テラーノベル
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⚠戦争描写あり(第二次世界大戦)⚠
この作品には参戦の意味は一切ございません。
理解した上でお読みください。
桜の花びらがちらちらと舞う。
国民の悲鳴と共に。
ふわふわと空中に浮かんでいる薄っぺらい花びらは、黒く染まっていた。
「パラオ、逃げろ」
自分より何センチも小さくて弱々しい背中をそっと押した。手のひらには背骨のかたい感覚がよくわかった。
「でもナイチは?」
「俺は大丈夫だ。国民を避難させるからパラオは先に防空壕へ行け」
ちいさく頷いて、パラオは走り出した。
俺は踵を返して、轟音が鳴り響く方へと急いだ。
ほぼ全員の生存者を避難所へと導き、俺はパラオと共に、暗く湿った防空壕の中で数分過ごした。
「むぅかし、むかし、そのむかし」
「しいのきばやしの、すぐそばに〜」
パラオは歌を歌って退屈をしのいでいた。
「パラオはその歌が好きだな」
「うん!大好きだよ!だってこれ、みんなで仲良くする歌でしょ?」
俺は一瞬固まったが、
「そうだな」
とすぐに笑顔で返した。
「すまないパラオ、今から会議に行ってくる」
「そっか、ナイチえらい人だもんね!がんばってね!」
俺はパラオの頭を撫でて、防空壕を出た。
絶対にこの戦争に勝てなくては。
「遅いぞ日帝、お前が遅刻なんて珍しいな」
「先輩、すみません。国民の避難があったもので」
「それなら仕方ないんね!さっそく会議を始めるんねー!」
「ソ連とアメリカが核を作っている。だから〜」
「ioはもう戦えないんね」
「米国は私がやります。なので〜」
無事会議は終わったが、まだまだやることがある。
武器を作って
軍の訓練をして
物資を奪い取って…
全てはこの戦争に勝つため。
この戦争に勝たなければ国は滅びる。
全てはこの国と国民のため。
勝つためならなんだってしてやる。
なんだって…
「ナイチ、散歩いこうよ!僕おだんご食べたい!」
「団子か。いいぞ」
「やったあ!行こナイチ!」
町を歩くと、道行く国民全員が俺に向かってお辞儀をした。
中には
『御国様、私たち国民を守ってくださりありがとうございます。』
『御国のために戦ってくださる御姿、とても素敵でございました。ありがとうございます。』
『私、御国の為に軍に入りました!お強い御国様を尊敬しております!』
と、話かけてくれる国民もいた。
「ナイチすごい!みんなナイチのことが大好きなんだね!」
パラオも尊敬の眼差しで俺を見てくれた。
俺はパラオの頭を撫でて、甘味処と書かれた看板の店へと入った。
注文を済ませ、パラオは三色団子とみたらし団子を両手に、外にある縁台へと座った。
むぅかし、むかし そのむかし
しいのきばやしの、すぐそばに〜
ちいさなお山が、あったとさ、あったとさ
まるまるぼうずの、はげやまは〜
いつでも、みんなの、わらいもの〜
これこれ、すぎのこ、おきなさい
おひさまにこにこ、こえかけた、こえかけた
俺は心が痛くなった。
パラオは俺に微笑みかけ、頭を撫でられるのを待っている様子だった。
こんな平和な日々が、いつまでも続くといいな。
とある夏の暑い日、米軍が国内へと襲来してきたという知らせが入った。
やかましく蝉が鳴き、耳が痛くなる。
気温のせいで汗をかき、蒸し暑くて頭が痛くなる。
軍服はいつ何時でも脱げない。
御国を守る為に。
国民の悲鳴が鳴り響く。
病院や治療所はもちろん、避難所にまで怪我をした軍人や国民が溢れかえっていた。
御国の為にと訓練していた軍人は米軍の船へと特攻し、残った国民は強制的に軍に関わる仕事へと就かせた。
まだ14にも満たない少女にも武器を作らせ、治療させ、軍人の世話をさせた。
白米は全て軍人へ。国民には少量のさつま芋、少し傷んだ野菜などや穀物しかやらなかった。
軍を強化せねば。
全国民を守る為に。
この国を守る為に。
いつの間にか俺は、話しかけられるどころか、嫌な目で見られるようになった。
怖がられ、恨まれ、憎まれ…
勝つためにはそうしなければならなかった。
勝てればそんなものどうでもいい。
それに……
「ナイチ、また散歩いこうね!ぜったいだよ!」
俺にはパラオがいる。
唯一の俺の癒しだ。
そして、
唯一の俺の、仲間だ。
「よーお日帝chan、元気してた?♡」
「黙れクソ野郎。」
雨が続いたとある日、俺は敵国である米国と出くわしてしまった。
「HAHAHA!!おチビちゃんの癖して口だけは達者なんだから〜」
黙れ。
黙れ黙れ黙れ
うるさいうるさいうるさい!!
「………死ね」
「…は?」
さっきよりも明らかに低いトーン。
笑顔は消えて、残ったのは殺気だけだった。
「いいぜ、殺してみりゃいい」
「本気で行くぞ」
「本気でもどうせ勝てねぇだろ」
………。
しばらく沈黙が続き、米国は俺に銃口を向けた。
俺は刀を鞘から抜き、憎たらしい”そいつ”を睨む。
何回も何回も頭に炸裂音が響いた。
何回も何回も耳に金属音が響いた。
国の為に、勝たなくては。
必ず。
米国は俺を見下ろした。
「もうボロボロじゃん、どーする、降参する?」
「……する訳、無いだろう………。」
米国の表情が変わった。
呆れたような顔。
米国も相当疲れてるはずなのに、どうしても体格差が邪魔をする。
米国は一発、俺の腹に銃弾を放った。
「ぐあぁッ…!!」
その場に倒れ込んだ俺を見て、米国はなにかを拾ってどこかへと去っていった。
俺は米国に負けた。
俺はパラオの顔を思い浮かべた。
国民が俺を嫌っても、唯一ずっと慕ってくれていた。
視界が曇ってゆく。
頬に、ぬるいものがつたう。
傷口に冷たい雨が当たって、全身が痛くなる。
瞬きする余裕もない。瞼が重く、力が入らない。
ごめんな、パラオ。
俺は息をゆっくり吸った。
「むぅかし、むかし、その、むかし……」
「椎の木…林の…すぐ、そばに……」
パラオ、お前が好きで歌っていた歌は、本当は戦争の歌なんだ。
仲良くする歌なんかじゃない。
ごめんな
「大きく…なって…国の、ため……」
「お役に、たって…みせまする……」
俺は眠りについた。
穏やかな、深い深い眠りに。
戦争は終わり、年号が平成へと変わった時、僕はナイチとの写真を眺めていた。
「ナイチ、ごめんね。」
僕はナイチと離れてから、国に引きこもっていた。
「僕、嘘ついちゃってたの。」
古い古い、昔の写真。
「ほんとはね、仲良くする歌じゃないって知ってたの。」
「兵隊さんの歌だって、知ってたの」
頬があったかくて、くすぐったい。
写真を持ってる手に、水滴が落ちた。
「それを歌うと、ナイチが撫でてくれるから、好きだったの。ごめんなさい…」
頭に、懐かしい感覚がした。
「……ナイチ…じゃない」
そこにはアメリカさんが立っていた。
「Hey!パラオ、だっけか?日帝chenのオトモダチの」
懐かしいと感じた感覚が、急に嫌な感覚へと変わった。反射的に一歩後ろへ下がる。
「やめて、僕はナイチに撫でて欲しいの。僕はナイチしか嫌だ。」
「oh,すまんすまん。実は渡したいもんがあんだよ」
そう言ってアメリカさんは、僕にある物を手渡してきた。
「じゃーん!日帝chenの刀!」
「………ふざけないで」
アメリカさんを睨むと、急に穏やかな表情になって
「多分、日帝chenはキミに持っといて欲しいと思うからさ。」
「すまん、いつ渡せばいいか分かんなくて」
「ううん、ありがとう、アメリカさん」
そう微笑むと、遠くから声が聞こえた。
「アメリカさん!会議遅れちゃいますよ!」
そう言って走って来たのは……
「ナイチ!?!?」
「ないち…?あぁ、お父さんのお友達ですか!」
にこやかに話すこの人には、どこかナイチの面影があった。
白い肌、他の国よりも小さめな身長、でも、ナイチよりも健康的で愛想がよかった。
「ちょっと待って、僕国民に任せて政治ほったらかしちゃってて、知らなかった……」
衝撃を受けていると、静かに微笑んで
「パラオくんの国とは、仲良くして貰ってますよ」
と言った。
ナイチ、僕がんばるよ!
だってナイチと血のつながったお兄さんを見つけたから、ナイチにそのお兄さんと仲良くできてるところを見せたいから!
まっててねナイチ!
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