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そろもんが飛び降りてから数週間。


あの時、急いで救急車を呼んだ。けど、無駄だった。


思い出しただけで、吐きそうになる。

あの後も……意 識が戻ることは無かったらしい。

まあ、そうだよな。30階もあるビルなんだから…

思い出したくない。メンバーも全員精神を病んでいる状態だ。

俺__うたは、数週間1回も外に出ていないことを思い出した。

「外…気分転換に…なるか…?」

正直もう、俺も死にたいくらいだ。頭はクラクラするし、寝ることしか出来ない。


メメリス達には「無期限活動休止」ということにして説明した。


「なんで、?」

「そろもんくん…」

「ずっと待ってます!」

「せめてそろもん君の意見を…泣」

などのコメントが多く、そろもんを批判するコメントは俺の知る限りひとつも無かった。

(そろもん…)

今思えば、俺らが言いすぎたのが原因なのだろう。

あいつの話も聞かず責め立てて…思い出したくないほど辛い記憶が蘇る。


その時、玄関チャイムが鳴った。

(誰だよ……)


「はー、い、…はるてぃー…?」

はるてぃーとじおるが家に訪ねてきたのだった。

2人の身だしなみはきちんと整えられていた。だけど目は、まさに死んだ魚のような目である。

「お茶くらい出すわ…」

「あぁ、…ありがと…」

「…あすたは?」

「あすた、…discordもLINEも見てるんだけど返信来ねぇんだよな…やっぱ、そう簡単には戻れんわな…」

あすたは、1番ショックを受けていた。

あすたはそろもんが飛び降りたあと、間髪入れずに自分も追って飛び降りようとしていたのだ。

それはもちろん、俺らが止めた。


不意に、じおるは口を開いた。

「というか、無期限活動休止って…どうしてですか、?そろもんくんは…もう……」

最後まで言えずに言葉が終わる。

「そうだよな、はるてぃーが決めたんだろ?なんで無期限に…」

「だって、……そろもん、名前だけでもいて欲しいから…だって、脱退したらもう、メンバーじゃないじゃん、?でも、名前だけでも…残してあげたい……んだよ、」

はるてぃーの声は少し震えていた。目も赤い。

あすた、どうしてるかな…






ピンポーン


玄関チャイム…鳴ったよな…?

でももういいや、とてもドアを開けられるような身だしなみでは無い。

そうしてベットに身を投げ出した__あすたは、また込み上げてくる涙が抑えられず赤ちゃんのように声を上げて泣いた。

「うわあああああっ!!」

スマホを壁に投げつける。バンッという音とともに割れた液晶画面が目に入り、慌ててスマホを広い上げたが、壊れてしまったのか電源がつかない。

「あーあ、…でももうどうでもいいや」

気持ち悪い…吐きそうだ。

熱い、寒い…鳥肌が立っているが汗もかいている。

「…そういえば、この数週間ご飯食べてないな…」

本当に1食も食べていないことに今更気づくと、改めて死ぬほどお腹がすいて来た。

「うう、お腹空いた…」

とりあえず歯磨きしよかな…

と、洗面所まで壁伝いに移動してやっと鏡の前に立った。

鏡に映る自分はとんでもない引きこもりオバケのようだった。髪の毛はボサボサで顔は汚れっぱなし、泣きすぎたせいで目がパンパンに腫れていた。鏡の中の自分の目を見つめる。その目には光がなかった。生きる理由を失ったかのように__


(俺、なんて格好だよ…笑)

そろもんのためにも、笑って過ごさないとね。

そう心の中で呟いて鏡の前でいつもの様ににこっと微笑んでみる。だがその笑顔はどこか元気がなく、虚しいような、そんな笑顔だった。

(もう俺、笑うことすら出来なくなっちゃった…)

気を抜くとすぐにまた死んだような表情に戻り、隠しきれない負のオーラが見える。そういや、風呂も入ってないからか、心なしか臭い。…いや、これは事実だろうけど。

(俺、そろもん居ないとこんなだらしないんだな……)

改めてそろもんの存在の大きさを痛感する。


俺は、そろもんが好きだった。

あの時__そろもんの話を聞きにそろもんの家に突ったとき…帰り際に、気持ちを伝えた。「結構好きだよ」って確か言った。けど多分、それが恋愛的な意味だとは夢にも思わないだろうな。そもそも最近不仲てぇてぇ的な感じだったし。まぁ俺がそろもんのこと恋愛対象として見てるなんて誰も想像できないだろうなぁ。てぇてぇてぇてぇ言われてる時はほんとに気分が良くてしょうがなかった。

男だけど…野郎だけど。

そろもんには素敵なところが星の数ほどある。そろもんの好きなところを語れと言われたら本当に1、2年かかるかもしれない。

最初はほんとにうざかったんだけどなぁ…笑

色々な魅力に気づいて、たくさんの魅に惹かれるようになった。

今はもう、大大大大好きだ。

俺の生きる理由だった。

そんなそろもんが飛び降りた瞬間、考える間もなく自分も飛び降りようとしてた。

憧れのそろもんを追いかけて。

仲間が助けてくれなかったら、俺は今頃居ないのだろう。

だけどもう_なんならあの時死ねばよかった、と少し思う。

そろもんが居ないこの世界に、もう用なんてない…_

俺、ほんとにそろもん大好きだな__笑

俺キモ…けど、本当にそろもんに依存してしまっているのかもしれない。

(あーあ、つまんないなー…)


俺は無意識に、台所に向かっていた。

はっと我に返ると、右手には包丁が握られていた。

「わっ!?」驚いて包丁を落としてしまった。足のギリギリ横にカタンと落ちる。

(あっぶな…何してんだろ俺…)

俺は自分が何をしようとしていたかに気づき、変な汗が出てきた。

「俺、今…自殺しようと…?」

室内で、一人暮らしのはずなのに、自分が恐くて全身に恐怖の感情が巡った。

そろもんが居ないと、本当に俺は壊れてしまうのか。

自我を失ってまで、そろもんの後を追おうとしてしまうのか。

過度な依存だ。

(ほんとに俺、そろもんいないとおかしくなっちゃうよ…)

本当に今日の俺、おかしい。

寝室のドアを乱暴に閉め、閉まりっぱなしのカーテンを開けると、茜色の空が眩しかった。

今、何時だ…?

時計を見ようとスマホを拾ったが、そういえばさっき投げて壊したんだった。

もういいや、時間なんてどうでもいいや…寝よう。

すぐ寝るに逃げる自分に嫌悪感を抱きながらも、乱暴にベッドに身を投げ出し、そのまま頭を真っ白にして眠りに落ちる。


「そろ、__んにゃぁ、…」






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