あぁ、終わるんだ。全部が。
真の目を見てそう確信した。優しく、否定せずに正しい位置に戻そうとしてくれている。
そして、振られてもめげずにいるメンタルを俺は持ち合わせていない。だから、終わるんだ。
「….うん。覚悟は出来てる。」
「あのな、弦。正直言う。お前が俺を裏切ったッつーなら俺もお前を裏切ってる。」
真の言葉の意味が分からなかった。
「ハッ、間抜け面。…..お前がその…キ…キス…しただろ?びっくりはしたよ、飯も食わずに出てくから腹立った。……でも、嫌じゃなかったんだ。」
「は….え…?」
「だッから….これが…好きっつーことなのかは…ごめん。正直わかんねェ。でも、嫌じゃなかったんだよ。色々考えたけど…考えた可能性の中で俺が1番嫌なンは…お前は色んな奴に見境なく同じことをしてるッて事だ。そんで…..俺だけだったら…1番良いなって思ったんだよ。」
俺が目を見開いている間に、真はまた大きく息を吸った。
「タッグも解消しねぇ。転校なんて絶対させねぇ。そんで…..友達兼こッ恋人だ!!!!!いいな!!!!!!!」
……..こんなことが、あっていいんだろうか。
どうして俺は、身勝手な行動を許されただけでなく、酷く優しく強引に結ばれているんだろうか。
「そ….そんな….真は優しいから気遣ってくれてるのかもしれないけど…..別に俺は振られても今まで通り過ごすよ。真がそれでいいと言ってくれるならタッグも解消しないし転校もしない。真が身を削る必要はないんだ。」
「だからァ!!!みなまで言わせんなモテんなら察しろよ!!!!!俺は恋愛と無縁の人生送ってきて….好きが何かも分かってねェんだよ!!でもッ….普段仏頂面なのに俺の事になると笑っちまうくらい分かりやすくなるお前を…ずっと笑顔にさせていたいッて思うんだよ!!!!そういうやつなんだよクソが!!!!!」
「……..ご、ごめん真….嬉しいとかもう超越してて…なんて言葉にしたらいいのか..」
「…言葉じゃなくても表現する方法は…あんじゃねぇの?」
「えっ?」
いや待て。
(真は純粋だし俺もさっき猛省したばかりだ。同じ過ちは犯すな。)
数秒でできる限り頭を回転させ、表情で表すという結論に至った。ぎこちないなりに愛しさと嬉しさを笑顔に滲ませ、感謝を口にした。
「….ありがとう、真」
すると真は耳を真っ赤にさせて口先を尖らせた。
「……..終わり?」
「あ、あぁそっか….家帰って準備しなきゃ….真も親御さんが心配するから、帰ろう。送るよ。」
期待してはいけない、押し付けてはいけないと必死で饒舌に話し立ち上がる。何よりも大切にしたい。実や2人の両親が安心できるように。
優しいこの目を、湿らせてしまわないように。
すると俺の思いとは裏腹に、真は物欲しそうな目で俺の服の裾を掴んだ。
「もうちょい….いいだろ…」
本当の紳士ならここで余裕の笑みを浮かべられるのかもしれない。だが俺は俺自身の理性が不出来なものだという自覚があった。
「ま、真….大切にしたいんだよ..真と違って俺は汚いことばっか想像するし…..今日これ以上一緒にいたら今朝と同じことが起きるかもしれない….ここで無事に送るのがけじめなんだ…」
「キス、しちまうかもってことか?」
「…はい..」
キスというか大好きな人と付き合えた今一緒に家に帰ればそれ以上のことをしてしまうかもしれない。
「…….ん..」
真は、目を瞑り俺の体を真の方に引っ張った。
流石にこれは俺の勘違いではないと思う。真は今、俺からのキスを待っている。
「ま、真….?いいの……?」
「……はやく..」
「っ……」
…..30秒は経っただろうか、定期的に少し口を離し呼吸の間を与え、また唇を重ねることを繰り返している。確実に暴走しかけている。
「ま、真….大丈….」
恐る恐る真を見ると、顔に熱を帯びていて目はとろけ涙を浮かべていた。
「ご、ごめん俺また暴走してっ…..大丈夫?!」
「げ、弦……も….終わり…?」
「ごめん本当にごめん、苦しかったよなもっとはやく終わらせるべきだった本当にごめん」
「違….気持ちいいから…もっと…」
…完全に、理性が負ける音がした。
「真、やっぱり家…戻ろう」
「?…?…..おう..」
「俺がキス以上のことしようとしたり、少しでも嫌だって思ったりしたら絶対跳ね除けて逃げて欲しい。約束。」
「わ、わかった….」
目をとろけさせ、頬を紅潮させたまま困惑する真の手を引き、やや早足で家へ戻った。
その間、俺たちに会話はなかったと思う。
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