝だった。
end…