テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あんな奴らにあんなアイテムをこれ以上、使われたら……世界は終わりだ……。フェイスID解除のために咥えていたアイス(実はもらっていた)の棒を口から離す。まずは情報を集めなければ。それでもこれというものはない。どうやら今日を繰り返していることに気づいているのは私たちだけらしい。嵐の前の静けさのような?
「何の情報も吐かせずに倒すのもアレよね。まずは…」
「ふざけるな、この腹黒白髪《はらぐろしらが》」
「誰が腹黒白髪《しらが》よ!白髪《はくはつ》と言え!」
「腹黒白髪ってそれ黒いんか、白いんかハッキリせんかーい…いや、…」
「2人ともやめて!争ったって何にもならないよ!」
磨輝が突っ込もうとすると聞き覚えのある声が聞こえた。男性だ。年は美六華さんと同じくらいだろうか…。
「久しぶりだね。幸呼奈ちゃん。陶瑚ちゃん」
久しぶりとは…?しばらく記憶を辿っているとズキューンと撃ち抜かれたように記憶が戻る。思い出した。ああそうだ、この人は歳は3つ離れてるけど芸能界の同期の赤城雪翔さん!美六華さんがずっと言っていたこの事件を一緒に捜査している「友達」だ。そして…陶瑚の推し。
「…」
「自分で言えよ…あー…また会えて嬉しいって言ってます」
「陶瑚ちゃん…相変わらず…」
普段はミステリアス(自称)な陶瑚も推しの前ではこれだ。愛は人をポンポンコツコツにする。話を元に戻し、今のところ敵が何を企んでいるのかよく分からないのでひとまず情報を集めるために3手に分かれて街を見回ってみることに。ひとまず私と磨輝と美六華さん、お姉と渚冬兄と雪翔さん、茉津李兄と陶瑚で分かれた。探すといっても、相手はただの人間ではないから骨が折れる。 2人と街を見回ってみるが… 逆に図られていたのだろうか。 もぬけの殻だ。まるで田舎で土日に出勤している時の道だ。沈黙に耐えられなくなったのか磨輝が口を開く。
「最初に言っておきましょう。 僕の異能力は戦闘向きではないので、期待されると困ります!敵とエンカウントしたら終わる!」
「そりゃないって!」
「マッジでごめんなさい!」
私も…戦闘向き、なのだろうか…分かりやすくバクバクになって心臓の鼓動を感じながら気づけば家の近くまで来ていた。どのくらい歩いたのか考えていなかったが、かなり歩いていたらしい。確か敵とあったのもここだった…。まさか。と思いながら家の周りを探す。見つけた。見覚えのある背中。フード。アイツだ。
「ねえ貴方。昨日もいたよね?っていうか今日を繰り返してるのに昨日って何?」
ゆるりと振り返ってきた。顔は隠れているが、男性だ。背丈から察するに歳は私の3 つくらい上だろうか。
「お前そいつの仲間か?」
何か鋭利な武器を取り出してきた。こいつは他に何を持っている?美六華さんが私の手を引いてかわしてくれた。少しかすったが。
「このままじゃ大変だ」
「あーもう。こうなる気がしてたよ!」
磨輝が幻のように姿を消す。敵がいきなり何もないところで膝から崩れ落ちた。再び風のように颯爽と姿を現す磨輝。
「ばあ」
「…!身体操作系の能力!」
「僕の異能力!好きな姿に変身できる!」
磨輝は変身の異能力者だ。さっきのように透明になれるのは応用編のようなもの。再び敵が武器を取り出そうとするが、武器から謎の爆発が起きて皆で吹っ飛んでしまう。何とか敵から離れると後ろから足音が。渚冬兄たちだ。助けにきてくれたのだ。
「出した音を攻撃に使えるのが俺の異能力だ」
渚冬兄の異能力だったのか。何とか助かった。敵は不服そうだが。
「おいそこの白髪《しらが》!この辺の不良どもから銀夜叉と恐れられている文月陶瑚か!」
「白髪《しらが》…?白髪《しらが》じゃない!白髪《はくはつ》!」
陶瑚、白髪のイメージしかないのか…あれ?敵は陶瑚のことを知っている?
「こんなの何に使うの?」
「ちょっと挨拶してこよ」
「悪党から世界を守りにきた」
ああそうだ。美六華さん。私のために怪我をさせてしまった。
「さっきはありがとうございました。手出してください」
「?」
よし。少しずつ傷が治っていく。
「言っただろ?私の異能力は言霊で対象に状態異常を与える。状態異常《ペナルティ》を受けている対象に状態異常《マイナスエネルギー》を与えることで正の状態を作り出す」
マイナス×マイナス=プラス理論、これにて…完成!左中指で目と目の間を押す。見えないメガネがあるようだ。何としても奴を止めなければ。事情を聞くためにも。
「自己中な理由で他者の大切なものを奪うことは許されないわ!」
「大体!人を傷つけて得たもので幸せになんてなれないよ!誰かの不幸の上に自分の幸せを築こうとすれば、自分に降りかかってくる!」
「ここは私たちに任せてアイツを追いかけて!」
「早く行け!」
「さあ…次会ったらもうひと暴れするか」