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人形の爪痕、壊れてしまったほうが

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人形の爪痕、壊れてしまったほうが

15 - 第15話狂乱の花々病

2022年10月05日

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利私欲、強欲、傲慢、我執、独占欲、見栄っ張り、わがまま、慢心、増上慢、嫉妬、怨恨、憎悪、憤怒、恨みつらみ、復讐、報復、仕返し。

病名:狂乱の花々病 近年、ここ日本でも奇妙な病気が発見されました。発病した人間は自分の周囲で突然植物が芽を出し始めるのです。更に進行すると体の一部が変質して枯れていきます。そして最後には、全身が植物の種となり、息絶えると言われています。症状の進行を止める薬はなく、ただ死を待つのみなのです。しかし、この奇病にはひとつだけ救いがありました。それは、植物化した部分は二度と元に戻らないということ。つまり、一度植物化してしまえば、二度と同じ姿に戻ることはないということです。

昭和の頃は、こんな病気はありませんでしたね。

平成に入ってからですね、このような謎の奇病が発見されたのは。

「あぁ、お嬢さん……なんて美しいのかしら! まるで、天使みたいだわ!」

そう言って頬に手を当ててうっとりとした表情を浮かべるのは、長い黒髪の女性だった。

彼女は興奮気味に身を乗り出して、隣に座っていた少女を見つめている。

だが、見つめられた当の少女――藍色の髪を肩口まで伸ばした小柄な少女は、戸惑ったように首を傾げる。

「えっと……。ごめんなさい。よくわからないんですけど」

「あー、うん。そうだよね。俺もよくわかってないんだけどさ」

少年は苦笑して頭を掻いた。それから、もう一度言う。

「だから、俺は君のことを助けたいんだよ」

「助けてもらっていますよ?」

きょとんとする少女に、今度は困ったように眉尻を下げる。

「それはそうなんだけどね。もっとこう、ちゃんと君のために何かしたいっていうかさ」

「そう言われても……」

「う~ん。やっぱり難しいかなぁ」

「いえ。難しくはないと思います」

「へ?」

あっさりと言い切った少女に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

「難しくはない……って。どういう意味だい? だって、君は今のままじゃつらいんじゃないかい?」

「確かに、今の状況はつらかったです。ずっとこのままなのかなって思ってました」

「だったら!」

身を乗り出す少年に対して、しかし少女は静かに首を振る。

「だけど、それでいいと思ってたんですよ」

「それってつまり……現状維持のままでいいってことかい?」

「はい」

「どうして!? せっかくこうして自由に動けるようになったのに! これからやりたいこととかたくさん出てくるんじゃないのか!?」

「もちろんですよ!」

「当然だね」

「当たり前ですね」

「当然でしょ?」

「あー……えっと……」

「う~ん……そうねぇ」

「……はい」

「当然でしょう?」

「あたりまえよ」

「うん」

「はぁ……」

「ふぅ……」

「さて、では」

「じゃあいくわよぉ」

「お願いします」

「よろしくお願いします」

「わかりました」

「まかせてください」

「がんばるわ」

「はいっ! 頑張りましょう!!」

「任せておけ」

「任せなさい」

「はぃ」

「はぁい♪」

「わかった」

「はぁい」

「…………」

「…………」

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