地龍を討伐に成功した進とルイーズ―――
「どうやら何とか地龍を倒したようだ。」
ルイーズさんがそう云って握りしめていた剣を下し、一息ついた。
進も地龍の死を確認し、安心したせいで、その場に崩れ落ち、眠りに入った。
「ススムっ―――!?」
最後に聞こえたのはルイーズさんの呼ぶ声。
今日は、戦闘の連続だった。
マジカルモンキーの群れに襲われ、そのあと山賊襲撃、地龍の討伐までやった。
今日はもう疲れた―――
進の意識はそこで途切れた。
脳内でレベルアップを知らせる声だけは聞こえてきた。
「レベルが21に上がりました」
「地龍を討伐したので、討伐特典として、《自動体力回復》と《黄土魔法》のスキルを与えます。」
特典?まるでゲームだな―――
名前:天童進(てんどうすすむ)
種族:人間
性別:男
Lv.21
クラス:なし
◆パラメータ◆
体力:105
筋力:120
魔力:145
物理抵抗力:111
魔力抵抗力:114
精神力:105
器用さ:120
素早さ:118
◆装備◆
武器:なし
防具:学生服
◆アクティブスキル◆
《鑑定Lv.4》《収納Lv.3》《格闘術Lv.5》《高速演算Lv.5》《料理Lv.5》《魔力制御Lv.4》《挑発Lv.5》《短剣Lv.3》《気配察知Lv.2》《白魔法Lv.3》《鷹の目Lv.2》《黄土魔法Lv.1》
◆パッシブスキル◆
《異世界語翻訳》《自動体力回復Lv.1》
◆称号◆
異世界の天才児
目が覚めると知らない天上だった。
「目が覚めましたか・・・?」
聞き覚えのある声だ―――
「君は・・・?」
あの母親を殺された少女だ。
「確か、マリーとか言ったな―――」
「ここはどこだ?」
進は起き上がろうとした―――
思ったよりも身体に傷や汚れがある。
「あぁっーー!!」
マリーはその高い声を上げ、布団から起き上がる進を抑えようとする。
「まだ安静にしていた方がいいですよ―――」
マリーはそう云うが、オレに大したダメージはない。
それこそ、治癒の白魔法を使えばすぐに治るだろう―――
「それよりもここはどこだ?」
「はい、ここはルイーズさんの家です―――」
「倒れたススムさんを運んで来たんです。」
「君は何故ここに?」
「えっ?あっ、ルイーズさんに貴方を介抱するように言われましたので、ここで看てました。」
「ルイーズさんは薬草を取りに行くと言って出かけていきました。」
マリーの説明でおおよそ把握した。
「そうか―――、どうやら助けられたようだな。」
「ありがとう―――」
進は良い笑顔でマリーにお礼を述べる。
「っ―――!?」
マリーは驚いた表情を浮かべる。
この人、こんな風に笑うんだって彼女は思った。
「あの・・・お洋服汚れているので、私洗いますよ―――」
恥ずかしそうにマリーはそう云う。
確かにこの世界に来てから水浴びはしていたが、衣類は洗っていなかったなと思う。
彼女の言う通り、泥や砂が付いていて汚い。
「ありがとう―――」
「任せていいかな?」
「はい!勿論です!!」
「それではこれで身体を拭いてください。」
「お着換えの方もここに置いてます―――」
「ルイーズさんのお古なので少し大きかもしれないですが・・・。」
いや、着替えがあるだけでもありがたいと、進は早速着替える。
両腕を裾に手を伸ばし脱ぎ出す。
「きゃっ―――!?」
マリーが思わず声を上げる。
男の人の裸の上半身などほとんど見たことがなかったので、そんな声を上げてしまった。
「おっと、すまない―――」
「今から着替えるから少し、外へ出て行ってもらった方がいいかな?」
進はマリーへの配慮の足りなさを謝る。
「分かりました・・・。」
マリーは恐る恐る進の方を見る。
進の上裸が目に映る。
「す・・・凄い・・・!!」
マリーはついそんな言葉を口にしてしまう。
「えっ―――!?」
進もそんな動揺の声が漏れてしまう。
何がすごいんだろう―――
進には分からなかった。
「あっ、いえ―――、とても鍛えられているなって思いまして・・・。」
マリーは顔を赤らめ恥ずかしがっている。
そんな彼女が進の肉体を美しいとすら思ってしまう。
服の上からでは分からない程の鍛えられた肉体―――
上半身だけでも凹凸のハッキリした筋肉に無数の傷―――
勿論、マリーは戦士の肉体など見たこと等ないが、進の身体はそんなマリーの想像していた歴戦の戦士のようだった。
そして、それをカッコイイと思ってしまう。
惚れ惚れしてしまう程―――
「あぁ、この身体が気になっているのか―――」
進はマリーの言葉で気付いた。
確かに元の世界でも同年代でここまで鍛えているヤツはいないだろう。
まぁ、家庭の事情で止む無く修行していたという所は有るのだが、それでも初めて見たら衝撃かもしれない。
「少し、触ってもいいですか・・・?」
マリーが恐る恐るそんなことを言ってきた。
うーーん、別に見世物って訳でもないからなーー
進は迷う。
でも、この子は母親を殺されて酷く悲しんでいるわけだし、こんなことで元気を出してくれるなら・・・。
と、進は考え、マリーの頼みを了承した。
「では・・・触ります―――」
ゆっくりと進の身体に触れようとするマリー。
一応、異性だから少しドキドキしてきた。
ドキドキ・・・!!
マリーも顔が赤くなってドキドキしているのが伝わる。
そんな時だった―――
「ススムっ!起きたか!?」
ルイーズさんが家に入ってきた。
進とマリーはビクッと身体を震わし、マリーは触るのを止めた。
「おぉー目が覚めたか!!」
「特に体に異常はないか?」
そう聞かれてオレは手を握って見たり、少し立って歩いてみたりして体に異常がないか確認した。
「はい、おかげさまで大丈夫そうです。」
「そうかそうかそれはよかった―――」
「今村連中集めて地龍の死体を村まで持ってきているんだ。」
「地龍の死体を?」
「そう地龍の部位は装備の材料になったり、肉は食べると美味しいんだよ。」
とルイーズさんはニコニコ語ってくる。
マリーは何時の間にかいなくなっている。
恐らく、服を洗いに行ったのだろう―――
ルイーズさんはこれから宴の準備があるとかでまた家から出て行った。
やっと、少し落ち着ける。
オレは自分のステータスを確認して、黄土魔法と自動体力回復が増えていることを確認する。
やっぱりあのレベルアップを知らせる声は間違っていなかった。
なんだ特典ってあの地龍が持っていたスキルが今自分の物となっている
強敵を倒した後に、その強敵が使用したスキルが自分のものになったということになる。
「そんなことがあるならそれはチートじゃないか―――」
オレは呟いた。
驚異的な学習能力―――
かつて、進が元の世界で天才と謂われていた所以はいくつかあるがその中の一つに驚異的な学習能力が挙げられる。
どんな技でも一度見てしまえば学習し、自分の物にしてしまう。
それが今回の地龍戦でも起こったと言えば説明がつく。
でも、それはあくまで技やノウハウの話でこの世界の魔法でも同じことが言えるのだろうか?
進自身も疑問だった。
もし可能なら、俺自身はあらゆるスキルを体得できる可能性があるということになる。
ここが異世界でオレはその理から外れた存在だから?
それともあのエレベータの女のプレゼントってやつなのか?
絶対に普通は強敵を倒しただけでそいつの使用したスキルを体得できるはずはない。
現に一緒に地龍を倒したルイーズさんのスキルには黄土魔法と自動体力回復は増えていないのは確認した。
そんなことを考えていると、家の中の様子を伺っているものがいた。
「誰だ?」
それはマリーだった。
「マリー?」
少女は驚いたようにこちらを見て聞いてきた。
「ルイーズさんはどこかに行ったよ―――」
オレは優しくそう云った。
「で何か用件があるんじゃないか?」
とオレは聞いてみると、少女はもじもじしながらこう答えた。
「あなたは私にこの世界を変えるには、力とそのための強い信念が必要だと言いました。」
「それでずっと考えていたんです。」
「私は両親を失い悲しい思いをしました―――」
「でもこの世界には私のような境遇の人はもっとたくさんいると思うんです。」
「私はそんな人たちを一人でも多く救えるような人間になりたいんです!!」
「だから、そのための力が欲しいッ!!」
「もし、貴方についてくことができたら私自身変われるんじゃないかって!!」
少女は泣きながら大きな声でこう言った。
マリーは大きな声でそう云った。
その瞬間オレの中で鳥肌が立った。
「君の思いしっかり伝わったよ。」
「だが、オレの旅はどんな危険があるか分からない。」
「またこの村に戻ってこれるとは限らない。」
「それでもいいのかい?」
「それにいつも君のことを守ってやれるとは約束できない。」
「構いません。」
「私は貴方を見て強くなりたいんです。」
「それに守ってもらってばかりでいる気は毛頭ありません」
オレとマリーが互いに見つめ合う。
もうこれ以上オレと少女の間には言葉はいらない。
「分かった。」
「君の意思は固いようだね。」
「なら付いてくるといい。」
「今日はこれから宴だろ?それが終わって明日にはこの村を発つつもりでいる。」
そうして夜になり宴が始まった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!