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無能と捨てられた鑑定聖女実は世界で唯一の神竜使いでした隣国の冷徹皇帝に溺愛され元婚約者は破滅します
第5話 - 第5話:ロストリアの傲慢な“本物の聖女”と、神竜の忌まわしき過去
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2,285文字
2026年08月06日
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つかであきひろ
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エルザ:ガルディニア帝国の皇妃。大切な家族であるノヴァを侮辱され激怒する。ギルベルト:冷徹な皇帝。妻を「偽物の聖女」と呼ばれ、殺意を全開にする。ノヴァ:神竜。かつてロストリア聖帝国に裏切られた暗い過去を持つ。セレナ:ロストリア聖帝国の第一聖女。他人のものを奪うのが大好きな傲慢女。大理石の床に、重々しい靴音が響き渡る。ガルディニア帝国の謁見の間。そこに現れたのは、純白の聖衣に身を包んだ一団と、その中心で傲慢に顎を突き出す一人の美女だった。「初めまして、ガルディニア帝国皇帝陛下。私は大陸の光、ロストリア聖帝国の第一聖女セレナと申しますわ」セレナと名乗った女性は、形の良い唇を妖しく歪めて一礼した。その仕草は一見優雅に見えるけれど、瞳の奥にはギラギラとした醜い欲が透けて見えている。彼女の後ろには、仰々しい魔力の紋章が刻まれた、禍々しい鉄の檻が兵士たちによって引きずられていた。「挨拶はいい。ロストリアの聖女が、我が国に何の用だ」玉座に座るギル様の声は、いつも以上に低く冷酷だった。隣に立つ私を安心させるように、私の手をごつごつとした大きな手で強く握りしめてくれている。「ふふ、単刀直入に申し上げますわ。我が国に伝わる古文書によれば、そちらの令嬢――いえ、レムリア王国を滅ぼした『偽りの聖女』エルザが従えている漆黒のトカゲは、かつて世界を滅ぼしかけた『呪いの元凶・暗黒神竜』。そのような危険な存在を、一介の落ちこぼれ令嬢が持っているなど世界の危機ですわ」セレナは私を侮蔑の目で見下し、勝ち誇ったように胸を張った。「ですから、本物の聖女であるこの私が、その神竜を正しく封印してあげますわ。今すぐ我が聖帝国へ引き渡しなさい」【第一聖女・セレナ】状態:傲慢・神聖魔道具「神の鎖」を隠し持っている本心:『ふん、レムリアの無能聖女が偶然神竜を懐かせただけでしょう。私がその神竜を奪い取って従えれば、私が世界を統べる伝説の女帝になれるわ! 皇帝もいい男だし、ついでに私の奴隷にしてあげてもよろしくてよ?』(……またこのタイプか。本当に救いようがないクズね)私は冷ややかな視線をセレナへと向けた。私を「偽物」と呼び、挙句の果てにはギル様まで自分のものにしようと企んでいる。元婚約者のジュリアスやマリアと同類の、他人のものを奪うことしか頭にない強欲な人間だ。けれど、それ以上に私の胸を痛めたのは、私の足元で小さくなっているミニ竜のノヴァだった。ノヴァの小さな体が、怒りと屈辱で小刻みに震えている。私の『万物看破』のスキルが、ノヴァの胸の奥にある、深く黒い「過去の傷跡」を鮮明に捉えた。【暗黒神竜・ノヴァの記憶(バグ)】原因:数百年前、ロストリア聖帝国の先代聖女たちに「友達になろう」と騙され、魔力を吸い取る呪いの結界に閉じ込められた。人間を信じた結果、瀕死の呪毒を流し込まれて捨てられた、最悪の裏切りのトラウマ。(……そんなことが、あったんだね)ノヴァが人間に裏切られ、極度の人間不信になって森で死にかけていた理由。その全ての元凶が、目の前にいるロストリア聖帝国だったのだ。やっと私という居場所を見つけて、毎朝楽しそうにクッキーを食べていたノヴァの心を、この女はまた踏みにじろうとしている。『……チッ。相変わらず反吐が出るな、ロストリアの人間は。どいつもこいつも、神聖という言葉で飾っただけのただの強盗だ』ノヴァが脳内に直接、激しい怒りに満ちた声を響かせる。「断る。ノヴァはエルザの家族であり、我が国の守護神だ。他国に引き渡す理由など微塵もない。そして、我が妻を二度と『偽物』などと呼ぶな。その無礼、今この場で首を撥ねても文句は言えんぞ」ギル様から放たれた凄まじい殺気が、謁見の間を支配する。ロストリアの護衛の聖騎士たちが、その圧倒的な威圧感に一歩後ずさりした。しかし、セレナだけは怯むことなく、むしろ不敵な笑みを深くした。「あら、話し合いで解決できないのは残念ですわ。ならば――実力で行使するまでです!」セレナが聖衣の袖から、黄金に輝く一本の太い鎖を取り出した。古代の神聖な文字が刻まれたその鎖は、取り出された瞬間、部屋中の空気を捻じ曲げるほどの不気味な魔力を放ち始める。「出でよ、神の鎖! すべての魔を縛り、我が奴隷とする古の奇跡よ!」「なっ……!?」セレナが鎖を投げつけると、それは生き物のようにうねりながら猛スピードで宙を駆け、私の足元にいたノヴァへと襲いかかった。光の鎖が、ノヴァの小さな体に容赦なく巻き付いていく。「グルアァァァァッッ!!」ノヴァが聞いたこともないような悲痛な叫び声を上げた。鎖から放たれる禍々しい紫色の光が、ノヴァの体から強引に魔力を吸い上げ、その精神を汚染していくのが『鑑定』を通してリアルタイムで見える。「ノヴァ!!」私が叫び、助けようと一歩踏み出したその時、セレナは高らかに笑い声を上げた。「おーっほっほ! 無駄ですわ! これは神が作り出した絶対の支配具! 本物の聖女であるこの私が、今ここでその生意気なトカゲの主を『上書き』してあげますわ!」ノヴァの目に、かつて人間に裏切られた時の絶望の光が戻りかけていた。(ふざけないで。ノヴァは、私の家族よ……!)私の胸の奥で、今まで経験したことのないような激しい怒りの炎が燃え上がった。私の大切な人を、これ以上誰一人として傷つけさせはしない。「――私の前で、勝手な上書きなんてさせないわ」私はギル様の手をそっと離し、凄まじい聖魔力を全身から立ち昇らせながら、セレナの持つ「神の鎖」へと真っ直ぐに視線を定めた。