テラーノベル
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あたしは大きく伸びをして立ち上がり、窓から離れて洗面所へ向かう。
顔を洗い、歯磨きをする。髪を整えてから、台所へ行って朝食の準備を始める。
と言っても、パンケーキを作るだけだから簡単だけどね。
そういえば、昨日の夜は結局食べずに寝ちゃったんだったなぁ。
ちょっとだけ反省しつつ、フライパンの上で生地を広げていく。
ふわっと甘い香りが広がる。
焼き上がったところで皿に移し、シロップをかける。
それからレモンをかけて出来上がり! うん、美味しい! さあ、食べ終わったら支度をして学校へ行かないとね。
えっと……まずは着替えようかな。
今日の服はこれで良いよね。
昨日の夜に決めたんだけど、ちょっと派手すぎないかしら? まぁ、気にしなくてもいっか。
次は髪を結わなきゃいけないけど、鏡の前に座ったら髪飾りがないことに気づいた。
あれ? どこにやったのかしら。
テーブルの上とか探してみたけれど見つからない。
おかしいなと思いながら、引き出しの中を探してみる。
でもやっぱり見つからなかった。
どこかに置き忘れちゃったのかもしれない。
仕方ないのでそのまま部屋を出て、一階の居間へ向かうことにした。
階段を下りていく途中で、玄関から誰かが出て行く音が聞こえてくる。
そういえば、お父さんとお母さんは昨日から出かけていたんだった。
二人とも夜遅くに帰ってきて、一緒に朝食を食べた後、すぐに出掛けていったはずだ。
どこに行ったのかまでは聞いていない。
確か『大切な人に会いに行ってくる』と言っていた気がする。
どこへ行くのか知らないけど、頑張ってきてね。
そう思って、部屋を出る前にもう一度だけ振り返った。
「いってらっしゃーいっ!」
声をかけた途端、まるで応えるようにカーテンが大きく揺れ動く。
その様子からして、返事をしたつもりなのかな? だとしたら可愛い奴め! 思わず頬が緩んでしまうよ。
さぁて、お見送りも終わったことだし、今度は自分の番かな。
これから何をしようか考えていると、ふと思い出したことがあった。
昨晩、姉の部屋を訪ねた時に感じたこと――あれが何を意味するのか確かめてみたいと思ったんだよね。
なので、早速行動に移すことにした。
まずは部屋の扉を開ける。
中には誰もいない。
当たり前のことだけど、それだけの時間が流れたということでもある。
昨日までの不安な気持ちも嘘みたいに消えていて、胸の中はとても穏やかだ。
「……よし!」
あたしは小さく呟いてから立ち上がった。
それからパジャマを脱いで着替えると、部屋の扉を開ける前に振り返った。
視線を向けた先には机があって、その上には一枚の写真が置かれている。
そこに写っているのは五人の家族――お父さん、お母さん、お姉ちゃん、それにあたしの姿だ。
写真の中のみんなは笑っていて、幸せそうな雰囲気が伝わってくる。
これは去年の家族旅行のときの写真で、その時の楽しかった思い出は今もしっかりと覚えてる。
でもね、これからは違うんだよ。
あたしは一人じゃないから。
新しい家族ができたから。
写真に向かって微笑んでから部屋を出ると、そのまま廊下を通って階段へと向かった。
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