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オムライスを飲み込み
「とても美味しいのでっ!自然と笑ってしまいます」
「そうね、桜ちゃんは笑っていた方がもっと可愛いわよ?」
ドクンと鼓動が聞こえた。
美味しすぎてガッツいてしまったが、引かれちゃったかな。
もう遅いが心配になる。
「私、思ったんだけど……。桜ちゃんって、昔飼っていたワンちゃん(犬)に似てるの!だからなんか親近感が涌いちゃって……。見ていると癒されるって言うか……」
ワンちゃんか……。
だから蕁麻疹も出なかったのかな。
「はぁ?それって、次郎《じろう》のことでしょ?女の子に対してすごく失礼だと思うけど!」
遥さんが眉間にシワを寄せている。
「いいんですっ、次郎ちゃんでも。椿さんの癒しになれるなら、私は満足です」
いつの間にか、椿さんは私の憧れになっていた。
なんというか、自分にとってのアイドル的存在と言えばいいのだろうか。
ファンになってしまったみたい。
「私に懐いてくれるところとか、本当に次郎みたいね。可愛い」
頭を撫でられた。やっぱり、男の人なんだ。手が大きい気がする。
こんなに優しくて綺麗で……。大切にしてくれそう。
いっそのこと、犬になりたいと思ってしまった。
しばらく私を撫でた後
「うん。やっぱり大丈夫みたい」
椿さんは自分の身体を確認している。
「私に触れても……。ですか?」
椿さんは撫でた手を見つめているが、特に異変はなさそうだった。
オムライスを食べ終え、時計を見る。
いつの間にか二十二時を過ぎていた。
「桜、そろそろ帰ろうか?」
遥さんも時計を見たようだ。
「はい」
帰る支度をして、お会計をしようとすると
「大丈夫よ。もういただいているから」
えっ?遥さんが払ってくれたのかな?
遥さんは電話をしてくると言って、既に外に出ている。
遥さんに渡さないと……。
「今日はとても楽しかったです。ありがとうございました」
椿さんと近くにいた蘭子ママさんに挨拶をした。
「いつでも来てね!何か困ったことがあったり、悩み事があったらいつでも聞くからね?」
蘭子ママさんがウインクをしてくれている。
「ええ。遥さんと一緒に来なくてもいいから。もし嫌じゃなかったら一人で来てもいいんだからね?待ってるわ」
椿さんにも声をかけられる。
「はいっ、ぜひまたよろしくお願いします」
本当にまた来たいな。心からそう思った。
新しい自分の居場所が出来たような感じがして……。嬉しかった。
二人に手を振って、階段を上がる。
外にいた遥さんに声をかける。
「遥さん、ご馳走さまでした!おいくらですか?遥さんが払ってくれたって椿さんから教えてもらって……?」
「えっ、ああ。そうそう。今日はいらない!私から誘ったし、しかも普通のBARじゃなかったでしょ?びっくりさせちゃってごめんね。私、旦那が迎えに来てくれることになってるの。桜、一人でここから帰れる?」
「はいっ、帰れます!じゃあ、次は私が奢りますね?今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました」
頭を下げ、遥さんと別れた。
――・・・。
「ただいま」
桜を見送ったあと、もう一度店に遥は入った。
「おかえりなさい。桜ちゃん帰った?」
「うん」
カウンターに一人で座る。
「ママ、烏龍茶ちょうだい!」
「はいはい、ちょっと待っててね」
カウンターでお酒を作っている椿に話しかける。
「ちょっと、椿!お会計、上乗せしないでよね?私の奢りでいいんだけど」
「はいはい、承知いたしました。ちょっとお客様のところへお酒を持って行くから待っててね、お姉ちゃん」
桜がいた時とは違い、冷たい目で姉を見た。
帰ってきた椿へ一言
「ちょっと、何も聞き出せなかったじゃない」
八つ当たりともとれる発言に椿はため息で答えた。
「はぁ……。あの子、一人で抱え込んじゃうようなタイプでしょ?なかなか教えてくれないわよ。しかもこんなオネエなんかに」
はい、烏龍茶とママから渡された烏龍茶のグラスを前に置いた。
「でも桜、楽しそうだった。あんたのことがお気に入りになったみたい。あー、私もあんな妹が欲しい」
カウンターにうつ伏せになり、遥はそう話した。