【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
最近、犯罪組織の悪質化・巨大化が問題になっているのは知っていた。
そのせいでそれに対抗するうちみたいな組織の戦力が大分削られ、人手不足に苛まれていることも。
それが1つの要因となって、元いた組織に呼び戻してもらえるのは俺にとって好都合だった。
今あにきは、かわいがっていたあの3人とチームを組んでいるらしい。
そこに新しいリーダーが一人加わって、5人チームになっていることを聞いた。
「来週にはそっちに行くよ」
その日の任務を終え、家への道を急ぎながら俺は通話相手に向かってそう言った。
『あとさぁ、うちのリーダーがまろのテストしたいって言うとるんやけど…』
「テストぉ?」
めんど。そう小さく言うとあにきは「言うと思った」と高い声で笑った。
久々の通話だったけれど、変わらない優しい声音。
それに付随するように思い出される、りうらやほとけ、初兎の顔。
2年も会ってないから大分成長したんだろう、なんて思うと自然と口元が綻ぶ。
…絶対あいつらの前では口にはしないけれど。
「ん、えぇよ。とりあえずそっちに行ける具体的な日にちが決まったらまた連絡するわ」
『おー、頼むな』
通話を終わらせて、スマホの画面を消す。
それをそのままポケットにしまい、夜の路地裏を再び歩き出そうとしたときだった。
「…!!?」
ガン、と後ろから頭を殴られたような衝撃が走る。
後ろを振り返る隙すらない。
目の前を星が散ったように見えた次の瞬間には、俺の視界は暗く淀んでいった。
「おはよー、Ifくん」
目が覚めたときは、見知らぬ場所にいた。
見覚えのない一室に見覚えのない顔。
黒髪で、ピアスと黒マスクをつけた男がそこにいた。
「…誰や」
言いながら、俺は自分の両手が後ろで縛られていることに気づく。
グッと力をこめてみるけれど、手首を拘束する太い紐が抜ける気配はない。
せめて横たわっていた体を起こそうと、床に座った態勢で男を見上げ直した。
「君と契約したくて」
「契約…?」
訝しげに男を見据える。
マスクをつけているせいで口元は見えないが、目がこの状況を楽しむように笑っているのが分かる。
不愉快さを覚えて、バレない程度に舌打ちを漏らした。そもそもまともな「契約」ならこんな方法を取るわけがない。
「君、もうすぐ前にいた組織に戻るんだよね? しかも結構実力あるチームに。昔から家族同然で育ったメンバーなんだっけ?」
「…何が言いたいん」
まどろっこしいのと面倒くさいのは嫌いで話の先を促す。
それが分かったからか、黒マスクは「やれやれ」とでも言いたそうな身振りをして俺を見下ろした。
「そのチームにさぁ、ないこってリーダーがいるんだよね」
一昔前のヤンキーのような態勢で座り、俺に目線を合わせてくる。
…確かにその名前には聞き覚えがあった。
今いる組織でも噂になるくらい実力者だと有名だったし、あにきからも聞いた名だ。
「そいつを傷1つつけずに、殺して連れてきてほしいんだよね」
続けた黒マスクの言葉に、俺は目を見開いた。
真意を図り兼ねてじっと見据えるけれど、黒マスクは別にふざけているつもりもないようだ。
「…何で? 俺にメリットないやん」
「メリットはないけど、従わないとデメリットはあるよ」
「…は?」
「君の大事な家族が住む家に、爆弾しかけちゃった」
語尾にハートでも付きそうなふざけた口調で物騒なことを言う。
思わず一瞬目を瞠ったけれど、頭は意外に冷えていた。
「そんなん、今すぐあいつら引っ越しさせたら済む話やん。それで脅しのつもりなん?」
バカにするような煽り口調で告げたけれど、黒マスクはふぅ、と息をついただけだった。
それも、少し楽しそうに。
「これで乗ってくれれば楽だったんだけどなぁ」
ひとりごちるような呟きを漏らす。
それから俺の顎をクイと持ち上げ、顔を上げさせた。
「この前あっちの組織で、健康診断があったんだけどさ」
健康診断なんて言うけれど、一般人が想像するようなかわいいもんじゃない。
身体測定はもちろんだけどそれだけでは済まず、肉体と脳の活動量・スペック…全てを測られる。
例えば血反吐を吐きそうなくらい走りながらひたすら暗算させられるとか、こちらからしたら意味不明なものまである。
「その時、お前の家族…4人のうちの誰か1人の体内に、マイクロチップ型の小型爆弾しこんだんだよね」
「…は…?」
「こっちで遠隔操作したら、木っ端微塵に弾け飛ぶよ。試してみる?」
ゾクリと背中を冷たいものが走るのを感じる。
…ハッタリに決まってる。そう思いたい気持ちもあったけれど、黒マスクの目を見た瞬間に直感がよぎった。
…こいつは、本気だ。
「分かってくれて嬉しいよ」
俺の顎から手を離して、黒マスクは言う。
こちらが拒否できないことを理解している。
誰に爆弾を仕掛けたのかという喉元まで出かかった問いも、答えてくれるわけがないと思い直して呑み込んだ。
「…何が目的やねん。その『ないこ』に何の恨みがあるん」
「それは別に君には関係ないことだよ」
殺せと言っておいて、「関係ない」?
…よく言う。呆れてもう笑いすらこみ上げてこない。
「これ、君にあげるよ」
言いながら黒マスクが取り出したのは、ゴールドチェーンのネックレス。
プレート型のチャームが付いている。
…盗聴器と発信器だと一目で理解した。
手を縛られたままの俺に代わり、黒マスクがそれを俺の首にかける。
「ん、似合うね」と満足そうに目が笑った。
「あとはこれ。予備も兼ねて2本渡しておくね」
小型のケースを開いて見せてくる。
中には小さめの注射器。
その隣にはこちらも2本並んだガラス製のアンプル。
「一瞬でキレイに死ぬよ。即効性は保証する。あ、それ以外の殺し方はダメだからね。傷がつく」
パタンとそのケースを閉じ、俺の上着のポケットにぐいとねじ込む。
「よろしくね、Ifくん」
有無を言わせぬ口調で笑って言い、黒マスクは念を押すように最後に爆弾の起爆装置をちらつかせた。
俺がとあるバーを訪れたのは、黒マスクに解放されてから2日後のことだった。
本当ならあいつの元から帰されるときにまっすぐ向かいたかったが、盗聴器と発信器がつけられている以上怪しいと思われる行動はできず今に至る。
「いらっしゃ…あれ、珍しい。久しぶりだね」
カランと鳴るドアを押し開くと、カウンターの内側にいたマスターが目を丸くした。
すぐに微笑んで、自分の前の席を勧めてくれる。
ジャズが控えめに流れる店内には、まだ早い時間だからか他の客がいなかった。
カウンター席の椅子を引くと「いつものでいい?」と問われる。
俺は小さく頷いて返した。
「前の組織に戻ることになったから、またしばらくここに来れなくなりそう」
「へぇ、そうなんだ」
そんな何でもない会話をしながら、俺はジェスチャーで「盗聴器が仕掛けられてる」と伝える。
発信器だけならきっとどうにでもごまかせる。
ここのバーが俺のお気に入りで、前々から頻繁に訪れていたのは調べればすぐに分かる。
この店にいること自体は怪しくないはずだ。
目を丸くしたマスターは、それから「ふーん」とでも言いたそうな顔をした。
スタスタとカウンターの奥に移動し、そこから何かを手にして戻ってくる。
目の前に出されたのは白い紙とペン。
…この時代にアナログ過ぎん? 別にいいけど。
長髪を後ろに束ねたマスターは、まだ若いのに「若者の文化にはついていけない」が口癖だった。
デジタル機器を通す文字での会話は苦手なのかもしれない。
「元いた組織って遠いんだっけ」
シェイカーに氷を入れながら、マスターは雑談を続ける。
「そんなに。でも人手不足で呼び戻されるから、忙しくはなると思う」
答えながら俺は紙にペンを走らせる。
『これ見て』と書いて、ジャケットのポケットから小さなケースを取り出した。
あの時黒マスクに持たされた注射器が入った箱だ。
その中のアンプルを取り出し、1つをマスターに手渡す。
『打ったら一瞬で相手を殺せるらしいんやけど』
メモをチラリと見てから、マスターはアンプルを凝視した。色は害のなさそうな無色。
「そこの組織が人手不足ってことは、犯罪が溢れてるってことだよねぇ。嫌な世の中だね」
『なんか脅されてる?』
口では世間話を続けながら、マスターは向こう側から同じようにメモにペンを走らせる。
そんな物騒な物を持っている点から、一瞬で俺の置かれた境遇を理解したようだった。
「最近子供の拉致とかも増えとるから、任務の後味が悪いんよな」
『言うこと聞かんかったらお前の家族殺すぞ、やて』
「忙しくてもちゃんと寝れてる?」
『ハッタリじゃなくて?』
「一応。あーでも1ヶ月くらい何もせんでええような休みが欲しい」
『マジやと思う。この注射器で一人殺してこいって』
「でた、Ifくんの怠惰」
『やるの?』
「一回でいいから泥のように寝たいやん」
『…分からん。でも念のために、アンプルを入れ替えられるようにしたい』
「疲れてるねぇ」
口では大した意味のない会話を続けながら、互いに音を立てないように筆談を繰り返した。
『…入れ替える? どんな薬液が欲しいの?』
問われて、自分の頭の中に構想した薬効を列挙する。
それを見ていたマスターの顔が段々と険しくなっていったのは気のせいじゃないだろう。
「はい、いつもより強めにしといたよ。今日はよく眠れるんじゃない?」
そう言い、マスターは筆談をしながら作っていたカクテルのグラスをこちらに差し出す。
『何日で?』
『5日後には向こうの組織に戻るから、それまでに頼みたい』
『相変わらず無茶言うなぁ』
「ん、ありがとう」
受け取ったグラスに口をつける。
ほのかなライムの香りが口内を抜けて鼻腔をくすぐった。
『4日後に取りにきて。…でもかなり危険だよ。効果は保証できない』
『賭けやからしゃあない。それに…』
それに、黒マスクに持たされたアンプルで「ないこ」という人間を本当に殺し引き渡す――そんな向こうの要望通りに事が運ぶならそれに越したことはない。
俺のそんな思考が読み取れたのか、マスターは少しだけ眉を下げて微笑んだ。
『Ifくんには無理だと思うよ、優しすぎるから』
最後にそう締めくくられたメモを見て、俺は声を出さないように苦笑いを漏らした。
コメント
4件
表現や文章の構成が綺麗でこの世界観に引き込まれます…! 今回で青さんが黒マスクの方の言いなりになっていた理由がわかりましたね… もしかして最後は注射器の中身を入れ替えたんでしょうか? 黒マスクの方にバレないように筆談だったことからも、青さんは彼の思惑通りにはさせずに、彼の計画を壊そうと動いたのかなと考えています!
元恋人ヤベェ奴だな、、青くん脅されてたんだ、、、マスターが入れ替えてくれた薬どうなったんだろ、桃ちゃん生きてるのかな?水くんは?気になって仕方がない、、、とりま元恋人は絞めるとして、
なんか裏話的なものっていいですね! マスターと青さんが口と手を違うことをしながら動かせるのがすごい…(( 青さんは元恋人さんに知らせが来てからすぐに脅されてたんですね…この脅しが無ければもっと青桃として楽しくやっていけたのでしょうか…?