ウトゥックのラビス、二足歩行の赤べこが両手を広げて肩を竦(すく)めながら答えた。
「分かっているわよ、実際レグバ達にもメッセージを伝えた後は仲間になれってアドバイスされてたし、もうずっとコユキ様や善悪様の姿を見続けて、話す言葉を聞き続けて居たんだからね…… 従うし、と言うか『聖女と愉快な仲間たち』に入れて欲しいとまで思っているわよ…… 駄目かしら? ガープ、貴方がリーダーなんでしょう? どう? 駄目かしら?」
ガープは苦虫を噛み潰した表情で答える。
「くへへ、馬鹿だな其方は…… 悪魔目線で考えるなよ、この『群れ』のリーダーは我では無く善悪様だ! 若(も)しくは善悪様、マスターの心を変え得ることが出来る唯一の存在、コユキ様だぞ…… 仲間になりたいと言うのならば、昔馴染みの我々では無く確(しっか)りと、善悪様、及びコユキ様に頼むが良い…… くへへへ、そうするが良いぞ」
頷いた後、まだ座っていないのであろうか? 首を上下にグラングランさせながら赤べこのラビスは善悪とコユキを交互に見つめながら懇願の言葉を口にしたのである。
「改めてお願いいたします、善悪様、コユキ様! これから地球ヤバイ! 状態が訪れるのを指をくわえて見ている訳には行きませんの! 私、『予兆』のラビスと配下の千二百六十三柱のウトゥック、自然現象を司る全ての精霊共を貴方達のお仲間に加えて下さいませんか? 一緒に地球を滅びの運命から救いましょう! わが友、ラマシュトゥやサルガタナス、ゾレイ、ワルファレ、ファライーと同じくお仕えさせてくださいませ! ですの!」
善悪が神妙な顔で頷き、コユキに目線を送ると彼(か)のデブは偉そうに顎を突き出しながら答えたのである。
「大丈夫よ! 誰の忠誠でも受けるっ!」
この場に集った全員の脳内には懐かしいボンバイエが流れるのであった。
fight! その言葉に勇気を感じているメンバーにラビスが言う。
「あのね、あの四柱のレグバはね、地球全体が大きな転換点を迎える時に私に予兆を届けさせる神様なんだよね、主従関係にはないけど私は人間が好きで出来る限り守りたいって思っているから、まあ、持ちつ持たれつって関係な訳よ、それでさ、今回は人類だけじゃなくて全生物に係る事態だって聞かされてね、アンタに取り憑くように言われた訳よ」
台詞の最後で赤べこの前足を向けられた丹波晃が不可解そうな表情で口にする。
「不思議だよ、コユキさんに指示を出すなら直接伝えれば良いのに、何で一旦僕に取り憑いたんだい?」
赤べこのラビスは面倒そうに答える。
「さあね、多分、アンタがコユキ様に祓われる事や、私が不意の転移で暫(しばら)く動けなくなる事が必要だったんじゃない? レグバの言うタイミングで指示を正確に守れば世界の運命は変わる、そう言う事よ! だから、アンタについてはコユキさんと結婚するとかお断りするとかの結果じゃなくて、何かこの件に係っていく重要な役割があるのかもね?」
「役割?」
首を傾げる丹波に代わってコユキがラビスに話し掛ける。
「兎に角そのレグバさん達の祠(ほこら)訪問を実践すれば良いんでしょ? 善悪と一緒に行けば良いんだよね、確か」
そう言えば『相棒から離れるな』的な事を言っていた気がする。
んで、バアルを顕現させたら祠に来いとか何とか上から目線のメッセージだったな……
私がそう反芻(はんすう)しているとラビスが意外な言葉を返した。
「ううん、相棒と離れずにバアルを顕現させたらね、祠は二人揃ってじゃなくて聖女コユキ一人で良いって言ってたよ! 何かね、『信仰が薄れて魔力不足だから吸うタイプが来るとレグバやばい』とか言ってたんだよね! だから祠訪問はコユキ様のワンオペだね」
「なるほど」
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