そこまで吐き出すと、ストローに口を付け、一気に吸い込む。
冷たくて爽やかな喉ごしが、気持ちを落ち着けてくれる。
その間、姫菜は口を挟まずに2本目のタバコを取り出した。
「そしたら、ガチギレされちゃった。親に向かってなんっつった?って。ほんとに可愛げないわねって。そんなこという親なんて親じゃないのにね。」
「そうねぇ…」
それだけ言って姫菜は、煙を吐き出す。それから、組んでいた足を組み替えて、口を開いた。
「都合の悪い時だけ親面するなんて、ほんと屑だね。」
「うん。」
全くその通りの発言に、胸がすーっと軽くなる。自分で思ってたことを人に言われるのは気持ちがいい。
「だけどあんた、よく言い返したって感じ。」
「そう…かな?めんどくさくなるから、言うつもりなかったんだけどな。」
「けど、すっきりしたっしょ?」
「まあ、言わないよりは。鬼ババアみたいな形相を見た時は笑いそうになった。」
二人して、くすくす笑い合う。ようやく今日初めて、穏やかな時間が訪れた。
「いいんだよ、それで。あんたは悪くないんだからもっと言えば。」
「ん。だね。ありがと。」
優しい口調でそう言われ、素直に頷く。さっきまでのモヤモヤが嘘のように消えていた。
姫菜は、不思議な人間だ。見た目は派手で、キツそうなのに性格はクールで。
かと思えばさりげない優しさがあったり。
頻繁にあっても、私には姫菜という人間が理解できていなかった。
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