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格安生姜
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放送翌日。
番組制作会社の会議室には、いつもとは違う光景が広がっていた。
パソコンの画面には、番組公式SNSの通知が次々と表示されている。
メールボックスには視聴者からの感想が大量に届き、番組公式アカウントのフォロワー数は放送前から信じられないほど増加。
さらに、番組の見逃し配信は公開直後から再生数が伸び続け、リアルタイムの視聴率も番組スタッフの予想を大幅に上回る結果となっていた。
その原因は、言うまでもない。
佐野勇斗の一日密着。
そして、なぜか朝から晩まで映り続けた吉田仁人。
黒「……坂田さん」
坂「はい」
黒「これ、全部読まなきゃいけないんですか?」
坂「全部読んでください。僕たちが始めた企画です」
黒「僕たちが始めたのは密着取材です。恋愛相談窓口ではありません」
坂「もう遅いです」
黒「ですよね……」
机の上には、視聴者から寄せられたコメントを印刷した大量の紙。
二人は深いため息をつきながら、カメラの前に座った。
黒「ということで! 先日放送された佐野勇斗さんの一日密着企画が、皆様のおかげで大変な反響をいただきました!」
坂「ありがとうございます! 想像をはるかに超える数の感想やコメントが届いておりますので、今回は僕たち黒田と坂田で、いくつかご紹介していきたいと思います」
黒「ちなみに、今回のコメントはすべて昨日届いた物です!」
坂「では早速、一つ目からいきましょう!」
黒「最初はこちらです!佐野勇斗の密着、へーイケメンな人だなと思って見始めたのに、気づいたら吉田仁人の彼氏が家にいる映像を見せられていた』」
坂「っははははは!!」
黒「いや、分かる!!」
坂「分かるんですか!?」
黒「いや、僕も撮影中に何度か思いましたよ! これ、誰の密着だっけ? って!」
坂「僕なんて、朝の時点で一回確認しましたからね。今日、佐野さんの密着ですよね? って」
坂「お二人の場合、吉田さんがいるのが当たり前すぎて、佐野さんの一日が吉田さんの存在を前提に進んでいくんですよね」
黒「しかも視聴者さん、続けてこう書いてます」
黒「『開始10分で理解した。この番組、最後まで見ても答えは出ない』」
坂「鋭いなあ!!」
黒「本当にその通りでしたね」
坂「いや、僕たちだって答えを出したかったんですよ! でも、本人たちが『友達です』って言うんですから!」
黒「言うだけなら誰でもできますからね!?」
坂「スタッフ側からすると、言葉より映像の情報量が多すぎるんですよ!」
黒「それは本当にそう」
坂「続いてはこちらです!」
坂「『佐野勇斗さん、吉田仁人さんが何か言う前に全部やってあげるの何??? 吉田さん専属の彼氏なの???』」
黒「出たーーーー!!」
坂「これはもう、たくさんいただきましたね!」
黒「実際もう慣れすぎてもうツッコミもしない場面もあった凄いあったんですけど笑笑」
坂「本当ね、凄かったんだから笑」
黒「視聴者の皆さん、よく見ていらっしゃるんですよ。例えば、吉田さんがちょっと疲れてそうなとき」
坂「佐野さん、すぐ気づくんですよね」
黒「そう。別に吉田さんが『疲れた』って言ったわけでもないのに、座る場所を空けたり、クッションを渡したり、飲み物を取ってきたり」
坂「しかも、それを『俺、今すごく気を遣ってます!』みたいな顔でやらないんですよ」
黒「そうなんです!! ごく自然にやるんです!!」
坂「僕、撮影中に一番驚いたのはそこでした。佐野さんって普段はものすごく元気じゃないですか」
黒「元気ですね。声も大きいですし」
坂「なのに吉田さんが相手だと、時々すごく落ち着いてるんですよ」
黒「分かります。吉田さんが何かしていると、騒いでいてもちゃんと様子を見てるんですよね」
坂「で、視聴者さんからのコメントがこちらです」
坂「『佐野勇斗、普段は大型犬なのに吉田仁人の前だと急に頼れる男になるの何??? その切り替えどこで習った???』」
黒「いや本当に!!」
坂「しかも佐野さん、吉田さんに『大好き!』って言うじゃないですか」
黒「言いますね」
坂「吉田さんが『うるさい!』って返すじゃないですか」
黒「はい」
坂「それで佐野さん、全く傷つかないんですよ」
黒「むしろ嬉しそうなんですよね」
坂「そう!! 吉田さんに構ってもらえたことが嬉しいんですよ!!」
黒「視聴者さん、さらにこう書いてます」
黒「『佐野勇斗、吉田仁人に拒否されているように見えて、実際は吉田仁人との会話を一番楽しんでいる男』」
坂「的確すぎる!!」
黒「佐野さん、吉田さんに何を言われても基本的に楽しそうでしたからね」
坂「それでいて、吉田さんが本当に困っているときはふざけないんですよ」
黒「……そうなんですよね」
一瞬、二人の声が落ち着いた。
坂「だからこそ、視聴者の皆さんも気になったんでしょうね。普段はあんなに騒がしいのに、吉田さんのことをよく見ているんです」
黒「まあ、本人に聞いたら絶対『友達だから』って言うんでしょうけど」
坂「でしょうね」
黒「……便利な言葉だなあ、友達って」
坂「黒田さん、言っちゃいましたね」
黒「次はこちら!」
黒「『吉田仁人さん、佐野勇斗さんにだけ対応が違いすぎませんか???』」
坂「これも多かったですね!」
黒「吉田さんって、佐野さんに対してツッコミが鋭いじゃないですか」
坂「はい。でも、よく見ると佐野さんのお世話もしてるんですよね」
黒「そうなんですよ! ご飯のときも、佐野さんが野菜を残そうとしたら注意するし、食べる量も分かっているし」
坂「佐野さんが何を好きなのか、何を苦手にしているのか、よく把握している感じでした」
黒「しかも佐野さんが『仁人が作ったご飯、大好き!』って言ったら、吉田さんは『はいはい』って流すんですけど」
坂「ちゃんと佐野さんのお皿を気にしてるんですよ」
黒「もう一回言いますよ? ちゃんと佐野さんのお皿を気にしてるんですよ!」
坂「二回言わなくても分かります!」
黒「いや、視聴者の皆さんに伝えたくて!」
坂「では、コメントを読みます」
坂「『吉田仁人、佐野勇斗に対してだけお母さんと彼女と親友を一人で兼任してる』」
黒「役職多すぎる!!」
坂「しかも全部無給です」
黒「やめなさい!!」
坂「こちらもあります。『吉田さん、佐野さんに甘いのを隠すために毎回ツッコミを入れてる説』」
黒「……ああ」
坂「黒田さん?」
黒「いや、ちょっと思い当たる節がありまして」
坂「ありますか?」
黒「そういえばあれ?これカットしたっけな?佐野さんが吉田さんに『俺のこと好き?』って聞いた場面、覚えてます?」
坂「覚えてます。吉田さんが『友達としてはな』って答えたところですね」
黒「そのとき、佐野さんがめちゃくちゃ嬉しそうに笑ったんですよ」
坂「はい」
黒「吉田さんも、佐野さんの頭を軽く叩きながら、結局そのまま隣にいたんですよね」
坂「……いましたね」
黒「いや、そこは離れないんだ!? って思いませんでした?」
坂「思いましたよ!!」
黒「ですよね!?」
坂「でも吉田さんからしたら、いつものことなんでしょうね」
黒「それが一番怖いんですよ!!」
黒「続いて!」
坂「『待って。眠くなった吉田仁人が佐野勇斗の肩にもたれた瞬間、画面の温度が変わった』」
黒「分かる」
坂「即答ですね!?」
黒「いや、あの場面はね……撮影しているこっちまで静かになりましたから」
坂「吉田さんが眠そうになってから、佐野さんの声がちょっと優しくなったんですよね」
黒「そう。普段は『仁人ー!』って大声で呼んでいるのに、眠そうな吉田さんには、起こさないように話しかけていたんです」
坂「それで毛布を掛けて、体勢を調整して、寒くないか確認して」
黒「吉田さんが『動くな』って言ったら、ちゃんと動かないんですよ」
坂「しかも、あの佐野さんがですよ?」
黒「普段、あんなに動き回ってる佐野さんがですよ!?」
坂「二人で声をそろえなくても大丈夫です」
黒「いや、強調したくて!」
坂「視聴者さんからはこちらです」
坂「『佐野勇斗、吉田仁人が眠くなってからの行動があまりにも自然すぎて、普段からこうしてるんじゃないかと疑ってしまう』」
黒「……分かります」
坂「『友達を抱きしめてって頼まれて、あんなに嬉しそうに抱きしめる人います?』」
黒「いますかね?」
坂「少なくとも、僕はあまり見たことないです」
黒「僕もないです」
坂「さらにこちら」
坂「『吉田仁人、眠いときだけ素直になるのずるいし、それを全部受け止める佐野勇斗がもっとずるい』」
黒「うわあ、これ、すごいな」
坂「分かります?」
黒「分かります。吉田さんって普段はツンツンしてるじゃないですか。でも眠いときは佐野さんに素直に甘えて、佐野さんはそれを茶化さずに受け止めるんですよね」
坂「そうなんです。普段から佐野さんは吉田さんを気遣っているんですけど、夜はそれがさらに分かりやすく出ていました」
黒「……あれを見て『友達です』と言われても、視聴者さんが混乱するのは仕方ないと思います」
坂「スタッフも混乱してますからね」
黒「それはそう」
⑤ 最大の問題発言「友達として」
黒「そして、今回一番多かったと言っても過言ではないコメントです」
坂「こちらですね」
黒「『何かあるたびに「友達として」って付け足すのやめてもらっていいですか???』」
坂「ははははは!!」
黒「いや、本当に!!」
坂「佐野さんが『大好き』って言って、吉田さんが『友達としてはな』って返して」
黒「佐野さんも『友達として大好き!』って返すんですよ!」
坂「なぜそこだけ息がぴったりなんですか?」
黒「普段の会話は吉田さんがツッコんで、佐野さんが騒いでるのに、そこだけ二人とも妙に堂々としてるんですよね」
坂「しかも本人たち、嘘をついているようには見えないんです」
黒「そうなんです! ここが本当に不思議で!」
坂「僕たちが『本当に付き合ってないんですか?』って聞いても、二人とも普通に『友達ですけど?』って答えるんですよ」
黒「疑う余地もないくらい自然に」
坂「だからこそ、余計に分からない」
黒「視聴者さんからも、こんなコメントが来ています」
黒「『本人たちが一番「友達」の定義を間違えている可能性がある』」
坂「これ、僕も思いました」
黒「えっ、坂田さんも!?」
坂「だって、佐野さんにとっては吉田さんを甘やかすのも、吉田さんが隣にいるのも、吉田さんのために行動するのも、全部普通なんでしょう?」
黒「はい」
坂「吉田さんにとっても、佐野さんにご飯を作るのも、世話を焼くのも、佐野さんに甘えるのも、全部普通なんでしょう?」
黒「……はい」
坂「じゃあ、僕たちが何を言っても、二人の中では『仲のいい友達』で終わるんですよ」
黒「……あれ?」
坂「はい?」
黒「これ、もしかして僕たちが間違ってるんですか?」
坂「いや、それはないです」
黒「即答!?」
坂「だって、あれは……」
黒「はい」
坂「……いや、友達なんでしょうね」
黒「急に諦めないでくださいよ!!」
坂「最後に、こちらのコメントをご紹介します」
坂「『塩﨑さん、山中さん、曽野さんが二人の距離感に全然驚いてないのが一番おもしろい』」
黒「これは僕も思いました!」
坂「そうなんですよ。三人とも、佐野さんと吉田さんが隣同士に座っていても、佐野さんが吉田さんに甘えていても、ほとんど驚かないんです」
黒「むしろ、いつものこととしてツッコんでいましたよね」
坂「塩﨑さんと曽野さんなんて、二人をからかうことを楽しんでいましたし」
黒「山中さんは比較的落ち着いていましたけど、二人の距離感を特別なことだと思っていない感じでしたね」
坂「視聴者さんからは『周りの三人が通常運転すぎて、こっちがおかしいのかと思った』というコメントも来ています」
黒「分かる……」
坂「あと、こんなものもあります」
坂「『本当3人に聞きたい。あなたたちにとって佐野勇斗と吉田仁人は本当に友達ですか?』」
黒「これはぜひ聞いてみたいですね」
坂「番組として、追加取材を検討してもいいかもしれません」
黒「いや、でも三人に聞いたら絶対面白がって答えるでしょうね」
坂「塩﨑さんと曽野さんは、絶対に一回は余計なことを言うと思います」
黒「山中さんは笑いながら、さらっと核心を突いてきそうです」
坂「……次の企画、決まりましたね」
黒「勝手に決めないでください!」
坂「『3人に聞く! 佐野勇斗と吉田仁人は本当に友達なのか!?』」
黒「タイトルがもう失礼なんですよ!!」
坂「でも視聴率、取れそうじゃないですか?」
黒「……それは、そう」
そして、本人たちからまさかの反応が
コメント紹介の収録が終わりかけた、そのとき。
黒田のスマートフォンが震えた。
黒「……あ」
坂「どうしました?」
黒「佐野さんから連絡です」
坂「えっ!? 何て?」
黒田は画面を確認し、ゆっくりと読み上げた。
黒「『昨日の番組、めっちゃ反響あったみたいですね! 仁人と一緒に見ました! 俺ら普通に友達なのに、みんな面白いですね笑』」
坂「…………」
黒「…………」
坂「……一緒に見たんですか?」
黒「そこからですか!?」
坂「いや、だって! 放送を二人で見たんですか!?」
黒「そこに食いつくんだ!?」
坂「ちなみに吉田さんからは何か来てないんですか?」
黒「……あ、来ました」
坂「えっ!?」
黒「『お疲れさまでした。お二人のツッコミ、面白かったです。勇斗は隣でずっと笑ってました』」
坂「…………」
黒「…………」
坂「隣で」
黒「はい」
坂「ずっと」
黒「はい」
坂「笑ってた」
黒「はい」
坂「……もういいです」
黒「諦めないでくださいよ!!」
坂田は椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げた。
坂「視聴者の皆さん」
黒「はい」
坂「僕たちは、あの日一日、二人を撮影しました」
黒「はい」
坂「そして昨日、放送しました」
黒「はい」
坂「視聴率はすごかったです。コメントも大量に届きました」
黒「本当にありがとうございます」
坂「でも、結局何も分かりませんでした」
黒「……そうですね」
坂「佐野勇斗さんと吉田仁人さんは、本当に友達なのか」
黒「本人たちは友達だと言っています」
坂「では、最後にもう一度だけ確認しましょう」
黒「はい」
坂「……お二人は、本当に恋人ではないんですよね?」
黒田のスマートフォンに、佐野からすぐに返信が届いた。
『はい! 友達です!! 仁人は俺の大事な友達です!』
その数秒後、吉田からも返信が来た。
『友達です。何回聞くんですか笑』
黒田と坂田は、顔を見合わせた。
黒「……これ、次の密着取材もやるしかないですね」
坂「ですね」
黒「次は二人に、友達とは何かを説明してもらいましょう」
坂「説明できますかね?」
黒「……できない気がします」
坂「僕もです」
二人はそっとパソコンを閉じた。
その画面には、番組公式SNSに届いた新しいコメントが表示されていた。
「次回、二人が一緒に旅行するだけの回をお願いします。もちろん友達として。」
黒「……旅行?」
坂「……友達として?」
黒「……」
坂「……」
黒「次回の企画会議、始めましょうか」
坂「はい」
こうして、視聴者の皆様の熱い要望により、佐野勇斗と吉田仁人の「友達としての一日」は、まだまだ続いていくことになった。
――なお、スタッフは今も二人の関係性を理解できていない。
お久しぶりです、なゆです!ひとまず完結でございます!みなさん読んでいただき本当にありがとうございました😭😭後日談的なのも書いてみたんですけどどうでしたか??ちなみになんですけどこの物語の続編とかって需要あります?一応次の企画考えているんですけど、どうしようかなって思ってて、
①また同じ取材班がたまたま別の局の取材で来る!
②youtuberデビューしちゃう!
③逃◯中とか出てみる!
この3つが候補に上がってて、①と③合体出来るっちゃ出来るなって思ったり、
なんなら全部合体出来るかこれ?
とりあえずこんな感じで(?)考え中なのでいい案があれば是非コメントまでよろしくお願い致します🙇♀️🙇♀️
コメント
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コメント失礼します。 凄く面白かったです!テンポ感が良いし、取材班の心の声(←口から出てる)は分かりみが深い! "友達って便利な言葉"には吹き出しました。この2人に関してはほんとそれ。笑 "友達"の定義が変わるのか、続きも楽しみにしてます
1が見て見たいです!