テラーノベル
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夜は、
静かだった。
音も、
通知も、
少ない。
こういう夜ほど、
人は
「自分の気持ち」を
大事だと思い込む。
スマホが、
一度だけ震える。
ジュン
俺、
Rにだけは
本音言ってる気がする。
画面を、
見つめる。
指は、
動かさない。
特別。
その言葉は、
甘い。
でも。
一番、
境界を壊す。
返信は、
しない。
その代わり、
メモを開く。
配信の下書き。
今日のテーマは、
もう決めてあった。
「特別扱いされてるって感じたら、
一回、立ち止まって」
声は、
いつも通り。
穏やかで、
一定。
「その人が
“あなたにだけ”していること」
「それ、
本当に
あなた“だけ”?」
画面の向こうで、
誰かが
息を止めた気配がする。
「特別ってね」
一拍。
「相手が
あなたを大事にしてる証拠
じゃない」
「判断を
あなたにさせないための
近道」
コメントが、
流れ始める。
《それ分かる》
《言われてドキッとした》
《R、鋭すぎ》
わたしは、
一切、反応しない。
共感は、
ここまで。
これ以上、
寄らない。
配信を切る。
画面が、
暗くなる。
部屋は、
相変わらず静か。
スマホが、
すぐに震える。
ジュン
今の話、
俺のこと?
既読は、
つけない。
ジュンは、
もう
“答え”を探している。
わたしの言葉に、
意味を預けている。
それが、
一番、
危ない状態。
ベッドに腰を下ろす。
制服のまま。
着替える気も、
起きない。
特別だと思わせることは、
簡単。
でも。
特別だと思い始めた瞬間、
人は
自分で考えなくなる。
スマホが、
もう一度震える。
ジュン
俺は、
Rにとって
特別だよね?
画面を、
見つめる。
しばらく。
そして、
わたしは
スマホを伏せた。
——特別だと思わせた時点で、
その人は
もう、
飼われている。
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