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オレンジタイフーン
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はてさて…場面は変わってこちらは先程の影人がたっぷりと説教されていた頃から遡る事。
およそ1週間前…
ここがどこかなど…見当もつかないが静寂な暗がりの中から人間の話し声が聞こえてくる。
それも…かなりの人数だ。
洞窟か何かなのか…その声は反響しているようだった。
今まで状況から推測するものの、ここが洞窟なのだとハッキリと断言出来ずにいる。
それは、この場所の違和感によるものであった。
明らかに不自然な気がするのは匂いがしないからだ。
根拠としては…普通ならば…この様な換気の行き届いていない密閉された空間は、じめじめとした不快な湿気などでカビ臭く独特な匂いのするものである。
広範囲な空調設備、その点を鑑みても、この洞窟らしき施設の建設や開発に多額の費用が掛かると推測される。
すなわち、その様な設備を持った地下施設を容易に運用できる程の大規模な組織なのではないかとの思考にたどり着く。
壁の上部には2~3メートル感覚で銀色の燭台が淡い灯火を揺らめかせていた。
ろうそくなのか疑似的な電気による灯りなのかは天井部に、すすが付着していない事などから後者では無いかと容易に推理できそうだ。
そうだとすればよくできた模造品だ。
その明かりの灯る狭い通路をしばらく歩き続けるとワッと突然大きな空間が広がる。
そこには舞台…否、祭壇らしきものがあった。
祭壇は広がった空間の一番奥にあり、その空間を一望出来る司令塔のようにも見えた。
その祭壇を囲むように数百名…指先まで神経を研ぎ澄まして直立不動な人垣があった。
作戦行動前に司令官から指示されるのを待機している軍隊のようだった。
明らかに特殊な訓練を施された人間であると感じられる目をしていた。
…………………………………
なにやら祭壇の方から女性の声が聞こえてくる。
ハッキリとした大きな声はゆっくりと静かで落ち着いた雰囲気がありながら堂々と自信に満ち溢れていて力強く響くのであった。
「…刻は満ちた
神の力を宿す者達が一堂に会する
わらわの夢がもうすぐ叶うのかぇ
永い永い時を待ち続けたかいがあったぇ
四神の力を一つに…
さすれば、わらわの夢が叶う日も近いぇ
お前達にも約束のときを
さぁさ、わらわの為に存分に働いておくれ…
甘美なる幸福の世界は、わらわと…そなた達を待っておるぇ」
尊大で高貴な口調の甲高い声で酔いしれるかのごとく悦に入っている者がいた。
見た目の容姿は13~15歳くらいの幼い少女が、その祭壇にいるのであった。
…………………………………
その少女は肌を露出する部分が…やや多く大胆に感じられる変わった巫女服を着こなしていた。
彼女は…胡散臭い新興宗教の礼拝堂にでも有りそうな仰々しい造りの玉座に深々と腰掛けている。
まるで特撮ヒーローものの悪の首領のようである。
なんとも怪しげな輝きを放つ水晶か宝石…その球体に両手をかざしてユラユラとぼんやり波打つ映像を浮かび上がらせている。
ボーっと蜃気楼の如く揺らめく、その映像の中には影人の姿もあった。
「我らの命はカグヤ様の為に!!」
これは決まり文句なのだろうか…?
彼らは威風堂々とそれを恥ずかしげもなく叫び、今日もまた新たに忠誠を誓うと兵隊達は玉座に腰掛けている小柄なカグヤなる妖しげな雰囲気を醸し出す少女の言葉にすっかり陶酔しきっている様子であった。
…………………………………
その中でも…おそらくは部隊のリーダー格と思われる三人が玉座の前へと進み出る。
…と武骨な肉体派の大柄な男がこう言うのだった。
「カグヤ様…
四神のソウルズ、それ以外は全部…
こ、殺しても良いか…
フハハ、良いんだよな!!」
すると、無粋な言動を制するかのようにすらりとした長身でモデルの様な細身の優男が…
「フンッ、羅刹(らせつ)よ、いいかげんにしろよ!
ただ暴れる事のみが目的では無いのだぞ
オマエは遊び過ぎなのだよ…
カグヤ様の崇高なる美しき御意志を汚すような愚行は控えて貰おうか…
能力者のソウルシードには利用価値がある四神以外とて粗末にするなよ」
そう言うと綺麗に整えた自慢の長い髪をかき上げながらニヒルな含み笑いをしてみせた。
…………………………………
「…だ、だけどよォ、阿修羅(あしゅら)
そうは言ってもコイツの力を試してみてぇんだよ…
暴れ足りねぇ、暴れ足りねぇのよ!
今のオレは…どうしようも無いぐらいにウズウズしてるんだよォ…
ぶちまけてぇんだよ、綺麗な内臓をよ!!
殺してぇ…殺してぇよォッッ!!!!!!」
血肉に飢えた欲求不満な羅刹なる男は…ボキボキと指の骨を鳴らして大きな握り拳を作り、荒々しい息を吐いている。
さして気に止める訳でもなく…その中でも紅一点の女性がカグヤに続けて語りかける。
「それでは…カグヤ様
我々は、どのように動けば宜しいのでしょうか?」
…………………………………
カグヤが幼い少女の様な容姿ならば、今カグヤからの指示を心待ちにしている…
この女性、刹那(せつな)は、殺気に満ち溢れた妖艶なる乙女と言う言葉がお世辞に聞こえないくらいに相応しい。
彼女の美しい端整な顔立ちや迫力に満ち溢れた、たわわな胸…
そして…くびれが見事な腰や長く、すらりと伸びた四肢などは絶世の美女と呼んでも差し支えなど無く、余り有る美しさだ。
それは刹那が着ている肉体の輪郭を一際に強調させるアオザイに似たデザインの衣服のせいも有るのだろう。
キュッと身体を引き締めるような服装で豊満な胸元が幾らか窮屈そうに見えた。
先の刹那の言葉を受けてカグヤの唇が動きだす。
「そなたら三鬼衆に命ずる…
それぞれに…一体づつ四神のソウルズを捕えてくるのじゃ…
わらわにも思い当たる節があるのじゃ…
わらわも直々に出向くとしようかの…
先程の夢見にたゆたう影…
あれらの神宿り達をわらわの下へ連れてくるがよいぞ…
さぁ、わらわとそなたらの夢の為ぞ…
存分に働きたもれ…
さぁ、行け‼︎
あとは、よしなに…」
カグヤが、そう雅びやかな口調で彼らに命じるや否や。
「かしこまりました!
我らの意志は永遠にカグヤ様の仰せのままに!」
それだけ言うと…三人は煙の如く、その場から消えていた。
兵隊達も三鬼衆に続き行動を開始する。
きびきびとした一糸乱れぬ動きであった。
ソウルズの能力者達の数奇なる運命は…この時から大きな波乱を含み動きだしていたのであった。
それは時に残酷で無慈悲な悲劇の始まりを予告するのであった。