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『ねえねえ、黄君、だよね?』
何時もより早く着き、黄が来た途端に黄に近付くと困惑した声が。
「え…ぁ、はい…そうですけど。
急に話しかけてくるなんて、どうかしたんですか?青くん。」
僕が来たと知ると、黄は読んでいた江戸川乱歩の小説を閉じた。
パタリ、と音を立てながら、丁寧に閉じられた小説は端の破れや汚れ色ひとつ無く、綺麗なまま。
『じっ、実はさ!
黄くんが何時も読んでる小説、僕も好きなんだ!だから話しかけたかったんだけど中々出来なくて…』
そう云うと煌めいた顔に一変させた黄。此奴が小説好きなのは、すでに判り切っている事だった。
「ほ、本当ですか!?
ボッ、ボクも小説好きなんです!!今日、図書室行きませんか?」
簡単に釣られたサカナ。
そのサカナは大物を釣るための良い餌でしか無いのに、何故此奴は
こんなにも僕に期待する?
意味が判らなかった
でもそれで善い
「___…勿論!」
欲しいサカナ以外はどうでも善いんだから、別にどうでも。
「嗚呼、そこで坂口が……!」
『そう!
村川のことを刺して、それからあの台詞を吐くんだよ!!』
適当に、ネットで拾った情報をそれらしく吐いているだけなのに
此奴は熱狂し続けてる
『あの黄君がこんなオタクだとは思ってなかったなぁ~。』
そう云うと恥じている様子の黄。
「い、嫌々…
ボクもこんなにオタクになるなんて昔のボクは考えもしなかったでしょうね…でも愉しいですよ。
“桃君“が居るし。」
ロクに機能していない司書も居ない酷く静かな図書室に僕達の声だけが聞こえている。そんな時、桃というキーワードにピクリと反応した。
『桃君…ね、
そんな愉しい?桃君と居るの』
『君』なんて付けたくはないけど
今の今迄作り続けていた僕の仮面をバキリと壊してしまうから
それは辞めた。
「愉しいですよ!
ブラックジョークが過ぎる時も在りますけど、そこがあっての桃君ですから。それに____…」
『あ“~もうこの話やめ!
もう惚気話で胃もたれしそうだね!だからもう辞めて~~!』
本当は、桃の話を聞きたくないからだけど、別に善いだろう。
「の、惚気てなんて無いです!
話続けますよ!」
僕に役立ったら殺してあげよっと。
そう考え乍、『そうだね』と中身のない乾いた返事を黄君に返した。