転移魔導具を取り出す。使い方は貰ったときに教えてもらった。音を一つ鳴らす際に行き先をイメージする。イメージしたまま鳴らすとすぐさま魔法陣が発動し転移できる。便利なことにこの魔道具は鳴らす本人に触れていれば一度に大勢の人を移動することができる。ただし一つにつき2回まで、使い終わると消えてしまう。優れものだが考えて使わないといけない。
(まずは、隣の領地から…)
リン…
ベルを鳴らす。すると強い光を放つ魔法陣が発動した。目を開けるとそこは隣の領地に転移していた。
「…すごい」
隣の領地はミオマルク辺境伯が治めている。自然を利用した織物が有名で王都でも人気がある。肌にも優しく私もお気に入り。当主が商会長も務めており自分で商会を作って商売もしている。自分たちで商売するので偽造を行いにくい。また、そこにある布などは全て領民たちが蚕から作っており言わば服職人が大勢いる場所だ。一から作る工程のほとんどは女性が行っている。力仕事は男性がしているが布を編んだり色を染める為の植物や蚕の葉っぱを用意する作業は女性の方が多い。外での活動も多いので肌荒れを起こしてしまう。冬は乾燥肌が特にすごい。だからこその保湿クリームだが…国にある保湿クリームは水に濡れると落ちてしまう。布に色をつける際も保湿クリームが付いてしまう事がある。そんな状態では日中もクリームを使うことができない。
だが、ポノの実でできたクリームはそんな悩みを解決する。この事を作業をする女性達が知れば売れる。
売るためには商人ギルドに行き商会を作る必要がある。一応、商人になる為の試験があるがそちらは一発合格している。後は商会を立ち上げたらいつでも売ることができる。商会を作るには年齢が決まっており最低限で13歳以上だ。
(と言っても今まで20歳以下が商会を立ち上げた記録がない)
立ち上げには資金が多くかかる。少なくともその若さでやるなら貴族ぐらいの子供がするほど高い。投資してもらえたなら何とかなるかもしれないけど、そんな子供に投資するような人はいない。どうしても売りたいなら商人ギルドを介して売り込んだらいいのだが仲介料や税金などによって貰えるお金は少ない。店を持たずに旅商人として売ることもできるがそれでは今後、偽商人がでてしまう恐れがある。それなら、自分で商会を作ったほうがいい。
商会に行く前にまずは、宿を決め荷物を置きに行かないと…鞄の2つのうち一つは私の鞄、2つ目は、領地から持ってきた商品だ。一応2つとも収納ボックス型になっているので軽いがさすがに邪魔だ。それにこれからギルド長に会いに行くので大荷物を持ったまま行くのは失礼だ。
何とか無事に宿を取れたので商人ギルドに向かう
【商人ギルド】
ガチャ
「ようこそ、商人ギルドへ」
商人ギルドは冒険者ギルドと同じ広さを持つが建物自体は白い色で品性をかたどっておる。言わば、冒険者と違って品性があるということを強調している。
「相変わらず…」
受付嬢は私を見ると
「お嬢さん…どうしたのかな。ここは商人ギルドだよ」
「知ってます。ギルド長に会わせてください」
「お嬢さん…商人ギルドは商売をする人が来るの…冒険者ギルドと間違っていない」
どうやら私が子供だからって商人には見えず冒険者と勘違いしているようだ。確かに身長は低い。やっと152cmになった所だ。
「間違っていません。私は商人です」
「貴方みたいな子供が商人にはなれないわよ。もう少し大人になってからじゃないと…」
仕方がないので鞄から商人ギルドカードを取り出した。
「これが証拠です。ギルド長に会わせてください」
受付嬢は驚いているが顔からして信じてないようだ。ギルドカードには写真付きでカード自体を調べれば本物だと分かるのにそれをしないで疑うとは
「受付嬢さん…貴方それでも受付嬢かしら、ちゃんとお客様を案内しないと…商人ギルドの品質を問うわ」
「なっ…」
「それとも貴方には不似合いなのかしら」
「なっ…なんで…すって」
「はぁ…貴方分かっているのかしら」
怒りが丸見えだ。感情を出す暇があったらさっさと行動したほうが賢いのに…
このままでは埒が明かないと思っていたとき…
「おや…天才嬢ちゃんじゃないか…久しぶりジャぁの」
「お久しぶりです…ギルド長」
頭はツルッパゲのおじいさん。顎には立派な髭を生やしている。そんな見た目の商人ギルド長だ。名前は…リライ・アブル。どうやら意外と厳しい人で有名らしい。
(…後相変わらず変な語尾)
「ギ…ギルド長…お知り合いで…」
「そうジャ。この子は子供ながら商人だからジャぁ」
受付嬢は驚きを隠せずにいた。
「えっ…」
「貴方がどんな人か知ることができてよかったわ」
「す…すみませんでした」
…彼女これからは態度に気をつけるといいのだけどね。
「ギルド長お話があります」
その後ギルド長室に案内してもらった。
「コーヒーでいいかジャぁ」
「はい」
ギルド長お気に入りのコーヒーは美味しい。使われている豆が遠い地でしか採れない貴重な豆だ。
「早速ですがお聞きしたいことがあります」
「なんジャぁ」
「商人ロングスがどこにいるのかおを知りたいのですが」
聞いた途端…ギルド長は悔しそうな顔をした。彼に何かあったのだろうか…
「アイツはジャぁ…王都からきたデュラン商会に入って下働きをして…そのまま才能を腐らしておるジャぁ」
「なぜ下働きですか…彼なら商人になれるはずです」
「最初は…向こうでも腕の立つ商人ジャぁったが…偽の商品を売りつけたり裏金疑惑が起こり下働きに下がってしまったジャぁ」
偽物…裏金…あんな素晴らしい人がそんな事をするわけがない。
「商会を辞めないのですか」
「あんな商会辞めた方が良いのジャぁが借金があるらしく抜け出せないジャぁ」
「何の借金ですか」
「なんでも…向こうで偽物の商品を売り賠償金として金を迫られ商会に借金をしたのジャぁ…裏金疑惑からずっと下働きのまま…」
「そうですか」
調べられぬまま疑いが晴れずに終わったのか。
「…その商会危ないのでは」
「商品はいいのジャぁが商会内での問題があるようジャぁ」
確かに表立って目立つ事がなければ商会も動きにくい。それにあの人は誰かに助けてもらう事が苦手だからな…プライド野郎が
「わかりました。この件は私が何とかします…なので以前から頼んでいた例の件よろしくお願いします。」
「そうか…頼んだ。こちらは任せてくれ」
「やはり…変な語尾がないとだめですね」
「そうか…ジャぁ」
私は、ギルド長から彼が居そうな居場所と時間を聞きだし向かう。
「はぁ…やっぱり夜は冷えるわね」
待っている間に夜になってしまった。私が今いる場所は教会の近くにあるベンチだ。ここにいれば必ず来るはずだ。
(…!)
ヒョロッとした男性。ヨレヨレな服装。黒髪が顔半分というか目が見えないぐらい埋めている。顔が見える少ないところからでも分かるほどやつれている。同じ商人…
「お久しぶりです…ロア」
ニッコリ
私を見ると顔が見えにくくてもわかるほど驚いていた。
「…アイリスか」
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