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絶対辰哉
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junp_Sn-Fk.
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#あべさく
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
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七月の終わり。
駅前の歩道は昼間の熱をまだ抱えたままで、アスファルトから立ち上る空気が景色をゆらゆらと歪めていた。
蝉はとうに鳴き疲れたはずなのに、それでも声を張り上げ続けている。夕焼けはまだ完全には沈まず、空の西側だけが橙色に燃えていた。
俺と辰哉は、自販機の前で缶ジュースを選んでいた。
💜「またブラック?」
💛「甘いの飲むと喉渇く」
💜「意味わかんねえ」
笑いながら辰哉は炭酸を取り出した。
プシュッという軽い音。
細かな泡が夕日に透けて、小さな星みたいに弾ける。
その横顔を見るたび、不思議だった。
昔からずっと隣にいた。
小学校で初めて話した日のことも、部活をさぼって怒られた日も、夜中に電話して朝までゲームしたことも、全部昨日みたいに思い出せる。
なのに。
最近になって、その全部が少しずつ形を変え始めていた。
親友という言葉では収まりきらない何かが胸の奥で息を潜めている。
言えば壊れる。
言わなければ苦しい。
どちらを選んでも失う気がして、俺は何も選ばないまま今日まで来てしまった。
💜「何ぼーっとしてんの」
💛「……いや」
💜「疲れてる?」
💛「まあ」
嘘だった。
疲れてなんかいない。
ただ、お前の声を聞いていると安心してしまう。
その安心が怖かった。
人は、失うと分かっているものほど大切にしてしまう。
そんなこと、この時の俺はまだ知らなかった。
歩道橋を渡る。
川沿いを歩く。
風が少しだけ湿っていた。
遠くで野球部の掛け声が聞こえる。
犬を散歩させる老人。
自転車を押す親子。
どこにでもある夏の夕方。
世界はあまりにも穏やかだった。
💜「今度さ」
💛「ん?」
💜「海行こうぜ」
💛「暑い」
💜「じゃあ夜」
💛「蚊いる」
💜「文句しか言わねえ」
辰哉が腹を抱えて笑う。
俺もつられて笑う。
その笑顔を見ているだけで十分だった。
十分だったはずなのに。
もっと見たいと思ってしまう。
明日も。
来週も。
来年も。
そんな当たり前を疑ったことなんて、一度もなかった。
別れ際。
💜「じゃ、また明日」
💛「またな」
辰哉は軽く手を振った。
俺も振り返す。
それだけだった。
それだけのはずだった。
交差点。
信号は青。
夏休みだからか、人通りは少ない。
遠くで大型トラックが曲がってくる。
キキーッ
誰かのブレーキ音。
金属が軋む音。
一瞬だけ世界から色が消えた。
耳鳴り。
誰かの悲鳴。
何が起きたのか理解するより早く、俺は走っていた。
💛「奏!」
人だかり。
赤色灯。
道路に散らばるガラス片。
誰かの落とした炭酸飲料が、アスファルトの隙間へ透明な泡を流し込んでいる。
その甘い匂いだけが妙に鮮明だった。
人を押しのける。
足がもつれる。
膝をつく。
その先に。
辰哉がいた。
目を閉じたまま。
夏の空だけが、何事もなかったように青かった。
救急車のサイレンは近づいてくるのに、俺の世界だけは静まり返っていた。
心臓が鳴らない。
呼吸も浅い。
時間だけが止まったようだった。
誰かが肩に触れた。
振り払った。
意味なんてなかった。
ただ、誰にも邪魔されたくなかった。
何か言われた気がする。
聞こえなかった。
いや、聞きたくなかった。
辰哉は動かない。
さっきまで笑っていた顔が、まるで遠い知らない誰かになってしまった。
こんなのは違う。
さっき別れたばかりだ。
また明日って言った。
約束した。
まだ海にも行ってない。
何一つ終わってない。
終わるはずがない。
そう思った瞬間だった。
視界がぐにゃりと歪む。
サイレンが遠ざかる。
空が砕けるようにひび割れ、夕焼けが逆流する。
世界が音もなく裏返った。
そして俺は、自分の部屋で目を覚ました。
机の上のカレンダー。
赤い丸で囲まれた予定。
三日前の日付だった。
コメント
1件
読了しました。夏の夕暮れの空気感から、日常が一瞬で崩れ去るシーンへの移行がとても鮮烈でした。特に「親友という言葉では収まりきらない何か」という一文に、主人公の胸の内が凝縮されていて、ぐっときました。炭酸飲料の泡が夕日に透ける描写と、最後にアスファルトに流れていく透明な泡の対比が、失われた日常の象徴のようで切ないです。時間が三日前に戻るラスト、このループ構造がどう物語に絡んでくるのか、続きが気になります。