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ドズル視点
今でも、鮮明に思い出せる。
忘れようとしても忘れられない。
夢に見るほどに。
目を閉じれば、あの日の景色がそのまま蘇るほどに。
世界のために戦った。
ただ、それだけだった。
街を守るため。
誰かの家族を守るため。
泣いている子どもを、明日も笑わせるため。
剣を振るった。
血を流した。
何度も死にかけた。
それでも、「ありがとう」の一言が聞けるなら、それだけで十分だった。
だから、最後の戦いも迷わなかった。
世界を滅ぼそうとした災厄を止めるため、一人で前へ出た。
誰かがやらなければならないなら、僕がやればいい。
それだけ…だったのに。
ようやく戦いが終わった時には、体中が傷だらけだったこに。
鎧は砕け、剣は折れ、歩くことさえ苦しかったのに。
それでも心は軽かった。
「帰ろう。」って。
そんなことを思っていた。
皆が待っている。
笑顔で迎えてくれる。
そう信じて疑わなかった。
だから。
城門をくぐった瞬間。
浴びせられた言葉の意味が分からなかった。
「裏切り者!!!!」
「どっかいけ」
「英雄を名乗る敵だ。」
誰のことを言っているのか、本当に分からなかった。
後ろを振り返った。
誰もいない。
もう一度前を見る。
向けられている槍も。
恐怖に染まった目も。
怒号も。
全部、僕へ向いていた。
どうして。
そんな言葉しか出てこなかった。
戦った。
守った。
107
助けた。
なのに。
何も届かなかった。
否定しても聞いてもらえない。
説明しても信じてもらえない。
積み重ねてきた何年もの時間が、一瞬で砂になって崩れていった。
気付けば膝をついていた。
立つ理由も。
立つ力も。
もう残っていなかった。
視界には石畳だけが映る。
冷たくて。
硬くて。
人の足音だけが横を通り過ぎる。
誰も手を差し伸べない。
誰も僕を信じない。
その時、だった。
コツ、と小さな足音が止まる。
僕は静かに顔を上げた。
見覚えのある青年が立っていた。
ふわりと癖のついた柔らかな髪。
黒縁の眼鏡。
誰にでも向けるような、穏やかな笑み。
国中で賞賛されていた青年。
何を成し遂げたのか詳しくは知らない。
戦いばかりだった僕には、その功績を知る暇なんてなかった。
それでも名前だけは知っていた。
そう
おんりーだ。
国を愛し、人を愛し、人々から愛された青年。
……だった。
だけど。
その目だけは違った。
優しい色をしているはずの瞳の奥。
そこには、黒く濁った何かが渦を巻いていた。
怒りでもない。
悲しみでもない。
もっと深く。
もっと冷たいもの。
それなのに。
彼は僕へ手を差し伸べた。
その笑みは、どこまでも穏やかで。
まるで昔からの友人に向けるような、優しい笑顔だった。
そして。
彼は静かに口を開いた。
その言葉は。
たった一言で。
砕け散っていた僕の何かを、もう一度立ち上がらせた。
同時に。
この世界は、もう戻れない場所なのだと教えてくれた。
僕は、その日から。
彼の隣を、前を歩くことになる。
あの時聞いた言葉を。
僕はきっと、一生忘れることはないだろう。
あの時、彼が口にした一言。
その響きだけは、今も胸の奥に残っている。
誰にも話したことはない。
話すつもりもない。
あの日の僕を救ったのか。
それとも壊したのか。
今でも答えは分からない。
ただ、一つだけ確かなことがある。
僕が、その手を取ったってこと。
「裏切り者」と世間に広まった当初は、指名手配のようなものなんてなかった。
英雄と呼ばれた僕が、人に殺されるなんて思っていなかった。
何かの間違いだって、どこかで信じてた。
けど、しばらくすると切り掛かってくる人が増えた。
僕らは、まだ死ななかった。
代わりに。
英雄としての僕らが、あの日死んだ。
残ったのは、世界から”偽英雄”と呼ばれた僕たちだけだった。
人を救うためではない。
国に従うためでもなく。
ましてや正義を掲げるためでもない。
ただ一つ。
この腐った国、そのものを終わらせるために。
僕たちは組織を作った。
その名はドズル社。
皮肉な名前だと何度も思った。
世界を守っていた英雄と言われた僕の名前を使っていて。
なのに、その目的は真逆だった。
僕が前に立つ。
“ボス”として。
おんりーは、いつも僕の一歩後ろ。
右腕として。
彼は誰よりも優しく笑った。
誰よりも丁寧に人へ接した。
その笑顔に騙される者は多かった。
だけど僕だけは知っている。
あの笑顔の奥には、もう誰も届かないほど深い闇があることを。
そして僕自身も。
もう英雄でなんていられなかった。
新しい仲間が来たのは、それから間もなくのことだった。
扉を開けて入ってきた男は、だるそうに頭を掻いていた。
「……なに?このくらーい雰囲気。」
気だるげな声。
どこか力の抜けた態度。
けれど、その目だけは何もかも見透かしているようだった。
名前は
ぼんじゅうる。
ぼんさん。
名前くらいは知っていた。
知らないはずがない。
民を救うために革命を起こした男。
重税に苦しむ人々を救い。
富を独占する者へ立ち向かい。
世界を変えた優しい革命家。
新聞も。
酒場も。
街角も。
彼の話題で持ちきりだった。
……それなのに。
今の彼は優しく笑ってなんていなかった。
「俺も裏切り者扱いされたよ。」
それだけ言って、肩をすくめる。
怒りも。
恨みも。
全部通り越したような、乾いた笑いだった。
僕は何も聞かなかった。
聞かなくても分かったから。
彼もまた。
世界に捨てられた人間だった。
二人目は。
白い髪を揺らしながら、静かに扉をノックして入ってきた青年。
おらふくん。
世界最大の教会兼孤児院を作った救済者。
親を失った子ども。
行き場をなくした子ども。
誰にも愛されなかった子ども。
そんな子たちへ居場所を与え続けた人。
誰よりも優しく。
誰よりも穏やかな人。
のはずだった。
「…みんな、……いなくなっちゃったんです。」
小さく笑う声は震えていた。
守り続けた子どもたちも。
教会も。
築き上げた居場所も。
全部、国に奪われた。
理由は。
“反逆者だから”。
たった、それだけのウソで。
最後に現れたのは。
勢いよく扉を開ける青年だった。
「よーす!」
無邪気な笑顔。
まるで遊びに来たような軽い足取り。
おおはらMEN。
文明を二百年進めたと言われている発明家。
工場を作り。
機械を作り。
人々の暮らしを豊かにした男。
誰よりも未来を信じていた人だった。
その笑顔は変わらない。
変わっていないように見えた。
だけど。
「全部、俺の発明を戦争に使われたわ。」
そう笑った瞬間だけ。
その目には、底知れない後悔が宿っていた。
これで五人。
英雄。
革命家。
愛国家。
救済者。
発明家。
誰もが知る偉人たち。
誰もが尊敬した人たち。
そして。
誰もが裏切り者と呼んだ人たち。
僕たちは円卓を囲み、静かに顔を見合わせる。
もう誰も、この世界に期待はしていない。
それでも不思議と。
ここには理解者がいた。
世界に捨てられた者同士だからこそ、同情や気遣いの言葉はいらなかった。
その日。
ドズル社は本当の意味で始まった。
世界を救った五人は。
今度は世界を終わらせるために、同じ場所へ集ったのだ。
第一話です!!!
なんなんだ、早く最強の暗殺者の方すすめろ!!って思いますよね?
私も思います。
進めたいのに進まない。
本当に少しずつは進んでるはず…
ノベルが楽しい…
ハートが欲しい…
こういうダークな感じが大好きです
なんなら不憫系がまじ大好き…!!!
コメントありがとうございます!
よければ、ハート、コメント
よろしくお願いします!!
それでは、また
コメント
6件
こむさんの話まじで気になりすぎる!生存確認が取れたので更新遅くてもオッケーです(?)続き楽しみに待ってますね!
なぜ5人が裏切り者となったのか をテーマに考察頑張ります!一体おんりーチャンは何を言ったのか… 更新ゆっくりでいいので待ってます!
続きが気になりすぎます…! 更新もゆっくりでも楽しみに待っていますので!