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白山小梅
白山小梅
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うとうとと瞬きのスピードを緩めていると、本当に寝てしまいそうだ。体勢変えるのだるいなあ、と、ベッドから放り出された脚をばたつかせていれば、ぺたぺたと足音が聞こえた。
ふんわりとシャンプーか、ボディソープの香りが漂い、慌てて身体を持ち上げる。
「あ?寝てないじゃん」
「い、今から寝る!」
直ぐに寝転んで、脚もくの字に曲げて抱えてやる。
柊は着替えはしなかったのか服装はそのままで。ピアスは外さない派なのかまだ耳にシルバーの杭は残されていて。
でも、髪の毛がちょっぴり濡れて、色気を味方に付けている。
ばーか。顔が良すぎるんだ、ばーか。
うそ!お風呂上がりもかっこいいです!ごめんなさい!
「ていうか、上がるの早くないですか!」
思考回路がごちゃごちゃである。全部柊のせいだ。
「普通じゃん。シャワーに時間かける男いる?」
「……そういえば、短い……かな?」
「誰思い出してんだよ。やらしー」
「は!?柊が言うからでしょ!」
「はいはい、俺のせいな」
柊は隣に腰掛けるので、あたしの身体は少しだけ、柊の方に沈む。ゴシゴシとタオルドライする度に、揺れる身体が煩わしい。
ぴょこぴょこと跳ねる毛先に目を奪われていれば、柊がふいに止まった。ふと、髪の毛を掬われると、翳りを帯びたアイスブルーの瞳はあたしの髪の毛を見つめる。
「……髪、いつから伸ばしてんの?」
「大学入ってから、かな?高校の時はショートだったもんね」
「だからか、最初、誰かわかんなかった。色も変わってるし」
「いくらあたしでも、カラーくらいするよ。バイト入る前はもうちょっと明るかったかな」
「へー、垢抜けしたら、彼氏出来るようになったってこと。良かったじゃん」
柊はなんて他人行儀な言葉をあたしにくれると、髪の毛を解放した。
コンマの遅れから、会話が途切れた。ほんの少し変わった空気。シーツに触れる部分がやけにリアルで、身動ぎするのを躊躇われた。
「……柊、は、彼女いるの」
何かを言わないと、
「は?彼女が居るなら、ここに居るわけねえだろ」
何かを継続させないと、
「……たしかに」
別の何かが始まってしまいそうで、おそろしいのに。
途切れる会話が、静寂を連れてくる。
「ふうん」と、気怠い相槌が落ちてきた。何かを予感めいて、ぎゅっとシーツを掴む。
「てことは、柴崎は俺が彼女持ちかもしんないのに、俺とホテルに行っても良いって思ったわけだ」
耳が熱い。胸が震える。これは、過剰に摂取したアルコールのせいなのか、あたしには判断がつかない。
どくん、どくん、逸る鼓動もまた、血液と共にあたしの体内を駆け回るお酒の力によるものなのか。
それとも、いずれも違って、ただ単に夜の欲望のせいなのか。
「あれは、柊が、どっちが良いって、聞くから!」
「はいはい。俺のせいにすれば」
「……バカにしてる……」
「してるよ。柴崎は、何もしない、に釣られて、ホテルに着いてくるような” オトナ “になったわけね」
「!ちが」
” う “を紡ぐ前に、身体を起き上がらせようとしたのに。男の人の力に肩を押されてしまうと、どうしてもベッドに背中を預けるしかない。