テラーノベル
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こんなに近くで彼女の寝顔を見るのは初めてだった、長い睫毛、少し開いた唇、頬に残る酔いの紅潮、どれもが、愛おしくてたまらなかった、まるで自分の理性を試されている様だった
「ずるいなぁ~・・・君は・・・」
ジンは小さく呟いた、最初は偽装結婚のはずだった、ビザのため、会社のため、ただそれだけの契約だったはずだ・・・なのに、いつの間にか、こんなにも彼女のことを愛し始めている・・・
彼女の髪が頬に触れる・・・そして二の腕になにやらフニフニしている感触がある・・・
―これは・・・桜の・・・む・・・胸・・・いいや!考えるな!桜が目が覚めた時に勃起している自分を見られるほど恥ずかしいものはない!―
ブツブツ・・・
「南無阿弥陀仏・・・南無阿弥陀仏・・・」
一心不乱にジンは天井を見つめ、最近アニメを観て知った精神統一方法をただひたすら繰り返した、ジンの腕の中で、桜はすやすやと幸せそうに眠り続け、アソコも身体も硬直したジンは全く微動だにできないまま・・・
窓の外から波の音が聞こえ、淡路島の静かな夜はゆっくりと更けていった
.:・.。. .。.:・
太陽が淡路島の海面からゆっくり顔を出し、襖から漏れた朝日が天井に筋をつくる
ジンは自分に抱き着いてぐっすり眠っている桜を見下ろした、彼女はジンの胸に頭をのせてぐっすり眠っている
柔らかい乳房がジンの脇にぴったりくっつき、彼女の片脚においてはジンの両脚のあいだに差し込こまれていた
彼女の安らかさとは反対に一睡もできなかったジンは目の下にクマを作っていた、トイレに行きたかったけど動くと彼女を起こしてしまうのではないかと動けなくなっていた、もうすぐ膀胱が破裂しそうだ
一晩中眠っている桜をずっと見ていた、そして考えた女性と最後に肌を合わせたのはいつだっただろう・・・
高校生の時に少しの間だけ付き合っていた彼女は女優志望の気の強い美人だった・・・クリスマスの記念日に彼女の家に誘われてそのまま朝まで一晩過ごした、それからデートの度に彼女とセックスをしたっけ・・・今では顔も思い出せない
その後に家族の事故死・・・日本にやって来て、無我夢中で働いた、それこそ恋愛どころではなかった
桜を傷つけたくない、絶対に傷つけたくない、でもこのままいけばそうなる
彼女は自分を好いてくれている、夕べハッキリ分かった
恋をしている女性の瞳に浮かぶ美しい輝き、でも彼女はキャリアを求めているし、自分が愛情深い夫・・・献身的な父親になる自信は毛頭ない・・・
この契約は半年間夫婦役を演じ切ること・・・そこに恋愛感情や、ましてやセックスは入っていない
ジンは桜を起こさない様にそっと布団から離れ、持って来ていたランニングウェアに着替えて、まだ寝静まっている山田旅館の玄関を出た
ハァ~・・・
「結局一睡もできなかった・・・」
目の下にクマを作っても、ジンは日頃の日課を崩したくなかった、それに昨夜の「婿殿歓迎会」で桜の親戚一同に囲まれ、延々と続いた宴会の疲れを、朝の海風で吹き飛ばしたかった
部屋に残してきた桜は、布団にくるまって気持ち良さそうに寝息を立てていた、あの天然で無防備に眠る彼女を思い出して、ジンは思わず口元を緩めた
「まったく・・・しかし・・・柔らかだったな桜・・・いかん!いかん!思い出すな!」
邪念を振り払う様にジンは港へ向かって走り出した、新鮮な潮の香りと、どこか懐かしい磯の匂いが鼻腔をくすぐる
大阪のビル街とは違う、ゆったりとした時間が流れるこの島は、不思議とジンの心を落ち着かせた
コメント
2件
耐えぬいたーーー! ジンさん素敵💓お疲れさまでした🫡
ジンさんあなたって人は😭