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💙青椒肉絲🧡
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名無しさん

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💚視点
いつも通り出社。自分のデスクに座ってカバンを確認すると、毎日のようにできている切り傷が今日はできていなかった。
「……あれ?」
少し不安を覚えながらも、俺はいつも通り仕事を始めた。
そしてその帰り道。俺の不安は的中する。
いつもより帰りが遅くなってしまったのだが、それにしても人がいなさすぎる。
深夜と呼ぶ時間にはまだ少し早いのに、すれ違う人がほとんどいない。
しかも、俺の後ろにずっと誰かがいるような気配がする……
朝向井さんに渡されたものがお守りということを思い出し、カバンから取り出して手に持ってみる。
「探偵事務所寄ろうかな」
独り言を呟いて足を早めた瞬間、
「……っ!?」
声を出す間もなく俺の口は誰かに塞がれてしまった。
暴れて抵抗するうちに視界の端によぎる銀の光。……刃物だ。もしかして、ニュースで見た殺人犯……?!
(っ、助けて、向井さん……!!)
お守りをギュッと握り潰しながら心の中で叫ぶと、
「その言葉待っとったで!」
明るい向井さんの声がすると、
「痛っ!」
犯人が声を出して何かに痛がる。驚いて振り向くと、犯人の手首から多量に出血しているのが見えた。
「えっ、何で……!」
俺の足元を何かが通り抜けていくような風を感じている間に、気づけば髙地刑事が犯人を取り押さえ、向井さんは倒れる犯人の首筋辺りを写真に撮っていた。
そしてそんな向井さんの隣に、1匹のイタチがいるのが見えた。
「待って、か、かまいたち……?!」
「キュウ」
妖怪のかまいたちが、ここにいる? 妖怪がなんで俺に視えて……?
「……妖怪は、視えるべくして視えるんです」
「え……?」
戸惑う俺の横に来て、髙地刑事がそう呟いた。聞き返しても、それ以上答えてくれる気配はなかった。
「阿部さん、怪我はありませんか?」
「え、あぁ……大丈夫です」
俺の無事を確認した髙地刑事はそのまま犯人に手錠をかけ、これのことは任せといて、と向井さんに言ってから連行していった。
「阿部くん! 無事で良かったわ〜」
「向井さん、これ何がどうなってるんですか……?」
いろんなことが一度に起こったことで若干パニックになっている俺。向井さんはそんな俺に苦笑いを浮かべる。
「まあそりゃそうなるやろなぁ。一旦俺と事務所来てくれるか?そこで全部説明するわ」
俺はもう向井さんについていくしかなかった。
「お疲れさん、コーヒー淹れるな」
事務所に着くやいなや向井さんはコーヒーを淹れてくれた。俺は戸惑いつつもそこにミルクとシュガーを混ぜて向井さんの顔を窺う。
「……あの、一体何がどうなって」
「まず結論から言おう。阿部くんは妖怪に気に入られとったみたいやわ」
「え……」
「俺の隣におったかまいたち。あいつが阿部くんを守ろうとしてくれてたんや」
「あの子が……」
俺がそう呟くと、また“何かが足元を通り過ぎていく”ような風を感じて足元を見ると、向井さんの横にかまいたちが立っていた。
「キュウ?」
かまいたちは俺を見上げると、鳴きながら首を傾ける。
「阿部くんの体にできてた傷は、こいつが守り方と近づき方をよく分かってなかったせいやな。犯人の手首が切れて阿部くんが怪我せんかったのも、こいつが頑張ってくれたおかげや」
「な、なるほど……」
そんな理由で俺は怪我をしていたのか、と少し拍子抜けした。でもまあ、なんか……子どもみたいだし……仕方ない、か?
「そんで、さっきこーちが捕まえてった犯人は、ここ最近の通り魔事件の犯人と同じやつやったわ」
「えっ……」
「……阿部くんに何もなくて良かったわ」
向井さんはまっすぐな瞳を俺に向けて言う。その真剣な眼差しから、本気で俺のことを心配してくれていたことがわかる。
「あの犯人にはかなり強い妖気がまとわりついとってんけど……これは、阿部くんはまだ知らんくてええことや。そのうち教えるわ」
「はぁ……」
そのうち、という言葉に引っかかりを覚えたが、今は一旦スルーしておくことにする。
「んで、こっからは阿部くんに決めてほしいことや」
向井さんは俺と対面して座っていたソファーから立ち上がると、自分の机に置かれたままのコーヒーを一口飲む。
「まず一つ。阿部くん、このかまいたちをそばにいさせてやってくれんか」
「へ?」
某妖怪アニメのように、俺が妖怪と友達になるというのか。疑う気持ちが顔に出てしまっていたのか、向井さんは苦笑いする。
「まあ、いきなりこう言われたって、てとこやな。でもな。妖怪って、1度気に入った相手には心の底から忠誠誓うんよ、何があっても」
「何が、あっても……」
人間の絆よりも、遥かに固く結ばれるもの。契約とも似たそんな関係。少しくらいあっても、悪くないかもしれない。それに、俺に怪我をさせた相手を、そう易々と野放しにしたくない。
「……じゃあ、いいですよ。俺のそばにいてください、かまいたちさん」
「キュウ!」
かまいたちは嬉しそうに鳴くと、俺の肩にぴょいと飛び乗ってきた。尻尾の鎌が顔に当たりそうで思わずのけぞる。
「……鎌の扱い方も、教えてやってな」
「……はい」
一つ目の問題はこれで解決したようだが、向井さんはまだ何か決めてほしいことがあるらしい。
「もう一つは……阿部くん、妖怪が視えるんなら俺の事務所におってくれ」
「……はい?」
俺が? 探偵事務所に?
「……いやいやいや、何言ってるんですか。俺、今働いてる会社ありますし」
「それもそうやねんけどな」
向井さんはコーヒーをまた一口飲むと、俺の座るソファーに戻ってくる。
「……妖怪が視える人はそう多くない。一度妖怪が視えてこうして友好関係を結んだ以上、あちら側の世界で阿部くんのことが知れ渡るのも時間の問題や。そうなってまえばもう、人間界で生きる阿部くんは妖怪に狙われ放題ってことになる」
すなわち、一度妖怪と関わってしまった俺はもう、元には戻れないということ……
「いやそれ先に言ってくださいよ! もうかまいたちさんとお友達になっちゃったじゃないですか!」
「ふふふ、これも俺の戦略や……」
向井さんはニヤリと笑って言う。
「きっと阿部くんめっちゃ賢いやろ? この事務所にもな、一緒に働いてくれる頭のいい助手が欲しかったんや……」
「ず、ずるすぎる……」
まさか俺という人材が欲しかったがための戦略だったとは。まんまと嵌められてしまった。……だからさっき、“そのうち”とかいう含んだ言い方をしていたんだ。
「……はぁ。わかりましたよ。もう元には戻れないんですもんね」
俺は覚悟を決めるしかなかった。もう、人間だけの世界には戻れない。
「よしきた! ありがとうな阿部くん!」
向井さんはパァッと花が咲いたような笑顔を浮かべ、俺の手をとって上下に強くブンブンと振った。かなり強引なやり方で、俺の仕事も奪われたようなもんだけど。不思議と嫌な気はしなかった。
こうして俺の、探偵助手としての生活が始まった。
これは俺──阿部亮平の日記兼、依頼事件の記録である。
コメント
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ひいらぎさん、第5話読みました! かまいたちの「キュウ」が可愛すぎて笑っちゃいました😂 でもちゃんと阿部くん守ってくれてて、そのギャップがたまらないです。向井さんの“戦略”には「ずるい!」って思わず声が出ましたけど、阿部くんが覚悟決めるシーン、じんわり来ました。妖怪と人間の絆、これからどう育っていくのか楽しみです🌙