その結果、処刑開始から一時間も経たずに、百人以上いた敵は全滅し、最後の一人を残すのみになった。もちろん最後の一人は極星会会長の山鹿雄大。陛下は楽しみは最後まで取っておく主義だ。
陛下のゴスロリドレスが鮮血で赤く染まっている。雄大は恐怖で脱力したのか、両膝を床についた。いつの間にか陛下の手にフルーツナイフがない。
「陛下、ナイフは?」
「さっき骨をえぐっていたら刃が折れてしまった」
「………………………」
陛下がふたたび邪悪すぎる笑みを浮かべた。雄大の顔が恐怖で引きつっている。
「お、おまえ、いったい何者だ?」
「余か? ただのかわいい女子高生だよ」
当たり前だけど、ただの女子高生は笑いながら百人のヤクザ者を切り刻んだりしない。
「ただの女子高生が銃弾を跳ね返すわけあるか!」
「ただの女子高生じゃない。ただのかわいい女子高生だ。余は強さでも美しさでも誰にも負けぬ。このドレス、余によく似合うと思わないか?」
確かに、血染めのドレスが似合う女子高生は陛下だけだろう。
久々にスマホ画面の向こうの病室の様子を見ると、慎司と徹也の姿しかない。
「あとの三人は?」
「吐き気がすると言って泣きながら便所に……」
陛下による敵の処刑は普通の人間には刺激が強すぎたようだ。
「徹也たちと話してるのか? 余も話したい」
返り血を浴びて血まみれのドレスを着た陛下がスマホ画面が映り込むと、慎司と徹也の顔が緊張で引きつった。
「総長、おれたちのためにここまでしてくださってありがとうございます」
「たいしたことしてないから礼はいい。残りは会長の山鹿雄大だけだ。どうしてほしい? まだ誰も死んでないのが物足りないというなら、一人くらい殺しておくか?」
この人は人間の命など虫けらくらいにしか思っていない。徹也がそれを望めば躊躇なく殺すだろう。
「殺さないでください」
「なぜだ?」
「その人にも家族がいると思うので」
「なるほど。家族を皆殺しにしてこいつだけ生かして死ぬよりつらい目に遭わせようということか。それもいいな」
実際陛下はそれをセランティウス相手に実行したことがあるが、慎司と徹也はそのことを知らないから悪い冗談だと思ったようだ。
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