もう一度。紗理奈ちゃんに会えるなら………
ある自然豊かな森の中に、清らかな水が流れている川があった。どこまで続くのかはわからないが、相当昔からある川なのだというはわかった。猫の姿をした水の妖精は昔、ここで思い出があり、今、川の近くで座って川の流れていく方をじっと眺めている。
この子の名前は水猫。もう死んでいる。数十年前、この近くの野原で飼い主の女の子、水野紗理奈と2人きりで過ごしていた。生きていた頃の名前は、ミーちゃん。言葉も文字もさっぱりなんのことかわからなかったが、これだけはわかる。「ぼくは紗理奈ちゃんを守るためにここにいる」ということ。ほかにも大事なことはあったが、そのころはそれだけしか考えられなかった。いっしょに遊んだり、ひなたぼっこをしたり……。今、紗理奈ちゃんがどこにいるのかは知らない。でも、きっとぼくなら見つけられる。そんな気がした。
ある日、紗理奈と水猫は、いつも行っている森の川の近くで遊んでいた。ここの川の水はおいしい。そんなことを考えていた次の瞬間、
バシャン!
「たすけて!」
何が起きたかと川の方を見ると、なんと!紗理奈ちゃんが溺れているではないか!水猫は焦った。どうしよう!このままじゃ紗理奈ちゃんが死んじゃう!いくら考えても、助ける方法は浮かんでこない。そして、焦ってふと思いついたのが、
ぼくが泳いで紗理奈ちゃんのところに行けば、助けられるかも!
自分では気づかなかった。自分は小さくて軽い。流れが追いつけないほど速いこと。
バシャッ!
川に飛び込んだ。紗理奈ちゃん、今行くからね!流れが速いのもあって、紗理奈ちゃんのところまでは時間もかからず行けたが、問題はそこからだ。紗理奈ちゃんも僕と同じ子供、自力で陸に上がろうとした。流れがさっきよりも、速くなった気がする。でも水猫は諦めなかった。前を見ると、長い木の枝がこちら側に伸びているのを確認した。
よし!この枝に掴まれば助かるかも!いや、そうであってほしい!
「にゃー!にゃー!」
必死に鳴いている水猫を見て、紗理奈は前の枝に気づき、
「あっ!あそこ!枝に掴まろう!」
水猫も引き寄せられた。紗理奈が先に陸に上がった。そして、水猫も上がろうとしたが……
ボキッ!
不運なことに、命綱だった枝が、折れてしまった。なんで!ほかのよりも太かったのに!
「ミーちゃん!行かないで!」
そのまま水猫は川に流され溺れてしまい、最終的には死んでしまったというわけだ。
妖精になった動物には、その場で死んだ出来事に関する能力を与えられる。水猫は名前の通り、水の中で死んだから水の妖精。そして水を操る能力も備えられた。ほかにも色々な能力はある。
もちろん、死んで妖精になったのは水猫だけじゃない。これから、たくさんの仲間たちに出会っていく。結果的には、今もずっと紗理奈ちゃんには会えていないが、まだ生きているということを願っている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!