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「良かった。……文、本が好きなこと、友達に隠していたんだ?」
また、私は小さく頷く。
麗華には知られたくなかった。私たちを繋げてくれた大切な本を、存在していないようにしていたこと。
その人が大切にしているコンテンツを否定するって、こんなに苦しいことなんだ。
「そうだよね。私が本好きだって言ったら、みんな顔引き攣らせていたから。クラスもそんな感じだし、辛かったよね。でもさ、レイやSNSのことで繋がれるなら、それも一つじゃない? ほら、別グループの|佐竹《さたけ》さんたちもレイのファンだったよね? みんな気さくそうな子たちだし、文も馴染んでいけるんじゃないかな?」
麗華はさりげなく、グループを変えたらどうかと提案してくれている。
あ、そっか。今日の放課後、みんなの元に合流しようとした時に声をかけてくれたけど、あれは私を足止めするためだったんだ。
その後に、莉乃にぶつかったのも、おそらくわざと。
……私に陰口を聞かせないように、三人の意識を逸らして自分への悪口へと変えるために。
そんなことにも気付かなかった私は、どれほど痛い人間なんだろう。
ザワッとなる胸は痛く、胃までキリキリとしてくる。
麗華は、いつも私を肯定しようとしてくれる。
思えば、ずっとそうだった。
夏を一緒に過ごした時は、私が思ったことを通していいと教えてくれ、学校が同じになって居ない者として関わっていたのに、それを責めず、このままで良いんじゃないかって。
誰かの相談を受ける時って、どうしても主観と自己都合が入る。
相手の考えより自分の考えを押し付けてしまったり、相手の決断が自分に影響ある場合とかだと自分に良いように誘導しようとしてしまったり。
だけど麗華は自分が本が好きな価値観を押し付けてくることも、友達と離れて自分と一緒にいるようにも言ってこない。
麗華は、私目線でアドバイスしてくれているんだ。
だけど私は、そんな麗華の気持ちに、優しさを見出すことが出来ず、また自分勝手な発言をしてしまった。
「……好きじゃない」
「え?」
「私、推し活とかSNSとか、ぜんぜん興味ないしっ! 好きなのは、本だけだから……」
何も悪くない麗華に、気持ちをぶつけてしまっていた。
「そうだったの……」
唇をギュッと噛み締めて俯く私に、麗華は手を伸ばしてくれて、いつの間にか冷たく戻ってしまった両手を優しく握りしめてくれた。
「もう、やめよう」
「え?」
「文が苦しんでいるのは、本が好きな自分を隠していることじゃない。偽りの自分を演じていることなんだよ。流行りだからと好きじゃないことを好きなフリして、本当にしたいことを我慢して。周りに合わせてムリに笑って。そんなことしていたら、本当の自分が分からなくなるよ。心がどんどん擦り減るよ。だからね、もうやめよう」
「やめれる?」
「うん。自分の気持ちを大切に、率直に行動したら良いの。そしたら、やめられるよ」
この温かな手は、私の全てを受け入れてくれている。
息が出来ないほどの苦しさ、やるせなさ、毎日繰り返す自己嫌悪。
あの「|大きな箱《教室》」に閉じ込められたと錯覚を起こしていた私は、その中で生きていく為に自分を殺して生きていた。
だけど違うんだね?
私は閉じ込められていない。
好きに飛び出しても良いんだよね?
別に、あの狭い場所だけに止まる必要なんてないよね?
だって私は……。
そう思いながら、私の体温が移ったことによって冷たくなってしまった優しすぎる手を握り返そうとした。
その時、聞こえた。
私を縛る、呪いの言葉が。
#大人の恋
鷹槻れん

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まぁ
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#サイコパス