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錆の都に派遣されてから数日が過ぎた。鋼谷直樹は徐々にこの街の「ルール」と「勢力図」を把握し始めていた。錆の都は、幽霊が彷徨うだけの廃墟ではなく、そこで生きる者たち、そして異能を持つ者たちが暗躍する、独自の秩序が存在する場所だった。
直樹は駅近くの廃ビルに腰を下ろし、頭の中で整理していた。錆の都には、いくつかの大きな異能勢力が存在し、彼らはそれぞれの目的と利益のために活動している。ゴーストバスターである彼も、これらと関わらざるを得ない状況に置かれているのだ。
ゴーストバスターたちが最も警戒する勢力で、錆の都を支配する暗黒組織。リーダーは“冥王”と呼ばれる謎の男で、強力な異能「虚無の手」を操ると言われている。この異能は霊体も物体も無に帰す力を持ち、ゴーストバスターにとっては天敵だ。
冥王会の目的は、錆の都にいる幽霊たちを利用して、さらなる力を得ることだと噂されているが、その具体的な狙いは不明である。冥王会のメンバーは異能者ばかりであり、幽霊を意のままに操ることができる者もいる。直樹にとって、彼らは最も厄介で警戒すべき相手だ。
「虚無の手か……やっかいな能力だな。出くわしたら、逃げるのが賢明かもな」
廃墟に住む異能者たちが集まる無法者集団。彼らは、錆の都に流れ着いた異能者たちが家族のように集まる集団だが、利害関係には極めてドライで、時にゴーストバスターと手を組むこともある。
ホロウギルドの目的は、ただ生き延びること。彼らは特定の目的や野望を持たないが、その分、流れ者や生存に必死な者が集まりやすい。直樹にとっては、情報を得るために利用できる可能性がある存在でもある。
「ホロウギルドの連中は……利用できるかもしれないな」
錆の都に住む幽霊たちを「生ける神」として崇めるカルト集団。彼らは、自分たちも死を迎え、幽霊となって神々と一体化することを究極の目的としている。リーダーの「終焉のラザルス」は、不死の異能を持つとされ、その信奉者たちは自ら死を迎える儀式を行うことで幽霊となることを求めている。
骸教団の信者たちは、狂信的であり、ゴーストバスターたちを「異端者」と見なしている。彼らにとって、直樹のような存在は邪魔でしかなく、激しい敵対心を抱いている。
「幽霊を崇めてるなんて……何考えてるんだか」
錆の都の中でも、比較的平穏な商業地域を管理している異能者たちの集団。リーダーの「鋼鉄のアリサ」は、鉄を自在に操る異能を持つ。彼女は、都市を再建し、戦後の荒廃した街を取り戻すことを目標としており、幽霊退治にも積極的に関わっている。
鉄鋼結社は、他の勢力とは異なり、ゴーストバスターたちとも友好的な関係を築こうとしている。彼らは、戦後の錆の都に再び秩序を取り戻し、人々が安心して暮らせる場所を作ることを理想としているため、協力を持ちかけることもある。
「鋼鉄のアリサ……少しはまともそうな勢力もいるんだな」
直樹が錆の都で幽霊退治の任務を続ける以上、これらの異能勢力との衝突は避けられない。しかし、どの勢力も一筋縄ではいかない手ごわい相手ばかりだ。特に冥王会の「虚無の手」に出くわすことは、最悪のシナリオである。
「まずは、どうにかしてこの街で生き延びる術を身につけないと……」
直樹は鉄鎖を握りしめ、自分が置かれた状況の厳しさを改めて実感した。しかし、それでも錆の都で任務を果たすためには、戦い続けるしかない。彼の目には、わずかな覚悟と希望が宿りつつあった。
錆の都での生活がこれからさらに厳しくなることを悟りながら、直樹は再び夜の廃墟へと足を踏み出した。