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五人パーティーの小人族は外見を見る限り、単なるドワーフのように見える。そのせいか、おれは思わずルティを見てしまう。
「な、なんでしょう?」
「……気にするな」
「えぇ~?」
ルティの場合は人とドワーフとの間に生まれたハーフドワーフ。
赤毛の色濃い少女だが、魔法が使えない。それなのに目の前に並んでいる小人族の子らはおれに対し、どうみても召喚のようなものを唱え出している。
ルティの行動に慣れすぎたせいか単純な種族と認識していたが、ドワーフは万能な種族ということで改めるべきだろう。十中八九そういう認識で間違いない。
そうなると目の前に見せる子達は、魔力に長けたドワーフか?
「喰らえ! 幻獣ケルピーだ!」
「――むっ!?」
五人の内の一人、それも一番魔力が高いとされる一人が唱え終えていた召喚を自分の前に顕現。他の四人は息を切らせながらも、次に備えて魔力回復を図っている。
「ふふん、どうだ、幻獣ケルピーだぞ!」
「……水棲馬って奴か?」
馬にも竜にも見えるが、見る限り水属性の獣のようだ。このドワーフたちも召喚の末裔だとすれば、喚《よ》び出す幻獣も大したことはないだろう。
「や、やれっ!」
「ヒィィィィン!!」
馬のいななきに似た声を発した幻獣は、予想通り水属性である水泡《すいほう》を放つ。眼前には高い山があるわけでもないが、激しい水の流れが怒濤のごとく迫って来ている。
「あああっ!? アック様っっ!」
「アック、アック!」
ルティとシーニャは慌てふためいているが問題は無い。
「……何で、何で!?」
「心地いい流れだな」
驚きの声を挙げたのはドワーフの一人だった。激しい水の攻撃をまともに受けたおれだったが、むしろ回復に似た心地を受けた。
「悪いな、おれは水の守護をこの身に宿わせている。たとえ幻獣の力であっても水属性は通用しない」
もちろん同属性であっても、相手の力が上回っていれば勝負の行方は分からない。しかし幻獣ケルピーとされるものも未熟な末裔が喚びだしたせいなのか、まるで脅威を感じなかった。
「な、なんだと~!?」
「他の属性の幻獣を試してみてはどうだ?」
「後悔させてやるぞ~!」
そう言いながらも幻獣ケルピーを顕現させたドワーフは、後ろへ引っ込んでしまった。
今度は別のドワーフがおれの前に立ちはだかる。一人一人の名を聞いたわけではないが、どうやら次は別の属性の幻獣を喚ぶようだ。
「次は何だ? どんな属性だろうとおれには効かないけどな」
「い、いい気になるな! み、見てろ!」
召喚の幻獣が果たしてどの程度まで強さが変わるのか、期待するしかなさそうだ。